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厚生労働大臣 舛添 要一 様


2008年10月30日
全国保険医団体連合会
地域医療対策部会
医科部長 中島 幸裕
歯科部長 賀来 進 

 

国保料滞納世帯に対する保険証返還をやめ、正規の国保証を交付すること
〜こどものいる国保料滞納世帯に対する資格証明書交付調査結果等を踏まえて〜

前略 貴台の国民医療の確保に対するご尽力に敬意を表します。
さて、本日発表された「資格証明書の発行に関する調査」によると国保料滞納によって保険証を返還させられ、資格証を交付されている世帯に属する中学生以下の子どもが全国で3万2903人に上っています。
資格証を交付された場合は、医療費の10割を窓口で払わなくてはならず、ただでさえ、あまりにも高い保険料のもとで保険料を滞納せざるを得なくなっている世帯では、大幅に受診が抑制され、当会が行った2006年度の受診率調査では、一般被保険者のわずか51分の1しか受診できていないことが判明しています。
また、資格証交付などにより医療機関にかかれず死亡した事例も報道されています。
心身の成長期にある子どもに受診抑制が発生すれば、将来にわたって取り返しのつかない事態になってしまいます。児童福祉法第1条第2項では「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」とされ、2条では「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」とされています。子どもは親や社会を選ぶことができません。どの家庭に生まれても、必要な医療が受けられるべきです。
厚生労働省は、調査結果とともに本日付で「被保険者資格証明書の交付に際しての留意点」を発表し、@資格証交付に際して機械的運用を行うことがないこと、A子どもが医療を受ける必要が生じた場合は、滞納世帯の世帯主の申し出によって短期保険証の交付に努めること、などを求める通知を発出されました。

しかし、これでは、治療を受ける必要が生じてから保険証の交付を受ける手続きをすることとなってしまい、大きな受診抑制を生み出します。また、短期証は、「保険証に(短)の印がおされており、保険料を滞納していることを曝すようで、恥ずかしくてかかれない」との声があります。特に思春期の子どもにとっては、こうしたことが受診抑制につながる危険性が高くなります。

そもそも、国保料滞納の原因は、国保加入世帯の変化に逆行する国庫負担率の引き下げによる国保料の高さにあります。
平成17年度の国保加入世帯の平均年収は168万7千円ですが、年に14万円程度が国保料として徴収されています。高齢者夫婦2人世帯の場合の「生活保護水準」は、東京都で年間146万円、地方郡部では、年間113万円程度ですが、平均的な国保世帯でも、国保料徴収によって生活保護水準の生活になってしまいます。
加えて、病気や要介護になった場合には窓口負担が必要です。がんばって保険料を払っても、病気や要介護状態になったら医療も介護も受けられない状況が広がっています。
さらに、平成17年度「国民健康保険実態調査報告」(厚生労働省保険局)によれば、加入世帯の27.1%を占める「所得なし」世帯から、1世帯当たり25,836円(年)もの保険料(税)が徴収されています。  
まさに「払いたくても払いきれない」保険料です。
本来なら、所得なし層が増加する中で、国庫負担率を増やして国保の安定運営を図ることに全力をあげるべきだったにもかかわらず、国庫負担は削減されており、国保に対する国庫負担率は、1984年に医療費の45%から38.5%に削減され、平成18年度当初予算では医療費の33.9%にまで低下しています。
そもそも国保は、「社会保障及び国民保健の向上に寄与する」(国保法第1条)ものであり、そのためには無保険者を作ることないように低所得者に万全の策をとるべきであり、公費拡大が不可欠です。
今回の調査結果を踏まえ、国として早急に次の対策を取るよう、要望します。

一 国保に対する国庫負担を医療費総額の45%に戻すとともに、地方単独医療費助成事業を行った場合の国庫負担金の削減や、保険料収納率による国庫負担金の削減を止め、国保料を引き下げること。
一 特に、低所得者に対する保険料減免規定を拡充すること。
一 滞納による保険証返還請求及び「資格証」の交付を廃止し、全ての方に正規の国保証を交付すること。
一 少なくとも下記の方は、「資格証」の交付対象から除外すること。なお、子どものいる世帯については、短期証ではなく、正規の保険証を受診の有無にかかわらず交付すること。
@ 病気が発生した場合
A 子どものいる世帯
B 70歳〜75歳未満の前期高齢者
C 生活が困難な世帯(生活保護基準の1.5倍程度及びリストラや倒産)
一 後期高齢者医療制度における保険料滞納者に対する保険証返還請求と資格証明書の交付を廃止すること。