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開業医の4人に1人がうつ状態 疲弊が顕著に…保団連調査



 全国保険医団体連合会は「医師および歯科医師の精神状況についての意識調査」を行い、「4人に1人がうつ状態」など心身状態が明らかになった。同調査は10月6、7日の第22回保団連医療研究集会の全国共同調査として、福岡県保険医協会の財津吉和理事が発表した。以下、要旨を紹介する。

結果概要 

 昨春、福岡県保険医協会でも同様の調査を行ったが、期せずして、今回もほぼ同じ結果が得られた。8、435人中回収率が38・2%と良い成績だった。

 開業歴平均17・7年、無床診療所が92・4%、平均年齢58・4歳。1週間の平均労働時間43・7時間(医科と歯科でほとんど差がない)。65%が労働基準法の目安である週40時間をはるかに超えていた。60時間以上が8・8%もいた。

▼開業の直接の動機は「私生活の確保」、「専門性を生かす」、「経済的理由」が上位3位だった。▼在宅医療への取り組みは医科20・8%、歯科14・5%と多かった。

心身の具合

▼「現在、身体は疲れている」が82・4%。30%が「限界」を含め、かなり疲れている。さらに45%が何らかの程度で不眠症である。

▼今、ストレスに感じていることは、経営問題(歯科65・1%、医科38・3%)、従業員問題、家庭内の問題など、81・2%が何らかのストレスがある。

▼息抜きは何ですかとの問いには趣味、飲食・会食が多くあげられた。その場しのぎで何とかストレスを解消しているが、実際はかなり厳しく、積もり積もったストレスに押しつぶされそうだという悲鳴が聞こえてくる。(息抜きは86・8%でできているとは答えているが)。

▼自分の本来の性格(精神状況)は、うつ気質が23・4%(4人に1人弱がうつ)となり、異常にうつ気質の人が多い。

▼現在の精神状況は、うつ状態(27・3%)とさらに厳しい。うつに対して服薬している(26・7%)と、4人に1人がうつ状態であり、さらにそのうち4人に1人が何らかの服薬をしているという、異常な状態である。

▼相談相手は、約半数は配偶者。いないが16・2%、8・2%が精神科医等と答えており、すでに相当に重症である。

仕事、今後に関して

▼今の仕事に愛着は「ある」70・9%(医科75・7%、歯科64・8%)、「ない」21・8%(医科17・0%、歯科28・0%)、日頃からより打たれ強い歯科ですら、28・0%が愛着がないわけで、歯科のより厳しい現状を表している。

▼生まれ変われるとしたら、再び今の仕事を選ぶか、「はい」46・2%(医科58・9%、歯科29・7%)、「いいえ」24・4%(医科14・8%、歯科36・8%)は、現在および将来の医療状況の厳しさ(とりわけ歯科)を考えると躊躇せざるを得ない。。

▼「引退する年齢」は67・5歳(医師の平均寿命は68歳〜73歳とされており、「体力が続く限り」45・5%を含めると、事実上ほとんどが死ぬまで働くと答えている)。

▼身内からの継承で開業したと答えた人が22・1%と意外に少ない。子女を継がせたいかとの問いには、59・6%がすべて本人の意志と能力に任せるが、もしも医師や歯科医師になってくれたら嬉しいと答えている。

▼今までの人生は84・3%が満足と、非常に高い満足度である。

▼保険医協会に何を期待するかでは、@医療制度の改善、A保険請求・審査対策、B情報提供・広報活動などがあげられた。

まとめ

 多くの開業医師および歯科医師がこの厳しい医療環境の下、心身のストレスでうつ状態になりながらも、けなげに耐え忍んで、日常診療に従事している姿がはっきり浮かび上がった。

 元来、我々医師や歯科医師は相当に我慢強い。しかし、もう我慢の限界で、何らかの国家的な施策が早急になされなければ、取り返しのつかない事態に陥るであろう。そうなれば国民全体にとっても、ゆゆしき一大事で、国民は不幸のドン底に叩き落されることになる。国民全体を巻き込んで、政府に対し、早急な医療政策の大転換を迫ろう! いわく、世界に冠たる国民皆保険制度を堅持し、健康保険証一枚で、国民が安心して十分な医療を受けられ、また、我々医師と歯科医師が余裕を持って、最良の医療を提供できるよう求める。

(福岡県保険医協会理事・財津吉和)