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【特集 第30回医療研】「骨粗鬆症治療薬等と
顎骨壊死・顎骨骨髄炎 実態・意識調査」結果報告B 医科編

(全国保険医新聞2015年12月25日号より)

 

 10月10、11日に開催された第30回医療研究フォーラムの全国共同調査の結果を紹介する。前号の歯科の調査結果に引き続き、今号では医科会員の調査結果について報告する。

 

内科、整形外科のほとんどの医師はビスフォスフォネート製剤を、
産婦人科医は女性ホルモン剤を処方

図1 処方薬(複数回答 N=3,897) 「日常診療において骨粗鬆症治療薬等を処方していますか(複数回答)?」への回答結果を図1に示した。
 多いのは「ビタミンD製剤」(84%)、次いで「ビスフォスフォネート(以下BPと略す)経口薬」(84%)。さらに「カルシウム剤」(44%)、「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」(42%)、「カルシトニン薬」(39%)、「BP注射薬」(34%)と続いた。
 骨粗鬆症治療薬の処方を診療科別にみると、BP経口薬は整形外科で97%、外科で89%、内科で88%の医師が処方していた。BP注射薬は整形外科では63%、外科では42%、内科では29%の医師が処方していた。産婦人科は他の科と傾向が異なり女性ホルモン剤の処方が多かった(56%)。つまり、整形外科、内科、外科ではBP製剤の処方が多く、それぞれほぼ同様の傾向を示したが、産婦人科のみは女性ホルモン剤の処方が多かった。
 整形外科では多くの種類の薬剤が処方されていた。カルシトニン薬は約8割、選択的エストロゲン受容体モジュレーターは約7割、甲状腺ホルモン誘導体は約6割と、BP製剤以外の各製剤も6〜8割の整形外科医師が処方していた。一方で産婦人科や泌尿器科では「処方していない」が3割となっており、診療科による処方の違いが認められた。

 

医科での顎骨壊死・顎骨骨髄炎発症の掌握は歯科の4分の1

 医科での顎骨壊死・顎骨骨髄炎患者経験者は3,897人中148人(3.8%)であったが、歯科でのそれは3,702人中640人(17.3%)で、医科での患者掌握率は歯科での患者経験者数の4分の1であった。患者からの医科への報告が少ないと言うこともあろうが、医科での掌握率を高めるためには医科・歯科双方向の連携が必須と思われる。

 

顎骨壊死・顎骨骨髄炎の発症は注射より内服薬の方が多かった

 148人の医師が経験した顎骨壊死・顎骨骨髄炎症例は合計181例であった。処方薬の内訳は(複数回答)、BP内服薬117症例、BP注射薬33症例、デノスマブ6例であった。該当薬剤処方医全体の中での顎骨壊死・顎骨骨髄炎患者の比率は、BP内服薬は3.7%、BP注射薬は2.5%、デノスマブは1.0%であった。BP関連顎骨壊死検討委員会のポジションペーパーでは、「わが国においては、欧米と異なり、BP注射薬よりBP内服薬投与患者の方が顎骨壊死・顎骨骨髄炎の発症が多い」という意味の記載があるが、今回の共同調査でも同様の傾向が見られた。

 

ビスフォスフォネート注射薬は3年未満の使用でも多発

図2 脛骨壊死・脛骨骨髄炎患者の経験ごとの使用薬剤の割合(医科) 顎骨壊死・顎骨骨髄炎発症者のBP剤の使用期間を図2に示した。内服薬では57%、注射薬では92%が3年未満の使用での発症であった。
 ポジションペーパーでは、「骨粗鬆症患者に対しては、侵襲的歯科治療を行うことについて、投与期間が3年未満で、他にリスクファクターがない場合はBP製剤の休薬は原則として不要である」とされている。今回の発症患者には、ここで言う「リスクファクターなし」の患者が多数含まれていると思われ、3年未満の薬剤使用での発症例がかなりあることが示唆された。ポジションペーパー、ガイドラインの見直しを求める意見がたくさん出されたが、故あることと言えよう。

 

医科・歯科連携でよりよい医療を

 自由記入欄への意見では、歯科と同様、「口腔内管理の重要性」「投与前の歯科検診・治療を」というのが多かった。いずれも密接な医科・歯科連携を求めるものであり、顎骨壊死・顎骨骨髄炎発症防止のため今後推し進めなければならない課題である。
 「不要な投与、予防的投与はやめて欲しい」との歯科からの多くの意見に対し、医科からは「患者のQOL向上のためには骨粗鬆症治療薬は必要である」との意見が多かった。抗がん剤使用者への骨粗鬆症治療薬の併用は当然である。問題は「不要な投与」「予防的投与」である。「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版」では「原発性骨粗鬆症の診断基準に合致する例が薬物治療の対象と考えるべきであり、骨量減少と判定される例の中でも骨粗鬆症性骨折の高い例は、骨折予防を目的とする薬物療法の対象と考えるべきである」と述べられている。また、脆弱性骨折のない骨量減少例についても、いくつかの条件に当てはまるものは薬物療法を検討すべきであるとも記載されている。実際、一人の患者さんを目の前にして、その患者さんがどのレベルなのか、治療すべきか否か等を判断することは困難なことが多いし、ガイドラインどおりのやり方で良いのかについても判断は難しい。「予防的投与」が「不要な投与」に当たるのかどうかの判断も難しい。歯科からの「不要の投与」等の指摘の根拠を明らかにし、医科からは治療の適応についての根拠を明らかにするなど、医科、歯科でエビデンスに基づく相互理解と対応が求められるところであろう。
 日頃からの口腔衛生管理、治療薬投与前の歯科受診、使用薬剤の相互連絡、症例のフィードバックなど、医科・歯科密接な連携が必要との多くの会員の意見に応え、医科、歯科両方の会員をもつ保団連ならではの研究活動の取り組みをさらに進めたい。(医療研究フォーラム企画委員長 斉藤みち子)

以上