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【特集 第30回医療研】「骨粗鬆症治療薬等と
顎骨壊死・顎骨骨髄炎 実態・意識調査」結果報告A 歯科編

(全国保険医新聞2015年12月15日号より)

 

 10月10、11日に行われた第30回医療研究フォーラムの全国共同調査の結果を紹介する。前号の概要に続き、今号では歯科の調査結果。

 

歯科医師の関心高い

 第30回医療研究フォーラムに当たって行われた「骨粗鬆症治療薬等と顎骨壊死・顎骨骨髄炎 実態・意識調査」のうち、歯科会員の調査結果を報告する。
 歯科会員からの回答率は34.6%と、医科の25.8%と比べて高く、関心の高さがうかがわれた。歯科医師にとっては、日常診療の中でも常に意識せざるを得ない問題となっているようである。

 

ほとんどが骨粗鬆症治療薬の使用をチェック

 調査結果を(表1)にまとめた。薬剤関連顎骨壊死の存在は、歯科医療界では近年かなりの話題になっている。
 今回の調査結果では、日常診療において常に薬の使用状況を確認している歯科医師は9割近かった。処方医への連絡や休薬依頼もかなり行われて いた。そして、病院への紹介は、4分の1の歯科医が経験していた。
 一方、この問題への対処はしないという歯科医師は、ごく少数であった。

 

顎骨壊死の経験予想以上に多い

 何よりも今回の調査で際立った結果は、顎骨壊死・顎骨骨髄炎を自院で経験した歯科会員が17.3%にのぼったことである(表1)。予想以上であった。経験した会員の回答率が多少高かった可能性はあるが、この率でいくと、少なめに見ても歯科会員5,000人以上が経験しているものと思われる。
 残念だが、顎骨壊死・顎骨骨髄炎は、歯科医療におけるポピュラーな疾患になりつつあるといってよい。

 

発症原因は抜歯だけではなかった

 顎骨壊死・顎骨骨髄炎を発症した原因に関する問いにも、予想外の回答があった(表2)。
 従来、骨粗鬆症治療薬投与のチェックは、抜歯などの外科的治療の際に行われることが多かった。
 しかし、調査への回答では、それ以外の歯科治療や、特に侵襲を与えていないケースでも発症したと記載されていた。義歯による褥瘡のケースも意外と多かった。そして、「その他」が多かった。昨年実施したパイロットスタディでは分からなかった、多様な原因が記載された。
 口腔内細菌による感染という見地から、口腔管理の徹底による発症の抑制は、関連学会が共同で出したポジションペーパーでも強調されている。目に見えるような侵襲的治療でなくとも、咀嚼などの運動に伴う口腔粘膜のわずかな損傷からも感染し、直下の顎骨に影響するということなのだろうか。今後の発症機序の解明に期待したい。
 その解明は、今後、歯科の日常診療の一つ一つの治療行為に安心して取り組めるかどうかを左右する。今回の結果が示されただけだと、心配である。

 

休薬が有効でなかった事例も

 歯科治療に当たって、処方医に休薬を依頼すべきかどうか迷うケースがある。日本のポジションペーパーでは、投与期間3年以上で骨折リスクが高くない患者には休薬が望ましいとしている。しかし、米国のガイドラインの中には、処置前休薬は不要とするものもある。未だ定説がないというのが現状である。
 今回の調査の回答には、休薬したが発症したという報告もあった。休薬に関する絶対的な基準はない。ケースバイケースで、患者を交えて医科歯科連携して、しっかり検討する以外ないようだ。

 

医科歯科連携をさらに

 今回の調査用紙の最後に、この問題に関しての意見記入欄があった。
 歯科会員から最も多かった意見は、「必要な投与だったのか」「予防的投与はやめてほしい」「患者への説明をしっかりしてほしい」など処方医への注文だった。
 一方で、「医科・歯科連携を求める」意見もあり、日常の医科歯科交流が不十分である現実を反映しているようであった。
 これらの調査結果を、医科と歯科の喧嘩の種にしてはならない。できるだけ発症を減らせるよう、協力して実を挙げていかなければ、患者さんたちに不幸が及ぶ。
 医科も歯科も安心して治療に臨めるよう、新薬の開発や病態のさらなる解明を求める声もあった。そういう点では、薬剤師との連携も大切だと思える。
 今回の実態調査は、口腔外科専門でない歯科医師の目で見た、あくまでも現状の一断面調査という限界があった。
 しかし、その調査規模の大きさからいって、国内においてこの問題での検討をするにあたって、貴重なデータを提供できたのではないかと思う。この結果を今後の研究に生かしていきたい。(保団連理事 井上博之)

以上