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ドクターズ・デモで千葉大・近藤克則氏
―健康格差の処方箋 自己責任でなく社会で対処を―

全国保険医新聞2017年7月25日号より)

約150人が集まり、社会保障充実の施策につき見識を深めた

 

 医療、社会保障の充実を目指す「ドクターズ・デモンストレーション」が7月15日に東京都内であり、保険医協会・医会からの参加者など医療関係者ら150人が集まった。全国保険医団体連合会会長の住江憲勇氏や歯科代表の宇佐美宏氏が呼び掛け人になっている。千葉大学教授の近藤克則氏が記念講演で不公正な「健康格差」を是正する「処方箋」を提起し、シンポジウムで各政党の国会議員らが社会保障政策などを語った。

 

講演する近藤氏

 「健康格差」とは、地域や集団の間で見られる不公正な健康状態の差。2005年に出版された近藤氏の著作で初めて使われた言葉だ。12年に国がまとめた健康増進策「健康日本21」(第2次)でも「健康格差の縮小」が提起されるようになった。

 

子どもの頃から差がついている

 近藤氏は健康格差の縮小のためには、「貧困や社会的排除」、「環境要因」への着目が重要とした。例えば、貧困のため窓口負担が払えず医療サービスから「排除」されたり、アルコール依存症患者が多い地域は酒屋が多く安価な自動販売機もあるなど酒を入手しやすい「環境」があったりする。

 近藤氏は、「従来は生活習慣が重視され、個人の意思に原因があると考えられてきたが、健康格差が生じるプロセスをさかのぼり、予防的に介入できるところを探すことが重要」と強調した。

 近藤氏はまた、「高齢者の不健康は自己責任だ」という意見もあるとし、健康格差は「自己責任を問えない子どもの頃から差がついている」と指摘した。近藤氏らの調査で、15歳ごろの子ども時代に生活が貧しかったという高齢者は豊かだったという人に比べて1.27倍うつ病を発症しやすいことが分かったと紹介。健康格差には社会で対処が必要と強調した。

 

貧困の再生産防止を

 地域でできる健康格差の「処方箋」として近藤氏は、スポーツや趣味のグループへの参加が重要と指摘。3種類以上のグループに参加する人の要介護認定発生リスクは参加しない人たちの約6割に留まるとするデータや、グループ内で何らかの「役割」を担っている男性ではそうでない男性よりうつ病発症のリスクが7分の1になったとする調査結果を報告した。
 政策的な課題として、社会保障の拡充や教育保障によって「どのような親の元に生まれても能力開発できる機会を保障し、貧困と格差を再生産させない社会をつくること」を強調した。また、WHOが提唱する「Health Impact Assessment」を紹介。国の政策が健康に与える悪影響を事前に減らすための見直しの段階を政策決定過程に盛り込むことを提起した。


各党が社会保障財源を議論
―ドクターズ・デモンストレーションでシンポ―

パネリストら。左から 近藤氏、初鹿氏、田村 氏、青木氏

 ドクターズ・デモンストレーションのシンポジウムでは、記念講演した千葉大教授の近藤克則氏が社会保障充実などを提起。コーディネーターを務めた医療制度研究会副理事長の本田宏氏が財源を論点として、民進、共産、自由の各党国会議員に議論を促した。

 

■大企業に負担を

 衆院議員の初鹿明博氏(民進)は、社会保障充実に「増税は避けられない」との認識を示しながら、選択肢は消費税だけではないと強調。法人税の引き下げなどをやめ大企業に税負担を求めること、所得税の累進性を強めることが必要と語った。

 

■所得再分配を進める

 参院議員の田村智子氏(共産)は、「格差と貧困の是正を徹底できるかが問われている」と指摘。アベノミクスで高所得者の資産が7.2兆円から15.4兆円に増えたとし、証券優遇税制を改め、タックスヘイブン(租税回避地)への課税など所得再分配を進めるべきとした。

 

■消費税と社会保障リンクを懸念

 参院議員の青木愛氏(自由)は、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革が進められてきたが、「消費税増税は景気の後退を招き、低所得者層に重い負担を強いる」と批判。社会保障と消費税を一体的に議論すると、社会保障充実と消費税増税がリンクさせられる口実となると懸念を示した。

 日本維新の会、参院会派「沖縄の風」の議員からもメッセージが寄せられた。

以上