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医療区分1の多くが退院困難
療養病床が果たす重要性も明らかに
… 全国保険医団体連合会「医療療養病床入院患者に関する実態調査」報告 …
2006年12月18日
全国保険医団体連合会
病院・有床診対策部会
T 調査の目的
2006年7月から、療養病床の入院基本料については、看護師等の人員配置の状況により病棟単位で設定する方法から、入院患者の医療必要度(医療区分1〜3)とADLの状態(ADL区分1〜3)の組合せによって入院基本料A〜Eの5区分の点数をそれぞれの患者に当てはめて算定する仕組みに改められた。
しかし、医療区分は療養病床に入院する多くの患者の実態とはかけ離れたものであり、入院医療が必要な患者が継続して入院することが困難になっている。
7月の実施から4ヶ月が経過した現在、医療療養病床の実態がどうなっているのか。医療区分は妥当なのか、区分1の診療報酬がこのままで良いのか等について、都道府県保険医協会の協力を得て、医療療養病床を有する病院と有床診療所に、11月1日現在の療養病床の状況や今後の対応についてアンケートを実施。29保険医協会・医会(北海道、青森、宮城、秋田、山形、福島、埼玉、千葉、東京、神奈川、長野、富山、愛知、三重、兵庫、鳥取、島根、岡山、山口、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島)、809の医療機関に協力いただいた。
なお、調査項目は異なるが、同様の趣旨での調査を、京都府保険医協会、大阪府保険医協会が実施、独自に調査結果をまとめている。
U 調査結果の概要
保団連では、保険医協会・保険医会の協力を得て、11月1日現在の療養病床の状況や今後の対応についてアンケートを実施。809の病院・有床診に協力をいただいた。
このうち、医療区分・ADL区分がわかる医療療養病床入院基本料を算定する635の医療機関のデータでは、@医療区分1の半数が引き続き入院医療の必要性がある、A福祉施設や在宅によって対応ができる患者の半数は行き先が決まっていない、B行き先が決まっていないうち、32.8%が「家族が在宅への受入れを拒否する」、32.6%が「独居又は老人世帯で、在宅に看護・介護力がない」、22.8%が「施設入所の待機者が多くて、すぐには入所できない」ことが判明。
経管栄養を実施している患者の在宅療養が独居や老人世帯等では困難であることはもちろん、限られた人員配置で医療対応をせざるを得ない老健施設では、こうした患者の受入れ数に制限を設けており、特養では、受入れそのものが難しい実態が明らかとなった。
また、医療区分2に追加すべき状態について次の意見が多く寄せられた。
@ インスリン注射が必要だが自己注射が不可能な患者。
A ADLが低い患者などで、経管栄養を実施するなど、一定の医療提供が必要な場合
B 「30日を超えるリハビリテーションを実施している患者」、「8回未満だが毎日頻回の喀痰吸引を実施している場合」、「区分2となる状態の日数制限の廃止」「区分2となる状態像の緩和」など、医療区分2の要件緩和。
C 急性期の患者
なお、有床診では、収入そのものが大幅に減少しており、医療必要度の高い患者が多い病院では収入が回復するが人員配置を増やさなくてはならず、収支構造は悪化する可能性が高いことがわかった。
この結果を踏まえ保団連では、@医療区分1の診療報酬の引き上げ、A医療区分2の拡大、B施設や在宅の基盤整備の優先、C介護療養病床全廃計画の白紙撤回をもとめてさらに運動を強めていく。
V 調査結果
1. 調査回答とデータの取扱い(表1〜表3参照)
調査は、809医療機関から回答をいただいた。
今回のアンケートでは、この数ヶ月の間に医療療養病床を廃止した医療機関や介護療養病床のみを有する医療機関など、医療療養病床を持たない109医療機関からアンケートを送付いただいた。また、特別入院基本料や回復期リハビリテーション病棟等では医療区分・ADL区分を行わない。
このため、「2.ADL・医療区分評価結果」、「3.医療区分1の患者の状態」、「4.医療療養病床を今後どうるすか」については、入院基本料のみを算定している472病院、26,186床、23,784人のデータと、163診療所、1,333床、1,135人のデータをまとめた。これは、療養病床を有する4,276病院の11.04%、病床では352,328床の7.43%にあたり、療養病床を有する2,265診療所の7.20%、病床では22,292床の5.98%にあたる。
なお、「5.退院が困難な事例」、「6.区分2・3に該当させるべき状態像」、「7.国に対する意見」は、全ての医療機関から寄せられたご意見を反映させていただいた。
表1.アンケート協力医療機関数 809医療機関
|
入院基本料 |
特別入院基本料 |
介護保険移行準備病棟 |
回復期リハビリ病棟 |
入院基本料E算定病棟 |
対象外 |
病院 |
472 |
12 |
3 |
44 |
1 |
36 |
有床診 |
163 |
5 |
0 |
- |
0 |
73 |
合計 |
635 |
17 |
3 |
44 |
1 |
109 |
※ 2〜4の集計は、入院基本料算定医療機関のみ(635医療機関)の集計です。
※ 5〜7の意見は、全ての医療機関の意見です。
表2.医療療養病床総許可病床数(11月1日現在)
|
許可病床数 |
病院 |
26,186 |
有床診 |
1,333 |
合計 |
27,519 |
表3.医療療養病床総入院患者数(11月1日現在)
|
患者数 |
病床利用率 |
病院 |
23,784 |
90.83 |
有床診 |
1,135 |
85.15 |
合計 |
24,919 |
90.55 |
2. 入院患者のADL・医療区分評価結果(表4の@〜D参照)
(1) 病院は、医療区分1の割合が大幅に減少
6月に保団連が実施した調査に比べて医療区分1の割合が大幅に減少。区分2・3の割合が大幅に増加した。
医療必要度の高い患者が多い病院では収入は回復するが、支出については、医療区分2・3の患者の割合が3か月の平均で8割以上の病棟では看護職員と看護補助者を25%ずつ増やさなくてはならなくなり、看護師不足が急激に拡大している状況の中で、支出増により収支差はむしろ悪化する可能性が高い。
なお、11月1日現在で、医療区分2・3の患者の割合が8割を超える病院は、133病院あった。
表4の@.病院の入院患者のADL・医療区分評価結果(上段=人数 下段=割合)
病院 |
|
医療1 |
医療2 |
医療3 |
計 |
ADL1 |
3,042 |
2,033 |
477 |
5,552 |
|
12.8% |
8.5% |
2.0% |
23.3% |
||
ADL2 |
2,800 |
3,708 |
849 |
7,357 |
|
11.8% |
15.6% |
3.6% |
30.9% |
||
ADL3 |
2,308 |
5,777 |
2,790 |
10,875 |
|
9.7% |
24.3% |
11.7% |
45.7% |
||
計 |
8,150 |
11,518 |
4,116 |
23,784 |
|
34.3% |
48.4% |
17.3% |
100% |
表4のA.病院の医療区分の割合について、前回6月保団連調査対比
|
病院 |
||
6月調査 |
今回調査 |
前回比 |
|
医療区分1 |
51.0% |
34.3% |
▲16.7% |
医療区分2 |
41.4% |
48.4% |
+7.0% |
医療区分3 |
7.6% |
17.3% |
+9.7% |
(2)
有床診の医療区分は、ほとんど変化なく、大幅減収に
有床診の医療区分の比率には、ほとんど変化がなかった。
これは、有床診の療養病床の収入が大幅に低下していることを示すものであり、今後の医療療養病床の予定について「医療療養病床のまま」とする回答が病院では、72.2%あるのに対して、有床診では54.0%にすぎないという結果にも現れている。
表4のB.有床診の入院患者のADL・医療区分評価結果(上段=人数 下段=割合)
有床診 |
|
医療1 |
医療2 |
医療3 |
計 |
ADL1 |
370 |
99 |
15 |
484 |
|
32.6% |
8.7% |
1.3% |
42.6% |
||
ADL2 |
109 |
209 |
24 |
342 |
|
9.6% |
18.4% |
2.1% |
30.1% |
||
ADL3 |
99 |
164 |
46 |
309 |
|
8.7% |
14.4% |
4.1% |
27.2% |
||
計 |
578 |
472 |
85 |
1,135 |
|
50.9% |
41.6% |
7.5% |
100% |
表4のC.有床診の医療区分の割合について、前回6月保団連調査対比
|
有床診 |
||
6月調査 |
今回調査 |
前回比 |
|
医療区分1 |
50.0% |
50.9% |
+0.9% |
医療区分2 |
41.4% |
41.6% |
+0.2% |
医療区分3 |
8.6% |
7.5% |
▲1.1% |
表4のD.病院+有床診の医療区分の割合
B病院+有床診 |
|
医療1 |
医療2 |
医療3 |
計 |
ADL1 |
3,412 |
2,132 |
492 |
6,036 |
|
13.7% |
8.6% |
2.0% |
24.2% |
||
ADL2 |
2,909 |
3,917 |
873 |
7,699 |
|
11.7% |
15.7% |
3.5% |
30.9% |
||
ADL3 |
2,407 |
5,941 |
2,836 |
11,184 |
|
9.7% |
23.8% |
11.4% |
44.9% |
||
計 |
8,728 |
11,990 |
4,201 |
24,919 |
|
35.0% |
48.1% |
16.9% |
100% |
3.11月1日現在で医療療養病床に入院する医療区分1の患者の状態について
(1) 医療区分1の患者の半数は、施設や在宅では対応できない。(表5参照)
…医療区分の大胆な見直しが必要
11月1日現在で医療療養病床に入院する医療区分1の患者の状態について、「容態急変の可能性は低く、福祉施設や在宅によって対応できる」との回答は病院で48.7%、有床診で32.5%であった。
区分1の患者の半数以上が、施設や在宅では対応が困難であることを示しており、区分の見直しにあたっては、小手先でなく大胆な見直しが必要であることを示している。
表5.11月1日現在で医療療養病床に入院する医療区分1の患者の状態について
選択肢(1つのみ) |
|
病院 |
有床診 |
合計 |
@病状が不安定で、常時医学的管理を要する。 |
患者数 |
671 |
56 |
727 |
割合 |
8.2% |
9.7% |
8.3% |
|
A病状は安定しているが、容態の急変がおきやすい。 |
患者数 |
1,006 |
103 |
1,109 |
割合 |
12.3% |
17.8% |
12.7% |
|
B容態急変の可能性が低いが、一定の医学的管理を要する。 |
患者数 |
2,295 |
218 |
2,513 |
割合 |
28.2% |
37.7% |
28.8% |
|
C容態急変の可能性は低く、福祉施設や在宅で対応できる。 |
患者数 |
3,966 |
188 |
4,154 |
割合 |
48.7% |
32.5% |
47.6% |
|
Dその他 |
患者数 |
212 |
13 |
225 |
割合 |
2.6% |
2.2% |
2.6% |
|
合計 |
患者数 |
8,150 |
578 |
8,728 |
割合 |
100% |
100% |
100% |
(2)
福祉施設や在宅で対応可能な患者の5割が、行き先がきまっていない。(表6参照)
「福祉施設や在宅によって対応できる」と回答した患者の今後の予定を伺ったところ、病院で47.7%、有床診で63.3%の患者が「行き先がきまっていない」との回答であった。
表6.「福祉施設や在宅によって対応できる」と判断した患者の予定について
選択肢(1つのみ) |
|
病院 |
有床診 |
合計 |
@福祉施設にいく予定である |
患者数 |
985 |
20 |
1,005 |
割合 |
24.8% |
10.6% |
24.2% |
|
A介護療養病床にいく予定である |
患者数 |
232 |
5 |
237 |
割合 |
5.8% |
2.7% |
5.7% |
|
B有料老人ホーム等にいく予定である |
患者数 |
79 |
3 |
82 |
割合 |
2.0% |
1.6% |
2.0% |
|
C在宅療養を行う予定である |
患者数 |
780 |
41 |
821 |
割合 |
19.7% |
21.8% |
19.8% |
|
D行き先が決まっていない |
患者数 |
1,890 |
119 |
2,009 |
割合 |
47.7% |
63.3% |
48.4% |
|
合計 |
患者数 |
3,966 |
188 |
4,154 |
割合 |
100% |
100% |
100% |
(3) 行き先がきまらない理由は、入所施設の少なさと、在宅における看護・介護力不足
…施設整備、在宅療養の整備を先行させるべき(表7参照)
行き先がきまっていない患者の理由について、病院では、@独居又は老人世帯で、在宅に看護・介護力がない(32.3%)、A家族が在宅への受入れを拒否する(32.3%)、B施設入所の待機者が多くて、すぐには入所できない(24.0%)の順番であった。
有床診では、@家族が在宅への受入れを拒否する(39.5%)、A独居又は老人世帯で、在宅に看護・介護力がない(37.8%)、B本人が望まない(21.8%)の順番であった。
下記5に「医療区分1の患者で退院が困難な事例」を紹介したが、独居又は老人世帯で、「ADLが低い」「認知症がある」「目が不自由」等の患者で経管栄養やインスリン注射を要する場合は、在宅療養が困難なだけでなく施設入所も困難となっている。
「家族が在宅への受け入れを拒否する」との回答について、その理由は伺っていないが、「退院が困難な事例」の中に、一度引き取ったが介護疲れとなった事例も寄せられている。
表7.行き先が決まっていない患者の理由(複数回答)
選択肢(複数回答) |
|
病院 |
有床診 |
合計 |
@入所施設がない |
患者数 |
197 |
3 |
200 |
割合 |
10.4% |
2.5% |
10.0% |
|
A施設入所の待機者が多くて、すぐには入所できない |
患者数 |
454 |
4 |
458 |
割合 |
24.0% |
3.4% |
22.8% |
|
B患者の病状のために、施設等が受けいれてくれない |
患者数 |
184 |
8 |
192 |
割合 |
9.7% |
6.7% |
9.6% |
|
C独居又は老人世帯で、在宅に看護・介護力がない |
患者数 |
610 |
45 |
655 |
割合 |
32.3% |
37.8% |
32.6% |
|
D家族が在宅への受入れを拒否する |
患者数 |
611 |
47 |
658 |
割合 |
32.3% |
39.5% |
32.8% |
|
E住環境の問題で、在宅は困難 |
患者数 |
206 |
14 |
220 |
割合 |
10.9% |
11.8% |
11.0% |
|
F本人が望まない |
患者数 |
204 |
26 |
230 |
割合 |
10.8% |
21.8% |
11.4% |
|
Gその他 |
患者数 |
181 |
5 |
186 |
割合 |
9.6% |
4.2% |
9.3% |
|
合計(行き先が決まっていない患者数) |
患者数 |
1,890 |
119 |
2,009 |
4.医療療養病床を今後どうする…「迷っている」が病院27.8%、有床診38.7%(表8参照)
病院は、「医療療養病床のまま(72.2%)」、「回復期リハ病棟、亜急性期病棟、障害者施設等への転換(12.1%)」、「老人保健施設(10.4%)」、「一般病床へ転換(10.2%)」であり、「迷っている」との回答が27.8%あった。
有床診は、「医療療養病床のまま(54.0%)」、「迷っている(38.7%)」、「一般病床へ転換(22.1%)」という結果であった。
表8.医療療養病床を今後どうする予定か(複数回答)
選択肢(複数回答) |
|
病院 |
有床診 |
合計 |
@医療療養病床のまま。 |
患者数 |
341 |
88 |
429 |
割合 |
72.2% |
54.0% |
67.6% |
|
A一般病床に転換する。 |
患者数 |
48 |
36 |
84 |
割合 |
10.2% |
22.1% |
13.2% |
|
B回復期リハ病棟、亜急性期病棟、障害者施設等に転換する。 |
患者数 |
57 |
- |
57 |
割合 |
12.1% |
- |
9.0% |
|
C老人保健施設にする。 |
患者数 |
49 |
4 |
53 |
割合 |
10.4% |
2.5% |
8.3% |
|
D有料老人ホームにする。 |
患者数 |
11 |
2 |
13 |
割合 |
2.3% |
1.2% |
2.0% |
|
E有床診にする。 |
患者数 |
2 |
6 |
8 |
割合 |
0.4% |
3.7% |
1.3% |
|
F病床を廃止する。 |
患者数 |
9 |
10 |
19 |
割合 |
1.9% |
6.1% |
3.0% |
|
G迷っている。 |
患者数 |
131 |
63 |
194 |
割合 |
27.8% |
38.7% |
30.6% |
|
Hその他 |
患者数 |
20 |
5 |
25 |
割合 |
4.2% |
3.1% |
3.9% |
|
合計(有効回答医療機関数) |
患者数 |
472 |
163 |
635 |
5.医療区分1の患者で退院が困難な事例
医療区分1の患者で退院が困難な事例が病院・有床診から741件寄せられたが、問題は一つではなく、複合的な原因によることが多い。
困難事例として多いのは、独居老人や老人のみの世帯等での経管栄養を実施している場合であり、在宅での困難はもちろんのこと、限られた人員配置で医療対応をせざるを得ない老人保健施設では、こうした患者の受入れ数に制限を設けており、特別養護老人ホームでは、受入れそのものが難しい実態が明らかとなった。
特に、「介護サービスが少ない」「施設がない」「申し込んでも待機者が多く入所できない」「医療的な処置を要する場合は、人数制限がある」などの声が沢山寄せられており、独居老人の場合には、施設入所の際に必要な保証人が確保できないためとの回答もあった。
また、インスリン注射を要する場合であって、ADLが低い場合、認知症がある場合、目が不自由な場合などでは、昼間も家族がいなければ在宅療養は不可能であり、施設入所も困難である。
さらに、「山間僻地で公共交通機関の利用もできず、在宅は独居」との回答もあり、都会をベースにした施策から、地域差を見据えた対応も重要であると考える。
6.医療区分2・3に該当すべき状態像
医療区分2に該当すべき状態像として835件の意見が寄せられた。主な意見を下記に整理した。
@
インスリン注射が必要だが自己注射が不可能な患者
A
ADLが低い患者などで、経管栄養を実施するなど、一定の医療提供が必要な場合
B
「30日を超えてリハビリテーションを実施している患者」、「8回未満だが毎日頻回の喀痰吸引を実施している場合」、「尿路感染症治療や、脱水治療、せん妄に対する治療等、区分2となる状態の日数制限の廃止」「パーキンソン病、他者に対する暴力、脊髄損傷による麻痺、慢性閉塞性肺疾患、悪性腫瘍に対する治療、褥瘡、経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養等の要件緩和」など、医療区分2で定めている要件の緩和。
C
急性期の患者
上記以外にも、区分2とすべき個別の状態の意見も沢山寄せられているが、それらを全て区分2のカテゴリーに整理していくことは困難である。こうしたことからも、区分1の診療報酬を、医師・看護職員をはじめとした人件費や医療提供にかかわる諸経費を保障できるように引き上げることが、第一に重要である。
また、区分2を複数有する場合は、区分3とすべきとの意見も寄せられている。
7.国に対する意見
@ 介護療養病床について
2000年の介護保険制度施行からわずか6年で、十分な検討を一切せずに突然制度廃止を決定し、これによる患者や医療機関に対する措置の詳細は今後検討されるという、傍若無人な対応に、怒りと困惑の声が寄せられている。
同時に、介護難民が増えて、行く場所に困っており、早急に入所施設の整備や在宅療養を行う患者、家族への援助体制を強化すべきとの声も寄せられており、今回の介護療養病床廃止・医療療養病床削減政策は、老人をターゲットにした「棄民政策」であり、今後全ての国民にのしかかってくる重大な問題である。
A 医療療養病床について
第一に、医療区分1の診療報酬については、人員配置に応じた適切な水準に引き上げること。第二に、医療区分2・3の範囲を大幅に拡大し、入院医療が必要な患者が退院せざるを得なくならないようにすべきとの意見が寄せされている。
また、区分判定に労力が裂かれ、本来の医療や看護・介護業務を圧迫しており、区分判定を月1回にするよう求める意見も寄せられている。
B 有床診について
病院の入院料も低いが、有床診療所の入院料はさらに低く、入院医療そのものが継続できない。有床診療所の入院料の引き上げを求める声が寄せられている。
C 全ての病床について
7:1入院基本料の創設、看護師比率の引き上げ、夜勤体制の強化などによって、地方の病院を中心に看護師不足が広がっていることから、「7:1入院基本料について病院単位から病棟単位の届出にすべき」、「看護師比率の緩和」「複数夜勤、72時間の緩和」を求める声が寄せられている。
V 考察
(1)
厚生労働省は、医療区分の判定にあたり、入院医療の必要性の少ないものを「医療区分1」としたとしているが、区分1の半分が引き続き入院医療の必要性があることがわかった。
(2)
医療療養病床からは退院が可能だが、施設不足や在宅での介護・医療サービスの整備が不十分なために退院させられない患者が少なくないことがわかった。
(3)
在宅医療や施設で実施できる医療には限度があり、療養病床が地域医療に果たしている重要性があらためてわかった。
(4)
有床診では、収入そのものが大幅に減少しており、医療必要度の高い患者が多い病院では、収入は回復するが人員配置を増やさなくてはならず、収支構造は悪化する可能性が高いことがわかった。
(5)
こうしたことから、次の対応を図るべきである。
@ 医療区分1の診療報酬(入院基本料D・E)を、医師・看護職員をはじめとした人件費や医療提供にかかわる諸経費を保障できるよう(入院基本料C相当)に引き上げること。
A 4頁「5.医療区分2・3に該当すべき状態像」について医療区分を引き上げること。
B
施設や在宅の基盤整備を早急に行い、費用の心配なく必要な医療・介護・福祉が公的に受けられるようにすること。
C
「介護療養病床全廃」計画を白紙に戻すこと。