ホーム

 2014年12月25日

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
厚生労働大臣 塩崎 恭久 様

第3次安倍内閣の発足にあたって
介護報酬の大幅引き上げと介護保険制度の改善を求める要望書

全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

前略 国民医療・福祉の確保に対するご尽力に敬意を表します。
昨日、第3次安倍内閣が発足しました。
今、日本経済は、株価操作と円安によって一部の大企業や機関投資家が利潤を上げていますが、勤労者の実質賃金は16カ月連続で減少し、中小企業も経営難で倒産が広がるなど、大多数の国民生活は一層厳しさを増しています。
こうした状況を受けて、自民党も総選挙では消費税の10%増税を2017年10月まで延期することを公約しました。総選挙で自民党や公明党に投票された方も含めて、大多数の国民が安倍政権に求めているのは、雇用と賃金、社会保障を改善して国民生活を豊かにし、将来の生活への不安を無くすことではないでしょうか。
ところが、財務省は、来年4月の介護報酬改定についてマイナス改定を実施すべきであるとの考えを財政制度等審議会財政制度分科会に示し、最近のマスコミ報道では2〜3%を軸にマイナス改定を実施する方針であるとの報道がされています。
しかし、介護保険制度発足当初から介護報酬は低く抑えられ、さらに2003年改定ではマイナス2.3%、2005年10月改定と2006年4月改定ではあわせてマイナス2.4%の改定が行われてきました。介護崩壊がマスコミでも大きく取り上げられる中で、2009年にはプラス3%の改定が実施されましたが、2012年改定では「介護報酬の2%に相当する介護職員処遇改善交付金を介護報酬内化した上で、介護報酬を1.2%引き上げ」とされ、実質マイナス改定が行われました。制度発足当時よりも現在の介護報酬の水準は低下しているのです。
この結果、今年8月11日に介護労働安定センターが発表した「2013年度介護労働実態調査」では、介護人材不足の理由に「採用が困難」を挙げる介護事業所が7割近くにのぼっているように、厳しい労働条件におかれた介護従事者等の離職が深刻化し、かつてない人手不足と経営難が介護現場を直撃しています。厚生労働省は、現在150万人の介護職員について、団塊の世代が75歳以上となる2025年には最大約250万人必要と推計していますが、介護職員確保のためには処遇改善に関する早急な対策が不可欠です。
介護報酬は、社会保障として国民が受ける介護の質と量を規定するものです。医学・医療の新たな知見や介護技術の進歩を介護報酬にしっかりと反映させ、介護担当者の労働条件を改善するためには、介護報酬の引き上げを図ることが必要です。
国の責務は、要支援・要介護状態となってもすべての国民が健康で文化的な生活を営むことができる環境を整備することです。
要支援者・要介護者が必要な介護を受けることができるよう、2015年改定において介護報酬を大幅に引き上げるよう、第3次安倍内閣の発足にあたって強く求めるものです。
また、介護保険制度についても、度重なる制度改定によりサービス範囲が大幅に縮小され、介護サービスの市場化・営利化が進み、介護保険料が引き上がる一方、真にサービスを必要とする人が必要最低限の介護保険サービスさえ受けられない状況が広がっています。介護保険に対する国と自治体の責任と負担を強化することを併せて要望するものです。

以上