※全国保険医団体連合会では、11月24日に発表された「第23回医療経済実態調査」結果報告を受けて、下記の談話を発表し、マスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:378KB])。

【談話】第23回医療経済実態調査について

全ての医療機関で経営悪化 大幅プラス改定が不可欠

2021年11月29日
全国保険医団体連合会
政策部長(医科) 竹田 智雄
政策部長(歯科) 池 潤

 

はじめに

11月24日の中医協に「第23回医療経済実態調査」結果が報告された。@2021年4月までに終了する直近の2事業年(度)の数値、A新型コロナウイルス感染症関連補助金、コロナ患者の受入れに応じた調査結果、及びB直近状況の経年比較として2019、20、21年の6月単月分―などが示されている。(特に断りがない場合、(○%から○%などの表記は2019年(度)→2020年(度))
コロナ関連補助金とは、重点医療機関体制整備、病床確保、感染拡大防止支援、雇用調整助成金、持続化給付金、家賃支援給付金等。自治体・系統機関も含む。慰労金は除く。
以下、病院は、医療介護収益に占める介護収益の割合が2%未満の病院の集計。
医療経済実態調査は、サンプル数の限定、事業年度の対象期間が施設によって異なるなど必ずしも十分な調査とは言えず、本調査だけを持って診療報酬改定の基礎資料とすることは不十分であることを断った上で、以下、本会の意見を記載する。

1.経営悪化、補助金でもコロナ前に戻らず 医療法人は半数赤字 医科診療所

医科診療所について、医業・介護収益に占める損益差額の割合(損益比率【1施設当たり】)は、個人立(無床)では32.7%から28.8%に、医療法人(無床)で7.1%から4.0%に低下するなど、コロナ感染症による経営悪化が改めて浮き彫りになった。
 コロナ関連補助金を含めた場合でも、個人立(無床)で29.6%、医療法人(無床)で4.4%と低下の傾向は変わらない。
 個人立(無床)では、医業収益が▲7.9%と大幅に落ち込む中、給与費は+0.1%に微増し、医療法人(無床)で医業収益が▲4.5%落ち込む中、給与費は▲0.2%に留めるなど、厳しい中でも職員の雇用確保に尽力した姿勢が見られる。
最頻値となる損益差額階級(コロナ補助金含まず)を見ると、個人立(無床)では500万円以上1,000万円未満となり、1000万円未満で36.8%を占める。医療法人(無床)では、−500万円未満となり全体の28.7%を占める。 個人立(無床)では、医業収益が▲10.1%と大幅に落ち込む中、損益比率はコロナ補助金を含めても16.3%と平均値の半分程度に過ぎない。そうした中、給与費は▲1.5%の減少に留めて、職員の雇用確保に尽力した姿勢が見られる。  医療法人(無床)に至っては、医業収益が▲8.9%と大幅に落ち込む中、損益比率はコロナ補助金を含めても▲11.6%と危機的状況に追い込まれている。そうした中にもかかわらず、給与費は▲0.5%の微減に留めて、職員の雇用確保に尽力している。
損益比率の分布状況については、20%未満(コロナ関連補助金含まない)となっている医科診療所(個人立・無床)は28.8%から39.5%に、0%未満(同上)の医科診療所(医療法人・無床)で32.2%から49.4%と半数にまで増えている。病院(後掲)と同様に、診療所でも、地域医療の存続に危惧を抱く状況が広がっている。(個人立は、院長給与などを考慮して20%未満設定)
診療・検査医療機関(発熱外来体制補助金)に関わっては、損益比率について、指定された個人立では30.0%、30.9%(コロナ補助金含む)で2019年度の33.1%よりも低くなっている。同様に、指定された医療法人でも2.3%、3.0%(同上)となり、2019年度の5.6%よりも低くなっている。総じて、コロナ患者(疑い含め)に直接携わる診療所の損益比率はコロナ前(2019年)よりも悪化している。補助金申請・交付のあり方や制度設計など含め、コロナ外来医療への手当の改善が必要である。

 

2.経営悪化、収支差500万円未満が3割強 歯科診療所

損益比率は、歯科診療所(個人立)では29.7%から28.1%に低下するなど、医科診療所と同様にコロナ感染症による経営悪化が改めて浮き彫りになった。
 コロナ関連補助金を含めた場合でも、30.1%と微増に留まる。
 医科と同様に、医業収益が▲3.3%落ち込む中、給与費は▲0.1%に留めるなど職員の雇用確保に尽力した姿勢が見られる。
 個人立、医療法人ともに、歯科材料費の伸びが各々6.8%、3.1%となっており、金パラの価格改定などを反映した結果と見られる。
最頻値となる損益差額階級(コロナ補助金含まず)を見ると、個人立では250万円以上500万円未満となった。損益差額が500万円未満で32.8%を占めるなど極めて厳しい水準にある歯科診療所が多い。
 医業収益が▲9.9%と大幅に落ち込む中、損益比率はコロナ補助金を含めても20.4%と平均値より3割以上低い水準に置かれている。そうした中、給与費は▲6.5%の削減となった。
 長年据え置かれている歯科医療費水準の下にコロナ感染拡大が重なる中、自身の報酬を含めた損益差額がコロナ補助金を含めても458万円しか確保されない状況において、如何ともしがたい状況に追い込まれた結果である。
損益比率の分布状況については、20%未満(コロナ関連補助金含まない)となっている歯科診療所(個人立)は29.9%から35.3%に増えている。医科診療所(前掲)と同様に、歯科診療所でも、地域医療の存続に危惧を抱く状況が広がっている。(個人立は、院長給与などを考慮して20%未満設定)。

 

3.赤字大幅拡大、補助金でギリギリ黒字 公立は依然赤字 病院

損益比率は、一般病院全体で▲3.1%から▲6.9%に赤字幅が広がった。うち民間等(国公立を除く全体)で0.8%から▲1.8%、国立で▲1.7%から▲9.2%、公立で▲14.2%から▲21.4%に各々低下するなど、コロナ感染症の影響が改めて浮き彫りになっている。
 コロナ補助金(同上)を含めた場合でも、一般病院全体で0.4%とほぼ±ゼロである。国立で6.8%に上昇した一方、民間等(同上)は2.7%、公立では▲7.3%となり、厳しい水準に変わりない。公立は補助金を入れても以前大幅な赤字である。(公立は一般会計からの繰入含まず)
 いずれの病院も医業収益が大きく落ち込んだ。低い診療報酬水準の下で溜め(内部留保)が殆どない中、コロナ関連補助金によりどうにか雇用を維持・存続できた形である。
損益比率の分布状況については、0%未満(コロナ関連補助金含まない)となっている一般病院は全体で52.9%から62.0%に増えている。うち、民間等(国公立以外の全て)は41.9%から52.8%に、国立は77.8%から88.8%に、公立は97.2%から98.6%に増えるなど、文字通り、全国で病院崩壊の瀬戸際に追い込まれた状況がうかがえる。 (公立は一般会計からの繰入含まず)。
コロナ患者等の受け入れ実績別で見ると、コロナ関連補助金(同上)を含めると、コロナ患者(疑似症含む)を受け入れた病院の損益比率は0.7%、回復期の患者を転院により受け入れた病院で1.2%、コロナ患者受入れ病院からコロナ以外の患者を受け入れた病院で0.4%、上記以外の病院では▲1.7%など、補助金によって赤字を免れたにすぎない。コロナ患者(疑似症含む)を受け入れた医療機関以外の病院は、補助金を含めても2019年度よりも損益比率は低下しており、後方支援病院やコロナ以外の通常医療を担った病院はコロナ以前よりも厳しい状況に置かれている。コロナ重症患者を受け入れる病院への手厚い支援は当然であるが、入院医療体制全体を支えるような手当のあり方が求められる。

 

4.コロナ禍により経営悪化。大幅プラス改定不可欠

今回の医療経済実態調査の結果から、累次の診療報酬のマイナス改定によって余裕がない医療現場に対して、更にコロナ感染拡大が全ての医療機関に大きな経営的ダメージを及ぼしていることが明らかになった。地域の診療所の経営はコロナ前よりも悪化するとともに、歯科では院長報酬の確保もままならない診療所が増えている。病院は補助金なくしては平時の経営さえ成り立ちがたい状況が改めて浮き彫りになった。こうした状況の中、多くの医療機関では、職員の雇用維持に尽力している姿勢がうかがえる。。
今後、コロナが収束(終息)し補助金等が打ち切られていく状況ともなれば、全ての医療機関はコロナ前よりも過酷な状況に置かれることとなる。地域医療の維持・継続、立て直しに向けて、大幅なプラス改定が不可欠である。。

 

【補足】6月単月調査は参考になりがたい

2019、20、21年における6月単月の損益比率(コロナ補助金含まず)については、一般病院では▲2.3%、▲6.6%、▲4.7%、医科診療所(個人・無床)は33.4%、28.9%、34.1%、医科診療所(医療法人・無床)は7.7%、3.2%、9.6%で推移した。歯科診療所(個人)では31.7%、31.6%、32.9%となっている。
当初、コロナの影響が相対的に低いと思われる直近の月を選んで、前年・前々年との比較を試みる予定であったが、今年に入ってもコロナ感染拡大が収まらず、直近の経営状況を見る形で6月単月分で調査する形となっている。6月単月分については、コロナ感染拡大の状況や患者の受診動向(延期した手術・検査の集中実施等)などが異なる点、季節変動や算出方法(退職金・賞与等)の影響などもあり、参考になるとは言い難い。

 

医科診療所、歯科診療所(個人立)、病院の収益・費用の増減など

 

医業
収益
医業・介護費用 損益比率
( )内は19→20年
コロナ関連補助金を含んだ損益比率
( )は19→20年
赤字施設の割合
( )は19→20年
  給与費
医科診
(個人立・無床)
▲7.9% ▲2.5% +0.1% 28.8%(▲3.9%) 29.6%(▲3.1%) 39.5%(+10.7%)
  最頻値 ▲10.1% ▲2.9% ▲1.5% 15.1(▲6.4%) 16.3%(▲5.2%)
医科診
(医療法人・無床)
▲4.5% ▲1.2% ▲0.2% 4.0%(▲3.1%) 4.4%(▲2.7%) 49.4%(+17.2%)
  最頻値 ▲8.9% ▲1.0% ▲0.5% ▲12.3%(▲8.8%) ▲11.6%(▲8.1%)
歯科診(個人立) ▲3.2% ▲1.1% ▲0.1% 28.1%(▲1.6%) 30.1%(+0.4%) 35.3%(+5.4%)
  最頻値 ▲9.9% ▲3.3% ▲6.5% 16.3%(▲5.8%) 20.4%(▲1.7%)
一般病院(全体) ▲3.3% +0.2% +1.0% ▲6.9(▲3.8%) 0.4%(+3.5%) 62.0%(+9.1%)
一般病院
(国公立以外の全て)
▲2.2% +0.1% +0.8% ▲1.8%(▲2.6%) 2.7%(+1.9%) 52.8%(+10.9%)
一般病院(国立) ▲7.9% ▲1.2% ▲0.0% ▲9.2%(▲7.5%) 6.8%(+8.5%) 88.8%(+11.0%)
一般病院(公立) ▲5.5% +0.5% +1.7% ▲21.4%(▲7.2%) ▲7.3%(+6.9%) 98.6%(+1.4%)
※医業収益、医業・介護費用は2019年度から20年度にかけての金額の伸び率。
※損益比率は、医業・介護収益に占める損益差額の割合。( )は2019年度から20年度にかけて伸び率。
※最頻値は損益差額の階級区分におけるもの。
※赤字施設の割合(2020年度)は、コロナ関連補助金を含まない数値。医療法人は0%未満が各々の全体に占める割合。個人立では20%未満で設定(※損益差額に開設者の報酬、建物・設備の改善に要する費用が含まれているため便宜的に調整)。
※第23回医療経済実態調査結果に基づき作成

以上

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