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※8月6日に以下の要請書を厚労大臣、全参議院議員宛に送付いたしました。

【要請】社会福祉法等の改正案審議に対する要請

2015年8月6日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 貴職におかれましては、日夜国政の重責を果たされていますことに敬意を表します。
 私たちは、全国の医師・歯科医師10万5000人で構成する医療団体です。
 現在、参議院厚生労働委員会で審議が行われている「社会福祉法等の一部を改正する法律案」(改正案)は、福祉に対する公的責任の後退をもたらすものであり、私たちは同法案を廃案にすることを要請するものです。

 改正案は社会福祉法人に対して、現在行っている事業に加えて、「無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならないもの」とされ、その財源には社会福祉法人の余裕資産を充てることとされています。また、改正案は、障害者福祉施設で働く職員の退職手当共済制度の公費助成の廃止などを盛り込んでいます。
 こうした内容について福祉関係者からは、@経営実態を無視して公的支援も一切なされずに新たな無償・低額のサービス実施を一律に迫ることは、多くの社会福祉法人をさらなる経営難に追い込む、A施設職員の賃金低下や労働環境悪化が危惧されると指摘されています。

 一部の社会福祉法人が「内部留保を溜め込んでいる」との報道がなされましたが、多くの社会福祉法人の経営は苦しいのが実情です。また、非営利である社会福祉法人の将来の事業継続と発展に必要な資金は、企業等営利組織の「内部留保」とは性質が異なり、同列に論じることはできません。

 公的支援もないまま、社会福祉法人に対し「地域公益事業」として新たに無償・低額のサービス実施を迫ることは、衆議院厚生労働委員会で参考人からも指摘があったように、国の責任で行うべき事業を社会福祉法人に転嫁したり、社会福祉法人に対して不当な関与を行ってはならないとする社会福祉法61条に抵触する恐れもあります。
 そもそも、「地域公益事業」として行うこととされる生活困窮者、介護保険の要支援者への支援は、本来、政府・自治体が公的責任で行うべきです。また、社会福祉法人に「地域公益事業」を義務づけることで、社会福祉法人が営利法人との競争にさらされ、社会保障としての福祉が後退させられることを危惧します。
 加えて、障害者施設の職員の退職金積立制度の公的助成廃止は、低賃金で働く職員の安心を奪うもので、福祉現場の労働環境の劣悪化に拍車をかけることになりかねませんし、政府が目標として掲げる福祉・介護分野の人材確保とも矛盾します。

 今回の改正による社会福祉法人のさらなる経営難、福祉現場の労働環境の劣悪化は、ひいては利用者と地域住民へのサービス低下、憲法25条に基づく社会保障の後退をもたらします。
 私たちは、参議院の審議において改正案を廃案にすることを重ねて要請するものです。

以上