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う蝕 要介護者の3割
―保団連が口腔調査―

全国保険医新聞2016年9月5日号より)

 

 保団連は要介護高齢者667人の口腔状況調査を行った。口腔内の歯の約3割がう蝕歯であり、中等度以上の歯周病が7割、また、義歯は約6割の高齢者が使用しているがそのうち約8割に問題があるなど要介護高齢者の口腔状況の実態が明らかにされた(詳細な報告書は「要介護高齢者の口腔状況調査結果(全国調査)[PDF:512KB]」)。

 有歯顎者は549人(82%)であり、1人平均健全歯数は4.54本、処置歯は6.21本と比較的多い。C4(残根状態の歯)は1人平均1.85本であった。未処置歯が合計3.84本であった(図1)。歯数別では21本以上残存しているものが最も多かった。
 C1(歯の表面の初期う蝕)保有者80人(12.0%)、C2(う蝕が象牙質に進行したもの)保有者172人(25.8%)、C3(う蝕が歯髄に達したもの)保有者123人(18.4%)、C4保有者283人(42.4%)であった。
 年齢が進むに比例し現在歯が少なくなる。しかし80歳代前半でも12.2本、90歳以上でも9.5本残存している(図2)。

 

中等度以上の歯周病7割

 9割以上の人が何らかの歯周病に罹患しており、軽度22.4%、中等度55.7%、重度14.6%であった(図3)。

 

8割の義歯に問題あり

 義歯に問題があったのは合計329人(49.3%)であった。義歯が必要と判断されたのは62人(9.3%)と多くないが、「修理が必要」は170人(25.5%)、「再製作が必要」は97人(14.5%)と、合わせて40%となった(図4)。

 

口腔内の治療も重視する必要

 厚労省は高齢社会の進展に伴い、今後の歯科医療の目標をこれまでの口腔形態の回復(入れ歯等)から、口腔機能の改善(食べる等)への変更を示唆している。しかし今回の調査からは、要介護者の口腔内はまだまだ治療の必要な状況であることが示された。
 初診時または再初診時の調査であり、治療前の状況であることを考慮しなければならないが、約3割にう蝕があり、特に残根(歯の根しか残っていないこと)が多かった。中等度以上の歯周病に多くが罹患しており、義歯も問題があるものが多かった。
 臼歯部での咬合が治療により回復されると低栄養や認知機能が改善されるという報告もある。また義歯を装着したりPAP(舌接触補助床)を装着することにより舌圧が改善し摂食嚥下機能の改善にもつながる。口腔機能低下による誤嚥性肺炎を繰り返す者も少なからずおり、口腔ケアや口腔機能リハビリが必要である一方、在宅要介護高齢者の訪問歯科診療での要望の多くは義歯やう蝕に関するものである。
 実際に要介護高齢者に対し訪問診療をしているとVE検査(嚥下内視鏡)や摂食嚥下リハビリテーションの要望はまだまだ少ない。したがって口腔の機能的な回復改善も今後重要になっていくと考えられるが、そうした対応とともに口腔の形態的な回復改善もまだまだ必要だと考えられる。
 訪問歯科診療の実施率は約18%と言われている。在宅や施設で口腔疾患の治療、口腔ケア、口腔機能改善などさまざまな需要があると思われる。医科歯科連携、ST(言語聴覚士)などとの多職種連携の下、訪問歯科診療が今後さらに実施されるよう期待したい。

【調査方法】 65歳以上の要介護高齢者667人の口腔状態を記載した調査票を得た。基礎疾患は脳血管障害と認知症が約6割、要介護度は3・4・5が約7割を占めた。

(地域医療対策部員 奥山秀樹)

以上