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【主張】病床削減を止め、急性期・回復期の体制整備を求める

全国保険医新聞2022年2月25日号より)

 

 厚労省は昨年、医療法の「改正」を行い、医療提供体制の再編を加速しようとした。しかし、新型コロナ感染第5波では入院病床が確保できず在宅での死亡が相次いだ。地域医療介護総合確保基金による病床削減は計画どおりには進んでいない。
 オミクロン株の感染拡大は急速で、岸田内閣による確保病床はたちまちひっ迫した。一日当たりの死亡者は150人を超え第5波を上回っている。半数は事後に感染が確認されており市中感染が拡大している。
 第6波では、重症よりも軽症・中等症患者の病床の不足が目立っている。病院は余裕がない中で病床をコロナ用に割き、スタッフの感染も頻発し、救急医療をはじめとする通常医療も困難に直面している。
 抗ウイルス薬や中和抗体薬による重症化防止への期待が高まっている。軽症時に期を逸さず適切な投与が求められる。新型コロナでは、病状が急に悪化することがあり、確実な病状観察と判断が欠かせない。厚労省は宿泊施設や自宅での療養の対象を拡大しているが、適切な医療提供に不安がある。入院のバックアップがないため開業医や医療者も困難な状況に置かれている。病床不足の弥縫策と言わざるを得ない。
 厚労省には、軽症・中等症を受け入れられる急性期と回復期の体制整備を求めたい。流行時に使える病床数の確保、感染対策に必須の環境整備、マンパワーの育成確保が重要な柱となる。
 今回の診療報酬改定では、入院の感染防止対策加算を「感染対策向上加算」に再編、診療所には外来感染対策向上加算を新設した。感染対策の質を上げ、医療連携を構築する方向だ。しかし、算定のハードルの高さは課題だ。すべての医療機関の感染対策を向上させる施策こそが必要である。
 岸田政権は、十分な検討なしに、病床数・病院数が多く医療資源散在が医療提供体制の脆弱性の原因だとし、これまでの医療費削減政策を反省しない。
 欧州委員会やWHOは、今回のパンデミックの教訓を踏まえ、レジリエンス(回復力)構築ための検討を始めている。振り返るべきは、わが国の医療体制のレジリエンスではないか。政府は質の高い医療の提供を国に課した感染症法を真摯に受け止め、姿勢を改めるべきである。

以上

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