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学校保健の向上求め文科相に要望

文部科学大臣 中山成彬殿

2004年10月18日
全国保険医団体連合会
会長 室生 昇

学校保健の向上並びに教育行政のあり方に関する要望書

 児童をとりまく経済、社会、生活環境の変化と悪化の進行は、児童生徒の心身及び学校現場に強い影響を及ぼしており、学校保健の分野では、栄養失調や結核等が主要課題であった時代から大きく変貌し、体力・運動能力の低下、「心の問題」、喫煙・薬物、性感染、少年犯罪、食生活の乱れ、生活習慣病等の問題が大きな問題となり、それぞれ対策が急がれる課題となっています。

 また、不登校児童生徒(2001年度末で13万人突破)の声として、学校が楽しくない等の学校生活の問題が指摘されており(「1993年度不登校生徒追跡調査」文部省)、「心の問題」は、教師や仲間とともに楽しく学ぶ喜びを保障できなくなっている学校・教育行政のあり方に深く結びついていると考えられます。

 つきましては、児童・生徒の心身の健全な発達を保障するために、学校保健に係る行政上の課題及び教育行政のあり方に関し、下記の要望をいたします。

 貴職におかれましては、これらの要望事項について積極的な対応をとられますよう、強く要望いたします。



1、学校保健に係る行政上の課題

1、学校保健に関する統計の整備・充実

@ 学校保健に関する統計については、長期にわたる経年的な観察・分析を行えるように整備すること。

  

2、都道府県教育委員会に学校保健技師を必置とすること

@ 学校保健活動の質的向上、学校長の「熱意」如何で左右される現状の改善を図るために、都道府県教育委員会に学校保健技師を必置とし、市町村教育委員会にも学校保健技師を原則として配置する必要がある。

  

3、健康診断項目の追加

 @急増しているアレルギー疾患に関連する項目を加え、健康づくりに生かすこと。

 A顎口腔系として健診を行い、歯ぎしり、いびき等関連項目について十分な記録がとれるようにすること。

4、健診後の受診の保障(健診後の事後措置(法7条)関連)

@ 保護者の経済的事情の悪化が広がり、就学援助児童生徒が増加している。学校保健法による医療費補助制度(生活保護世帯及び就学援助世帯児童を対象)の対象となる「学校病」については、アトピー性皮膚炎、気管支喘息等のアレルギー疾患を加えるよう検討すること。

A 歯科健診の「噛み合せ」チェックで歯列不正、咬合異常が指摘され、健診後の受診が医療保険適用外の場合、第1回目の歯科受診の費用を学校保健予算で負担すべきである。


5、養護教諭の配置及び養護教諭と担任の連携の充実

@ 保健活動の充実、心の健康問題への対応充実を図るため、当面、500人以上の学校に養護教諭の複数配置をすすめること。

A 養護教諭と担任とが児童生徒に関する情報と共有し、連携して対応できるよう、学校長が積極的な役割を果たすこと。

6、学校給食の位置付けを高める

@ 家庭での食生活が貧困化しており、学校給食には戦直後とは異なる新たな役割がある。補食給食を早期に全廃するとともに、学校給食の時間を十分確保し、これを通じて歯の健康、よく噛む習慣づくり、食生活の見直しと改善を促進すること。

A 安全で新鮮な食材の確保を図るため輸入食品を避け、地場・国内産食材を活用するとともに、自校で調理する方式を拡大すること。

 B給食内容の充実と給食を通した食教育の充実のため、1校1名の学校栄養職員を配置すること。

 

7、学校設備等の改善

@ シックスハウス症候群の防止。併せて、シックハウス症候群の診断・治療に係る医療費一部負担金については公的助成を行うこと。

A 冷房設備の完備、適度の照度の確保、洋式トイレの普及等、学校設備の改善を急ぐこと。

B環境ホルモン問題等に鑑み、給食の調理機材・食器の素材について安全を期すこと。

  

8、学校保健委員会の強化

@ 学校保健委員会については、年に数回定期に開催する等、委員会がその目的を達成するための時間的保障を行うこと。また、委員会をすべての学校で設置すること。

A 学校保健を地域社会全体の関わりの中で推進していくために、学校保健委員会を、児童の健康・保健に係る内科・眼科・耳鼻科・歯科・精神科・産婦人科・整形外科・皮膚科等の各科連携、関係団体等のネットワークづくりを構築する場として機能させること。

 

9、学校医の配置の充実・工夫

 @児童生徒の今日の心身の健康課題に対応するため、学校医の複数配置(児童生徒300人〜400人以上は複数配置等)、学校医間の連携、学校医と小児科医・児童精神科医との連携(学区内あるいは一定の学校群を単位に)を都道府県及び市町村教育委員会の責任で体制を確立すること。

 A多数の学校を兼任する学校医(眼科医・耳鼻科医等)については、十分な健診及び事後措置ができる体制を確保すること。

 B学校医の選定に当たっては、学校の担当者及び保護者の意向を重視すること。

  

10、教職員の健康管理

@ 教職員の労働時間増大、労働密度増大について市町村教育委員会が調査を行い、労働条件の改善、超過勤務の削減等の措置を早急に取ること。

 A教職員に対する健康診断及び健康相談の充実を図るとともに、学校医とは別に、産業医を小中学校に配置する必要がある。50人未満の事業所にあたる小中学校については、小中学校の教職員数に応じた産業医を各市町村教育委員会に配置する等、積極的な措置を取ること。

11、ゆとりある楽しい学校づくりの課題

 @一学級児童数(小中校は現行40人以下 設置基準4条で規定)を減らし、一人一人の児童生徒に行き届いた教育、きめ細かい学級運営を行えるようにすること。それに伴う増員分の人件費について国庫補助を行うこと。

 A 学習指導要領は、要領を定めた当初の主旨に立ち返り、一定の目安とするにとどめ、各学校の自主的教育課程の編成を尊重すること。

 B競争の激化と学力格差の拡大が危惧される「学力テストの実施及び公開」「高校通学区規定の撤廃」「小中学校の学校選択の自由」、小学校卒業時の競争の激化が懸念される「中高一貫校」等の施策は、「多様化」ではなく「序列化」を助長するものであり、再検討すべきである。

 

2、教育行政のあり方に関する要望

1、教育の機会均等に関する課題について

@ 就学援助児童生徒や経済的理由による退学の増加に鑑み、授業料無償化を高校まで拡大すること。

A 小中学校(授業料は無償)においても保護者の教育費負担の軽減を図ること。

B 無利子貸与の奨学金枠の削減をやめ、これを拡大する等、無償化に向けた措置をとること。

 C障害児教育を保障するため、十分な人員・設備等の予算措置を国の責任において行うこと。

2、教育基本法改正問題について

 現行の教育基本法第1条は、児童生徒の「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健全な国民の育成」を掲げており、今求められているのは、この教育基本法を生かす学校づくりであると考え、以下を要望する。

 @教育基本法が「教育の目的」として掲げている「平和的な国家及び社会の形成者と して、(中略)育成する」とした理念を否定する法改正を行わないこと。

 A「自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民の育成」という教育基本法の目的を達成するためには、児童生徒が個人として尊重されることが必須である。児童生徒の 「内心の自由」――思想・良心の自由(憲法19条)、信教の自由(同20条)、学問の自由(同23条)、表現の自由(同21条)の制限につながる法改正は行わないこと。

 B政府が特定の価値観、特定の宗教観をもって教育に介入する余地を与える法改正を行わないこと。

 教育行政は、教育・学習の条件を整えることを本来の任務とすること。

以上