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いのち・社会保障まもる 現場から3300人が声
―憲法・いのち・社会保障まもる 10.20国民集会―

全国保険医新聞2016年11月5日号より)


医師・歯科医師らが負担増ストップなどを訴えた

 

 10月20日、「憲法・いのち・社会保障まもる 10.20国民集会」が東京・日比谷野外音楽堂で開催された。全国保険医団体連合会も参加する実行委員会が主催。保険医協会・医会、保団連からの参加者約180人をはじめ、医療関係者など約3,300人が集まった。

 

「医療費払えず検査拒否」、「特養で泣きながら夜勤」

 集会の前半、ベストセラー『下流老人』の著者、藤田孝典氏は「福祉や医療関係者の強みは、現場を知っていること。貧困に苦しむ当事者の声を代弁し、実態を政府や社会に知らせていくことが大事」と呼び掛けた。
 現場の実態の報告が続いた。
 保団連の武村義人副会長は40%以上の医療機関が受診抑制を経験したという保団連の受診実態調査の結果を紹介。神戸にある自らの診療所にも医療費負担を理由に3カ月に1回しか糖尿病の検査をしない患者がいること、患者の経済的な困難の背景には阪神・淡路大震災や不況による企業の経営悪化などがあると話した。
 公害患者の秋元正雄さんは、大気汚染によるぜん息患者等の医療費助成制度が東京都と川崎市にしかない現状を指摘し、1日も早く未救済の患者を救済するために国の責任で医療費助成制度の創設をと訴えた。
 看護師の佐藤陽子さんは、看護師不足のために、やむを得ず認知症の患者を抑制(拘束)しなければならないこともある辛さを涙を流しながら吐露した。
 介護職員の青木正彦さんは、特別養護老人ホームであまりの激務に「泣きながら夜勤をする職員もいる」と困難な実情を伝えた。
 保育士の西須雄大さんは、定年までに手取りが20万円に達するかわからないという低賃金への不安を訴えた。

負担増ストップ、医師増員も求める

 集会では最後に、「患者・利用者の負担増ストップ!」「医師、看護師、介護職員、保育士などの大幅増員・処遇改善を」などと求めるアピールを採択。終了後に「患者・利用者の負担を減らせ」「医師・看護師を増やせ」などとアピールしながら銀座をパレードした。


いのちまもれ 現場から ―10.20国民集会での発言より

 「憲法・いのち・社会保障まもる10.20国民集会」では、さまざまな分野から実態の報告があった。発言を紹介する。

 

声あげれば変わる

『下流老人』著者 藤田孝典さん

 私は生活困窮者の相談に応じるNPOで活動しており、お金が払えず病院に行けない、栄養がとれず病気が悪化するなど多くの深刻な相談を受けている。こうした中でさらなる社会保障切り捨ての政策が次々出されていることを大変危惧している。
 私たち福祉や医療関係者の強みは現場を知っているということ。貧困に苦しむ人々は声を上げる余裕がない。私たちが当事者の声を代弁し、実態を政府や社会に知らせていくことは非常に大事だ。
 『下流老人』は20万部売れ、多くの人にとって貧困問題が身近なものになったと思う。若者の貧困も社会問題化され、給付制奨学金の議論も始まった。
 声を上げれば変わることは多くある。皆さんと共にがんばっていきたい。

 

医療費負担重く検査拒否

保団連副会長 武村 義人

  医療の現場は大変だ。保団連の調査では、経済的理由による受診抑制を経験した医療機関が40%以上となった。私が昨夜診た糖尿病の男性患者も、医療費負担を理由に3カ月に1回しか検査をさせてくれない。22年前の阪神淡路大震災で家が壊れ、借金を抱え、ようやく借金が少し減ったところで、今度は経営悪化した大手家電メーカーに勤めていた息子を支援しなければならなくなったという。
 私たちが取り組んだ「ストップ!患者負担増」署名は、18万筆集まった。特筆すべきは、協力医療機関が大幅に増えたことだ。全国の多くの医師・歯科医師が患者と対話し、待合室から世論を広げていく取り組みをしている。
 患者とともに、国民とともに、医療、社会保障が良くなるようがんばろう。

 

国民には三重の負担

日本医労連中央執行委員長 中野 千香子

 政府は消費税を上げて社会保障を充実させると言ってきた。実際には消費税が上がり、保険料も上がり、本人負担も増えた。私たち国民にとっては三重の負担だ。さらに医療費削減のためにベッドを減らそうとしている。
 介護保険も、生みの親である厚労省の元老健局長でさえ「『国家的詐欺』となりつつあるように思えてならない」と言うような現状だ。軽度者の生活援助サービスの保険外しは見送られたが、利用料の負担増などの議論は続いている。
 こんなことを許していいわけがない。この集会での訴えをぜひ職場や地域に持ち帰り、政治に反映しようと呼び掛けてほしい。

 

公害患者の医療費助成制度を

公害患者と家族の会 秋元 正雄

 大気汚染が原因の慢性気管支炎を40年以上患っている。現代の医学では完治せず、薬によってかろうじて命をつないでいる。
 1988年、国は「大気汚染公害は終わった」として、公害健康被害補償の指定地域を解除し、患者の新規認定を打ち切った。
 現在、大気汚染訴訟で被害が認められた川崎市と東京都の2つの自治体にしか、患者の医療費助成制度はない。しかし、患者は全国各地にいる。
 私たちは1日も早く未救済の患者を救済するために、国の責任での医療費助成制度を創設してほしいと思っている。皆さんの支援をお願いしたい。

 

10年間で昇給1万円だけ

保育士 西須 雄大

 10年間保育士として働いてきた。子どもの成長を目の当たりにするとき、仕事のやりがいを感じる。
 しかし低賃金のため、この先も仕事を続けていけるか不安だ。
 10年間で手取りは1万円しか上がらず、定年までに手取りが20万円になるかどうか。子どもの安全を常に考慮しなければならず、仕事の責任はとても重いのに、毎月給与明細をみるたびに、自分の仕事はこの程度のものなのか、と報われない気持ちになる。家族を養えないなどの理由で離職していく人は後を絶たず、ほとんどの職場が人手不足だ。
 保育士が安心して仕事を続けられる労働環境の実現を強く訴えたい。

 

60人の特養入居者を2人の職員で

介護職員 青木正彦

 介護の現場は、最低限の仕事をすることも困難な状況だ。
 ある特別養護老人ホームの夜勤で、若い女性職員は泣きながら仕事をしたと言っていた。そこらじゅうの物をたたいたり、熱帯魚の入っている水槽を投げ飛ばそうとする認知症の入居者を必死に止めながら、多くのナースコールの対応やおむつ交換をしたそうだ。しかも60人近い入居者をたった2人で見なければならない状況。自然に涙がこぼれ落ちても不思議ではない。今夜もどこかの施設で、泣きながら仕事をする職員がいるだろう。
 普通の人が普通に仕事や生活ができるよう、介護保険制度と介護報酬の改善を求める。

 

看護師不足でやむを得ず抑制を

看護師 佐藤陽子

 私の働く病棟の入院患者の多くは高齢者で、認知症も多い。
 先日、ある患者が発熱のためADLが低下し、転倒を繰り返していた。そのとき病棟には重症の患者がいて、あちこちでナースコールが鳴り、駆け回って仕事をしても追いつかない状況。本当に申し訳ないのだけど、抑制(拘束)をせざるを得なかった。
 今は看護師不足のため、このようにやむを得ず抑制をしなければならない場面が多く、本当につらい。私たちは特別のことをしたいのではなく、認知症のある患者さんでも穏やかに笑顔ですごせるような看護がしたいだけだ。そのためにも看護師の人員増を求めたい。

 

参加者の声

他業種の実態知った

 患者の立場に立つ政治を求めるのは医師・歯科医師の務めだと思い、10・20国民集会に参加しました。
 会場では参加者の熱意を感じ、他業種の実態を知る良い機会になりました。介護職員などは、こんなに大変な状況なのかと驚きました。
 医師・歯科医師は自分たちの業界にばかり目が行きがちですが、他業種の実態も知り、連帯して弱者の立場に立つ政治を求めていかなければならないと思います。(三重県保険医協会 中川直人)

パレードにあたたかい声援

 安倍政権となり、主張する経済回復も達成できない上に、世界に誇る日本の皆保険制度、国民が望む福祉までも、お得意の実のない舌先三寸で虫食いし続ける現状にシリアスな危機を感じる人々が日比谷公園に集合した。訴えは、いのちと人権が大切にされる社会保障の充実、そして安全保障関連法の廃止である。
 日比谷公園からパレードしていると、通行人から、あたたかな声援と視線が贈られた。国民の望みは政治家の野心ではないことを確信した。(鹿児島県保険医協会 森主真弓)

以上