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黒い雨1万3千人分データめぐりシンポ
本田理事、放影研と討論

 


討論する本田理事(右)。中央は放影研の大久保
理事長。

 2月17日、本田考也理事が放射線影響研究所(放影研)で「発見」した1万3千人分の「黒い雨」データをめぐり、同研究所の大久保利晃理事長らと討論するシンポジウム「黒い雨と低線量被曝」が広島市で開催され、250人が参加した。

本田理事が1万3千人分のデータを「発見」したのは、インターネット上でアメリカの国立研究所が発行した「オークリッジ・レポート」を2011年に見つけたことに始まる。同レポートには原爆投下後に黒い雨に曝露した人々は、そうでない人に比べて発熱などの急性症状が20倍高く発症していると書かれていた。本田理事はこの真偽を放影研に問い合わせ意見交換をしているうちに、同研究所に未発表の黒い雨1万3千人分のデータが存在することが明らかになったものである。

マスコミからは黒い雨データを「隠していた」のではないかと指摘された同研究所は12年12月8日に、黒い雨データを分析したが長崎の総固形がんで死亡した人の数が黒い雨に曝露した人のほうが曝露しなかった人に比べて30%多かった1例を除いては、曝露群と非曝露群に有意差はなかったとのレポートを発表した。今回のシンポはこのレポートを受けて開かれたものである。

同研究所の大久保理事長は「マスコミでは隠していたと報道されたが、2008年に研究所にあるデータを総ざらいしたときに発見されたデータで、コンピュータへの入力を開始したもの。入力が終わり集計を開始した段階で本田先生に確認され報道されてしまった。隠していたわけではない。またマスコミからは12月のレポートで幕引きをするのではとの報道もあるが、幕を開けたわけではないのに幕の下から覗かれてしまったものだ」と述べた。

また大久保理事長は「放影研の研究には残留放射線の影響が含まれていないとの指摘もあるが、分析の結果、残留放射線の影響は無視できるほど小さいので入っていないだけだ」と説明した。これに対し本田理事は、「長崎の西山地区を調査したアメリカのDS86報告によると、放射性降下物による累積被曝線量は約400ミリシーベルトにのぼる。これは決して無視できる量ではない」と反論した。またパネリストの一人、広島市立大学広島平和研究所の高橋博子講師は「原爆投下後に入市した多くの人から急性症状が現れている。これは明らかに残留放射線の影響だ。アメリカは残留放射線の調査を1953年に打ち切った。これはアメリカにとって都合の悪いことがみつかったからではないか」と質した。

会場に参加した人からは「放影研は被爆者の貴重なデータをあずかっている。被爆者のことを考えるなら、データをすべて公開し誰でも研究できるようにすべきだ」などの意見が出された。これに対して大久保理事長は「研究は科学的・中立的なものでなければならない。被爆者の立場に立って研究することは、それゆえにできない」と応じた。