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40%以上が経験、歯科では50%超 経済的理由の治療中断
―保団連受診実態調査結果―

全国保険医新聞2016年4月15日号より)

 

医療機関1万件で実態調査

 全国保険医団体連合会は全国の保険医協会・医会を通じて会員医療機関を対象に受診実態調査を実施した。医療費負担などの経済的な理由による治療の中断や投薬の拒否などの実態を明らかにすることが目的。1万1,971件の有効回答があった。

高い割合続く

 経済的理由による治療中断は、医科診療所では34.9%、歯科診療所では51.7%、全体では40.9%の医療機関が経験している。2010年の調査でも全体の38.7%が経験しており、経済的理由による治療中断が依然として高い割合で生じていることがわかった。

重症化予防への影響も

 治療中断が生じた患者の病名は、内科系の医科診療所(右グラフ上)では高血圧症、糖尿病がそれぞれ6割を超える。定期的な受診と継続的な治療が必要な疾病で治療中断が生じており、重症化が懸念される。国が進める重症化予防にも逆行する。例えば糖尿病性腎症が悪化し透析が必要になれば1人あたり年間500万円の治療費がかかるといわれる。歯科診療所(右グラフ下)では歯冠修復・欠損補綴が約8割に上った。患者負担が重くなる補綴装着時に中断が多くなるとの声が多数寄せられた。

 

「糖尿病の患者さんが、お金がないからと透析を拒否して亡くなった。お金がなくて医療を受けられない人は静かに亡くなっている」「重症化してから受診する患者さんが増えた」「自己判断で市販薬に頼り、悪化してから来院する患者が増えた」

医科医療機関から寄せられた声より

「できるだけ簡単な治療で済ませてほしいという患者さんが増えた」「仮歯を入れたら来院せず。最終補綴に至らない」「30歳くらいまでの若い年代の患者が金額を気にすることが多い」

歯科医療機関から寄せられた声より

負担重く治療中断重症化のおそれも

「医療費理由に検査・投薬断る」医科で5割近く

 経済的理由による治療中断は、全体では4割以上が経験していた(図1)。「医療費負担を理由に検査や治療、投薬を断られたことがあったか」との問いには、医科診療所では47.0%、歯科診療所では35.3%、全体では42.6%が「あった」と回答した(図2)。
 歯科では治療を中断し、医科では治療中断まではしないものの、検査や投薬などを減らし、負担を軽くしようとする患者の実態がうかがえる。

検査や高額な薬を拒否

 医療費負担を理由に断られた内容では、医科では「血液検査」が一番多く、次に「投薬」の事例報告が多かった。
 歯科では「レントゲン・パノラマ・パントモ」「歯周病治療・検査」が非常に多かった。「糖尿病のコントロールが厳格に行えない」「検査をせずに治療だけしてほしい」「検査ができず、しばらく後に状態が悪化し、末期がんと判明した」などの実態が報告されている。また、各診療科で新薬など高い薬を断られるとの報告が複数あった。
 より効果の高い新薬が出ても、患者負担が重すぎて使えない事態が生じている。

「薬の飲み伸ばし」「長期投薬の希望増」など

 具体的な受診実態の内容を選択肢で聞いたところ、医科では、「受診回数を減らしてほしい(「月1回を2カ月に1回に」「長期投薬を希望」など)と言われた」、「薬代の負担を減らしてほしい(ジェネリックを希望など)と言われた」、「投薬のみを希望する患者がいた」、「薬が切れているはずなのに受診に来ない」との回答が5割を超えた。
 歯科では、「痛みがとれたら受診に来ない」、「保険のきく範囲で治療してほしいといわれた」が6割を超えた。
 自由記述では、「受診回数を減らしたり薬代を減らすために、自己判断で薬を飲み伸ばしている」「重症化してから受診する患者が増えた」「補綴物の装着時になって来院しなくなる」などの事例が報告された。

小児科は助成の効果も

 小児科の治療中断(7.8%)や検査治療投薬拒否(13.3%)は、他科に比べて非常に低い(7.8%)。各地の保険医協会・医会が子ども医療費助成制度の拡充の取り組みを進め、この5年間で急速に広がったことも背景にあると考えられる。

半数が窓口負担の未収を経験

 未収金は、46.8%の医療機関で発生している(図3)。全額回収できたとの回答は3割以下だ(右表)。
75歳以上の窓口負担2割化については、7割を超える医師・歯科医師が受診抑制につながるとの懸念を示した。年金生活者への影響を危惧する意見も多く寄せられた。

■調査の概要

 15年11月から16年1月にかけて、全国の保険医協会・医会から会員医療機関にファクスまたは郵送で調査用紙を送付して実施。1万1,971件の有効回答を得た。回収率は14.8%。(16年2月現在)。今回の結果は、全国集計の一次分として、2月末までに集計された48保険医協会・医会(医科45都道府県、歯科44都道府県)の結果を集約したもの。

以上