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【夏季セミナー】メディアの「忖度」過ぎる
―岸井成格・「毎日」特別編集委が講演―

全国保険医新聞2017年7月15日号より)

 

良質なメディアを励ますことも
重要と語る岸井氏

 夏季セミナーで行われた毎日新聞社特別編集委員の岸井成格氏による記念講演「政権と報道の自由の関係」の概要は次のとおり。

 

「忖度」に走りすぎ

 岸井氏は「海外メディアから見ると日本のメディアは『忖度』に走りすぎている」と述べ、独紙元東京特派員・カーステン・ゲルミス氏のインタビュー「メディアは安倍『忖度報道』を止めよ!」(雑誌『選択』7月号)や、ニューヨークタイムズ前東京支局長・マーティン・ファクラー氏の著作『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』を紹介。「政権をチェック、監視する役割を果たしていないと見られている」と強調した。
 岸井氏は「今、日本の新聞やテレビの良心的な記者は非常に息苦しさを感じている」と述べ、政権がメディアに対して「巧妙かつ執拗な揺さぶりをかけてくる」と明かした。14年の総選挙を前に、岸井氏が当時アンカーを務めていた報道番組「ニュース23」(TBS)に首相が生出演した際、街頭インタビューに答えた全員がアベノミクスを批判したエピソードを紹介。「そうしたら安倍総理がすぐ『おかしいじゃないか、こんなはずはない』と抗議した」。放送から2日後、萩生田光一自民党筆頭副幹事長(当時)が、在京テレビキー局の編成・報道局長宛てに、選挙報道の「公平中立」と「公正」確保を求める文書が送られた。
 そして昨年の、高市総務大臣の政治的偏向がある局の電波停止#ュ言を経て行われた7月の参院選。「テレビ番組では選挙報道の放送時間がそれまでの半分になった。争点も扱わなかった」。岸井氏は「製作の現場は『何か言われるならやめておこう』『面倒だ』という感覚になる。でもそういうところから『忖度』が始まっている」と強調した。

 

メディア界を分断

 岸井氏は、こうしたメディアへの揺さぶりの結果、安倍政権によるメディア界の「選別と分断」が生じていると話し、その結果「あるテーマでメディアがそろって批判することができず、非常に迫力を欠く」と指摘した。
 また、岸井氏は、6月に成立した「共謀罪」法がテロ対策のために必要という口実について、「当初、法案にテロ対策の内容はなかった」と指摘し、参院法務委員会採決を省略し成立させた国会運営について「奇手」だと批判した。「しかし、メディアもブレーキを掛けられなかった」と語り「政府は国民をだましている。こんなことが許されれば民主主義が成り立たない」と訴えた。

 

政権の末期症状

 岸井氏は「しかし、そうそううまくはいかない。国民も何か変だと感じている」と述べ、内閣支持率が落ち込んでいる中、東京都議選の結果は安倍政権の今後を占うものになるだろうと分析した。強引な国会運営や加計学園問題に関する行政文書のリーク、閣僚の不祥事などを挙げ、「私の長年の政治記者としての経験から、これらは政権の末期症状に見える」と語った。
 岸井氏は最後に「民主主義を守るために国民がいろいろな形で声を上げることが大切」と力を込め、良い記事や番組を評価する声を届けることで良心的なメディアを励ますことの重要性も強調した。

以上