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「保険で良い歯科を」
―国会内集会に400人超―

(全国保険医新聞2015年6月15日号より)

会場の模様

 6月4日、「”歯は命”健康長寿社会に向けて 保険で良い歯科医療の実現を―6.4国会内集会」が行われた。主催は全国保険医団体連合会も参加する集会実行委員会。長年続く低歯科診療報酬のもと、歯科医院の厳しい経営実態は改善されず、患者の足も歯科医院から遠のいている。しかし口腔内の状況は、全身の健康に密接にかかわる。歯科医院の経営改善と保険範囲の拡大が求められている。

 6.4集会には、会場いっぱいの400人を超える参加者が集まった。日本歯科医師会の大久保満男会長、日本医師会の横倉義武会長、日本歯科衛生士会の金澤紀子会長をはじめ、140を超える団体、国会議員、首長、著名人から賛同、メッセージが寄せられた。歯科医師のみならず、歯科技工士、歯科衛生士、市民などからも、歯科医療の厳しい実態が次々と訴えられた。
 保団連の宇佐美宏歯科代表(集会副実行委員長)は、歯科医療がこのような状況では健康長寿社会を実現できないとし、「保険で良い歯科医療」を求める自治体意見書の採択を過半数に広げることを訴えるとともに、請願署名の取り組みを提案した(下記参照)。 50万筆の集約を目指して、11月末まで取り組みを強める。

請願署名

受診ためらう患者

 「2014年度保団連歯科会員アンケート」では、昨年の診療報酬改定で、約4割が「減収になった」と答えた。「保険で良い歯科医療を」全国連絡会の市民アンケートでは、「治療を放置している」との回答が約3割。理由は、「時間がない」が約6割、「治療が苦手」約3割、「費用が心配」約4分の1となっている。「時間がない」との回答の背景には、貧困と格差の拡大に伴う就労環境の悪化があると考えられる。「費用が心配」との回答には、窓口負担が重く、保険のきかない治療が多いために、受診をためらう患者の実態が示されている。
 よく噛むことは肥満解消や心筋梗塞、脳卒中の予防に効果的だ。歯周病と糖尿病の関わりも、近年明らかになっている。歯科治療の質を向上させ、患者が安心して歯科を受診できるようにするために、歯科診療報酬の引き上げ、窓口負担の引き下げと保険範囲の拡充が必要だ。

 

フロアでの主な発言

 6月4日に行われた「”歯は命”健康長寿社会に向けて 保険で良い歯科治療の実現を 6.4国会内集会」の主な発言を一部紹介する。

歯科医療の現場は疲弊
(実行委員長・歯科技工士 雨松 真希人さん)

歯科医療費は30年間変わっておらず、消費者物価指数の伸びと比べても低く抑えられている。歯科医療の予算を低く抑えるのはもう限界ではないか。周囲の歯科医師の経営環境は、年々厳しくなっているし、歯科技工士の状況は最悪だ。大阪府歯科保険医協会などのアンケートでは、週70時間働く技工士が66.2%となった。多くの仲間が過酷な労働環境の下、心身ともにぼろぼろになって辞めていった。
歯科医療の現場は疲弊している。患者窓口負担の軽減と保険のきく歯科治療の拡大、予算の増額は、国民の願いだ。今日の集会を、立場を超え、同じ方向に向かって行動する大きな一歩としよう。

署名用紙持って患者が医院に
「保険でより良い歯科医療を」愛知連絡会代表世話人 大藪憲治さん

 保険で良い歯科医療を目指す請願署名に取り組んでいる。「先生の言っていることは正しい」と署名用紙を持って医院に来た人もいる。保険で良い歯科医療を目指すのは歯科医師だけの運動ではない、国民全体の運動だと実感した。歯科医療の問題は、歯科衛生士や歯科技工士とも力を合わせて進めないといけない。一人ひとりの力は微力だが、無力ではない。皆の力で解決に向けて頑張っていこう。

 

歯科医師と共同の運動が重要
奈良県歯科技工士会会長 小野山幸夫さん

 歯科技工料金は自由競争により低迷し続け、技工士は大変だ。歯科医師がともに運動してくれることは、とても重要だ。技工士の待遇改善のために長らく運動を続けていたところ、京都府歯科保険医協会の先生が、「技工士の技術料を改善しないと」と、話を持ち込んでくれて、それ以来共に全国を飛び回って運動している。技工問題は、歯科医師と一緒でないと解決できない。共に頑張っていきたい。

 

診療報酬大幅引き上げを
保団連副会長 田辺 隆さん

 格差と貧困の広がり、高い窓口負担が、経済的理由による歯科の未受診や治療中断を生んでいる。さらに、保険のきかない自費治療の存在も、受診の障害となっている。これらにより口腔の健康格差が生じ、口腔崩壊ともいえる深刻な事態も広がっている。安全性が確保され、普及している技術・材料への保険導入や、歯科医療の質の確保と安全を保障できるような診療報酬の大幅な引き上げを求める。

 

意見書採択が続いてほしい
医療生協さいたま新座支部支部長 広瀬 ミサ子さん

 昨年6月「保険でより良い歯科医療の実現を求める意見書の採択を求める陳情書」が新座市議会で採択された。支部が毎年市との懇談を重ね、さまざまな要求を実現してきたことが力になった。昨今は、口腔機能の維持は全身の健康に効果があるとしきりに言われている。保険でより良い歯科医療が実現すれば、良い義歯を入れることも、その後の調整もしっかりできる。ほかの市町村でも、陳情の採択が次々と続いてほしい。

 

新しい入れ歯を作れない患者も
東京都品川区三ツ木診療所歯科衛生士 高野 祐子さん

自分の診療所に通ってくる患者さんの中に、94歳で、脳梗塞後遺症と高血圧があり、診療室に到着すると息がぜいぜいして、呼吸を整えないと診療できない方がいる。歯科往診は、費用の負担が重すぎて無理とのこと。経済的困難のため、何度も修理してがたがたの入れ歯を新しく作れない方もいる。ある30歳の患者は、会社を辞めなくてはならず、治療中断になった。こうした事例は氷山の一角だろう。保険でよい歯科医療の実現は国民の願いだ。運動をさらに広げていきたい。

 

歯科受診しない子どもが多い
大阪府歯科保険医協会 戸井 逸美さん

 大阪府歯科保険医協会の調査で、学校の検診で要受診とされても、小学校では半数近く、中学校では7割程度の子どもが歯科医院を受診していないとわかった。他県でも同様の結果が出ている。子どもの口腔崩壊も問題だ。大阪では4割から5割くらいの学校で口腔崩壊の子どもがいると報告を受けている。背景には、ネグレクト、DV、貧困、不安定雇用、若年出産などの問題があると思われる。こうした子どもたちの辛い状況を解決していきたい。

以上