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【特集 第30回医療研】「骨粗鬆症治療薬等と
顎骨壊死・顎骨骨髄炎 実態・意識調査」結果報告@ 概要

(全国保険医新聞2015年12月5日号より)

 

 第30回医療研究フォーラムの全国共同調査の結果を全3回で連載する。今回は概要、次回は歯科、最後に医科の観点から報告する。

 骨粗鬆症治療薬等と顎骨壊死・顎骨骨髄炎との関連については広く知られているが、実地医家の中での実態はあまり知られていない。そこで、今回、@顎骨壊死・顎骨骨髄炎の患者さんを経験した会員がどれくらいおられるか、Aその中で、骨粗鬆症治療のための服用による発症がどれくらいあったかを調べ、実地医家の中での実態を明らかにすることを目的にアンケート調査を行った。

■調査方法

 全国の開業会員から30%抽出(医科1万5,094人、歯科1万720人)。調査期間は今年4月〜5月。アンケート用紙を送り、郵送での返送を依頼した。有効回答数は 医科:3,897人(回収率25.8%)、歯科:3,702人(回収率34.6%)であった。

顎骨壊死・骨髄炎の経験、 医科歯科でひらき

@ 医科回答者の診療科は内科2,277人(58.4%)、整形外科741人(19.0%)、産婦人科188人(4.8%)、泌尿器科91人(2.3%)、外科265人(6.8%)であった。内科で95.6%、整形外科で100%、産婦人科で70.2%、泌尿器科で68.1%、外科で97.0%の医師が骨粗鬆症治療薬を処方していた(図、左目盛り)。使用薬剤は産婦人科では女性ホルモン剤が多かったが、それ以外の科ではビスフォスフォネート製剤の処方が圧倒的に多かった。
A 顎骨壊死・顎骨骨髄炎経験者は医科で148人(3.8%)、歯科で640人(17.3%)であった。医科診療科別では内科72人(3.2%)、整形外科48人(6.5%)、産婦人科2人(1.1%)、泌尿器科9人(9.9%)、外科13人(4.9%)であった(図、右目盛り)。
B 歯科診療時の骨粗鬆症治療薬の取り扱いについては表に示したとおりで、「常に薬の使用状況を確認している」、「外科治療(抜歯など)に当たっては必ず処方医に連絡している」は、全体と患者経験者での差はあまりなかったが、「休薬を依頼したことがある」は患者経験者に多く、「特別な対処はしていない」は患者経験者で少なかった。
C 歯科での顎骨壊死・顎骨骨髄炎を引き起こした原因として考えられるものについては、抜歯63.3%、義歯による褥瘡17.5%、歯周疾患(P)10.2%、根尖病変(Per)4.5%、インプラント2.7%、自然脱落2.1%であった。
D 骨粗鬆症治療薬等の薬剤服用なしでの顎骨壊死・顎骨骨髄炎の発症症例経験者は医科で1人(1症例)、歯科で21人(22症例)であった。
E 自由記入欄への意見は(多い順)、医科では「QOL維持のために必要」「口腔内管理の重要性」「投与前の歯科検診・治療を」「医科歯科連携の必要性」「医師(歯科医師も含む)の説明不足」等であった。
歯科では「不要な投与、予防的投与はやめて欲しい」「医師の説明不足(患者の理解不足も含む)」「医科・歯科連携の必要性」「診断基準の確立、治療薬の研究、新薬の開発等を求める」「投与前の歯科検診・治療を」「口腔内管理の重要性」等であった。

 

医科歯科の相互理解、連携の強化を

 歯科での顎骨壊死・顎骨骨髄炎経験者は17.3%と多かったが、医科では3.8%と歯科に比してかなり少なかった。関心の違いもあろうが、歯科から医科へのフィードバックの必要性が示唆された。
 医科での診療科別の処方率と患者経験者の割合に乖離が見られた。その理由は、患者の違い、使用薬剤の違い等が考えられるが、今後その実態 を具体的に明らかにすることが課題として浮き彫りになった。
 薬の服用なしでの発症が確認された。今後さらなる高齢化が予想されており、注視が必要である。
 書き込まれた意見で目立ったのは、歯科からの「不要な投与、予防的投与はやめて欲しい」というもの、医科からの「QOL維持のために必要」というものであった。予防的投与が実際にどれくらいあるのか、予防的投薬の効果に関するエビデンスはあるのか、医科疾患の治療と顎骨壊死・顎骨骨髄炎の発症回避について、どこで折り合いをつけるか、これらの課題を突き詰めることにより医科・歯科相互の理解が深まり、患者によりよい医療を提供できる道が開けるのではないかと思われた。 
 ポジションペーパー、ガイドラインの検証、さらなるエビデンスを求める意見が多かった。症例の集積、詳細な分析が今後の課題となる。
 医科から歯科へ、歯科から医科への情報提供の必要性をはじめとして、医科・歯科連携の重要性を主張する記載が多数見られた。
 今回の調査を通じて、医科・歯科双方の会員をもつ保団連ならではの取り組み推進の可能性、重要性が明らかになったと考える。
(医療研究フォーラム企画委員長 斉藤みち子)

以上