高齢者のインフルエンザ予防接種の実施状況調査

(調査結果の概要と政府への要望事項)

1、調査の主旨・内容

 今冬のインフルエンザ流行期にSARS(重傷急性呼吸器症候群;新型肺炎)発生の危惧が指摘されていることから、世界保健機関(WHO)は、SARS対策との関連で、医療関係者や抵抗力の弱い高齢者等に対するインフルエンザ予防接種の徹底を呼びかけています。

 市町村においても、例年にない十分な対策が求められているところから、今般、インフルエンザ予防接種の実施状況について調査を行いました。

  調査対象:都道府県県庁所在地市(東京都を除く)

  調査内容:調査結果の一覧(PDF)その1その2

  調査期日:2003年10月

 これまでに保団連に届いたのは、37県庁所在地市の実施状況で、調査結果の概要は、次項の通りです。

 回答市:札幌、青森、盛岡、仙台、山形、福島、宇都宮、前橋、さいたま、千葉、横浜、新潟、富山、福井、長野、岐阜、静岡市、名古屋、津、大津、京都、大阪、神戸、奈良、松江、鳥取、岡山、山口、徳島、高松、松山、福岡、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島。以上37市。

  <未集約>秋田、水戸、甲府、金沢、和歌山、広島、高知、大分、那覇の9市。

2、調査結果の概要(37市の集計)

1)予防接種の案内方法について

@ 自宅に住む対象者に対し、「かかりつけ医療機関から案内」(13市)、「対象者の自宅に個別案内」(7市)を実施している市は20市にとどまっています。対象者への個別案内の徹底が望まれます。

A入院(所)中の対象者に対しては、7市で「対象者の自宅に個別案内」、21市で「入院・入所施設より案内」を実施しています。全市において対象者に個別に案内することが望まれます。                   

2)実施期間 (調査結果参照)

3)接種費用

   熊本市では「無料」、28市において自己負担を「1,000円」としています。
 なお、岡山市「2,000円」、徳島市「1,800円」等があり、より廉価で実施するよう求めたいところです。

4)無料接種の範囲

 @生活保護受給者である対象者については、全市で「無料」の扱いです。

 A市町村民税非課税世帯の対象者については21市で「無料」としていますが、自己負担を徴収している市が16市もあります。予防接種法では、「市町村長の判断で無料とすることができる」と規定しており、積極的な対応を求めたいところです。

 B病院又は介護保険施設に入院(所)中の対象者について、「無料」の扱いをとっている市は6市にとどまっています。

   熊本市では、市が接種を委託した医療機関が実施した場合はすべての入院(所)中の対象者について「無料」の扱いとしています。また、横浜市では、市内高齢者施設の入所者は全員「無料」としています。その他、青森市、大阪市、神戸市、山口市においても「無料」の扱いを独自に規定しています。

  施設内の集団感染・死亡を防止するため、各市において積極的な措置をとるよう求めたいところです。

5)協力医療機関

@ 医師会加入医療機関(医師会に加入する医師の属する医療機関)に予防接種を委託する扱いをとっている市が20市あります。

 この場合、医師会に加入する医師のいない医療機関での接種は公費接種とならず、原則として全額が被接種者の自己負担となります。 

A 一方、医師会加入・未加入を問わず(医師会に加入する医師の有無を問わず)、予防接種の協力を申し出たすべての医療機関に公費接種を委託する扱いとしている市が17市となっています。

3、まとめ及び政府への要望事項

 今回の調査から、予防接種法に基くインフルエンザ予防接種の実施について、各市の間でその取扱いに大きな違いがあることが判明しました。

 厚生労働省は、SARSと初期症状が類似するインフルエンザの予防対策として、国民への啓発、ワクチンの確保、インフルエンザの検査キットや治療薬の確保等をすすめていますが、今回の調査の結果、予防接種対策の一層の強化が必要であると考えられるます。

 具体的には以下の対策をとるよう政府に改めて要望します。

政府への要望事項

1、 今冬の予防接種の実施期間中に、対象者全員に個別に案内するとともに、入院(所)中の対象者については、入院(所)先の施設長より個別に案内するよう、市町村に対し奮起を促すこと。
 また、国においては、マスコミ等を活用とした広報を強化すること。

2、無料接種の範囲を広げること。

@ 市町村民税非課税世帯の対象者については、予防接種法で「市町村長の判断で無料とすることができる」と規定されており、徹底を図ること。

A 施設内のインフルエンザ集団感染・死亡は、毎年の社会問題となっているところから、入院(所)中の高齢者については、入院(所)地において無料接種とするよう、市町村を強力に指導すること。

B 上記@Aに関し、国及び都道府県において一定の財政措置をとること。

3、高齢者の生活圏や行動範囲を鑑み、身近な医療機関で公費接種を受けられるようにすること。

  そのために、予防接種の協力医療機関については、医師会に加入する医師が所属する医療機関に限定せず、予防接種の実施が可能であると申請したすべての医療機関において公費接種を行うよう、市町村を指導すること。

以上