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※全国保険医団体連合会は、10月30日に「第14回保団連歯科全国交流集会」を開催し、以下の決議を上げました(PDF版はこちら)。

【決議】第14回保団連歯科全国交流集会

 

 2016年度歯科診療報酬改定から半年が経過した。
 今回の改定は、「社会保障・税の一体改革」を具体化したもので、社会保障費の自然増を5000億円程度に抑え込む厳しい診療報酬本体改定率であった。改定内容については、保団連の要求が反映された部分もあるが、政府・厚労省は、「地域包括ケアシステムの推進と医療機能分化・強化、連携に関する視点」を掲げて「かかりつけ医」に続き「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(以下、「か強診」)・「かかりつけ薬剤師」などを新たに導入した。「か強診」については、本来の「かかりつけ歯科医」とは全く関係ない施設基準(外来環+歯援診)の要件が設けられ、「かかりつけ」の趣旨にはそぐわない形で、初期う蝕管理加算やSPT(U)などが新設され、医療関係者の中でも様々な議論や疑問を生じさせている。

 長年にわたる政府の低歯科診療報酬政策で経済的にも抑圧され続けてきた歯科医療機関にとって、「か強診」の施設基準をクリアすれば一定の増収が見込まれることから、各地で届出する歯科医療機関がでてきた。だが、どの歯科医療機関でも実施できる医療に、初期う蝕管理加算やSPT(U)など一物二価(一物三価)が公然と持ち込まれ、包括化も拡大されることになったことに根本的な問題がある。そのため患者の理解を得られる説明が難しく、十分な説明と納得がなければ患者と医師の信頼関係が損なわれかねない。医療機関の機能分化と称し選別化と長期管理の流れを強める政府の計画には注意が必要である。

 10月4日の財政制度等審議会は、2017年度予算編成に向けて高齢化などに伴う医療・介護の社会保障関係費の自然増抑制策を提起した。高齢者の医療費負担上限額の引き上げや、「かかりつけ医」以外の医療機関受診の場合の上乗せ定額負担導入等の具体化も迫っている。これらが実行されれば、多くの患者・国民はこれまで以上に必要な歯科治療を受けにくくなり、健康寿命の延伸も絵に描いた餅になってしまう。

 今日、QOL(生活の質)を高めるため歯科疾患の重症化予防、在宅での歯科医療の重要性が増している。こうした要求や変化に応えるためには、いつでも、どこでも、誰もがより良い歯科医療を安心して受けられるよう国民皆保険制度を充実させることが急務である。保団連が実施した「要介護高齢者の口腔内状況調査」でも、高齢者の残存歯の増加に伴い、う蝕、歯周病は増加傾向にあると推察される。高齢社会の中で「よりよく食べるはより良く生きる」ためにも保険の補綴を守り、歯科技工への正当な評価が不可欠である。しかし政府には、保険の補綴を守る具体的施策を講じる姿勢が一向に見られない。

 私達は、政府の社会保障改悪計画や国会審議の状況等を会内外に、より分かり易く説明することにより、会員をはじめ患者・国民と情報を共有し、社会保障改悪を食い止め、社会保障の改善・充実に向け全力を挙げるとともに、歯科医療の改善と歯科診療報酬の大幅引き上げを要求し、下記事項の実現を強く求めるものである。

1.

国民が安心して歯科医療を受けられるよう、患者の窓口負担を大幅に軽減させること。

2.

保険の適応範囲を広げ、日常診療で不可欠な技術料や基本診療料の引き上げを実現させる
ために、歯科医療費の総枠拡大を実現すること。

3.

歯科技工士が適正な技術料を得るための制度的保証を確立すること。

4.

歯科衛生士の評価を抜本的に高めること。

以上、決議する。

2016年10月30日全国保険医団体連合会
第14回 歯科全国交流集会