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【談話】新専門医制度を拙速に開始しないことを求める
―地域医療への懸念を払拭し、医療界の納得と合意を―

2016年4月18日
全国保険医団体連合会
副会長・政策部長 三浦清春

 新専門医制度は2017年4月からの実施を前に、地域医療への影響を懸念する声などが医療関係者から噴出している。社会保障審議会医療部会では、「拙速」「延期」の声が相次いだことから(2/28部会議事録より)、同部会に専門委員会を設置し、検討が行われることとなった(3/25第1回)。
 3月25日に開かれた第1回の専門委員会では、日本医療専門機構、都道府県、厚労省の三者が、2017年4月の当初予定のスケジュールに向けて協力、調整を行うプロセス(案)が示された(資料2)。

 しかし、このプロセス案でも、研修施設の偏りによる医師偏在など、地域医療への影響の懸念は払拭されているわけではない。新専門医制度に関する協議会を設置して、議論を始めている都道府県は16に過ぎず(資料4)、6月までに全国の地域医療への影響を精査し、調整を行うことは困難である。
また、プロセス案では、6月または7月中に各研修基幹施設が申請した研修プログラム案を日本専門医機構で審査し、確定する予定であるが、日本専門医機構のガバナンスや運営に疑義も出されているところであり、各プログラムの審査、調整の任に耐え得るかについても疑問が残る。
 さらに、そもそも新専門医制度においては、地域の開業医に対する評価もあいまいな上、既存専門医の新専門医への移行・更新についての情報提供や周知も不徹底であり、地域医療の第一線を担う医療者への困惑も生じさせている。また専攻医となる医師の身分保障の問題や女性医師のキャリア形成との関係についての議論も深められていない。

 新専門医制度について当会は、▽医師及び医療機関に対して大学病院を頂点として過度に系列化が強まる▽診療実績というハードルで医師の配置が偏在化し、地域医療が後退する▽現に地域を支えている医療提供体制が損なわれる―などの懸念を示し、自主的な地域医療を支える態勢が損なわれないような制度をめざすべきことを表明してきた。
 現在、医療関係団体から拙速な実施に反対する意見が相次いでいる。その背景にあるものは、限られた研修病院の中で地方の中小病院には専攻医が集まらず、医師偏在が一層助長されるのではないか、医療の質が維持されるのかといった地域医療後退への懸念である。当会もこうした懸念を共有するものである。
 地域医療への懸念を払拭し、制度についての医療界の納得と合意を図るために、慎重な検討を引き続きおこなうべきであり、制度の拙速な開始はすべきではない。

以上