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2015年1月13日

介護報酬引き下げは、介護保険制度の崩壊を招く
必要な介護が提供できるよう、介護報酬の引き上げを改めて求める
【談話】

全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

政府は、平成27年度予算案を明日閣議決定するが、2015年4月施行の介護報酬改定率については、マイナス2.27%とするとの報道がされている。
しかし、これが実施されれば、介護保険制度の崩壊を招き、地域医療にも多大な影響を与えることは必至である。当会は、医科・歯科保険医の団体として、介護報酬の引き下げに断固抗議をし、必要な介護が提供できるよう、介護報酬の引き上げを改めて求めるものである。
そもそも、介護保険制度発足当初から介護報酬は低く抑えられ、さらに2003年改定ではマイナス2.3%、2005年10月改定と2006年4月改定ではあわせてマイナス2.4%の改定が行われた。介護崩壊がマスコミでも大きく取り上げられる中で、2009年にはプラス3%の改定が実施されたが、2012年改定では「介護報酬の2%に相当する介護職員処遇改善交付金を介護報酬内化した上で、介護報酬を1.2%引き上げ」られ、実質マイナス改定が実施された。つまり、制度発足当時よりも現在の介護報酬の水準は低下しているのである。
こうした中で、昨年8月11日に介護労働安定センターが発表した「2013年度介護労働実態調査」では、介護人材不足の理由に「採用が困難」を挙げる介護事業所が7割近くにのぼっているように、厳しい労働条件におかれた介護従事者等の離職が深刻化し、人手不足と経営難が介護現場を直撃している。政府は、「介護事業経営実態調査」を根拠にマイナス改定を打ち出したが、小規模事業所の実態は反映されておらず、このままマイナス改定が実施されれば、介護崩壊が一層進むことは明らかである。
厚生労働省は、現在150万人の介護職員について、団塊の世代が75歳以上となる2025年には最大約250万人必要と推計している。
介護給付費分科会において事業者委員はもちろんのこと、利用者の代表である田部井委員(認知症の人と家族の会)からも、「原資となる報酬がなければ、誰が介護サービス事業に参入しますか。誰が介護サービスに従事しますか。絶対にマイナス改定にすべきではない」(1月9日第118回分科会)と発言があったが、介護職員確保のためには、処遇改善の原資である介護報酬の引き上げが不可欠である。
介護報酬は、社会保障として国民が受ける介護の質と量を規定するものである。医学・医療の新たな知見や介護技術の進歩を介護報酬にしっかりと反映させ、介護担当者の労働条件を改善するためには、介護報酬の引き上げを図ることが必要だ。
国の責務は、要支援・要介護状態となってもすべての国民が健康で文化的な生活を営むことができる環境を整備することである。
要支援者・要介護者が必要な介護を受けることができるよう、2015年改定において介護報酬のマイナス改定をやめ、介護報酬を引き上げるよう強く求めるものである。
なお、介護保険制度についても、度重なる制度改定によりサービス範囲が大幅に縮小され、介護サービスの市場化・営利化が進み、介護保険料が引き上がる一方、真にサービスを必要とする人が必要最低限の介護保険サービスさえ受けられない状況が広がっている。介護保険に対する国と自治体の責任と負担を強化することを併せて要望する。

以上