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北朝鮮問題をどう解決するか
―元日朝国交正常化交渉政府代表 美根慶樹さんに聞く―

全国保険医新聞2017年10月5日号より)

 

 

 弾道ミサイルの発射、核実験の実施など北朝鮮情勢が緊迫している。日朝国交正常化交渉の日本政府代表も務めた美根慶樹氏は、圧力ではなく対話による解決がもっとも重要と話す。北朝鮮情勢をめぐる日本政府の対応について、話を聞いた。

 

 平和外交研究所代表。1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラヴィア特命全権大使、在軍縮代表部特命全権大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表等を経て、東京大学教養学部非常勤講師、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹等を歴任。

偶発的な衝突の危険

 北朝鮮情勢が緊迫している今、日本政府は外交力を発揮し、緊張がこれ以上高まらないように、全力を尽くすべきです。
 常識的に考えれば、米国も北朝鮮も戦争を起こす気はないでしょう。しかし怖いのは、緊張が高まる中で生じる偶発的な衝突です。
 トランプ大統領は9月19日の国連本部での一般討論演説で、北朝鮮に対し、米国もしくは同盟国を守る必要がある場合に「北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」と警告しました。こうした発言が、北朝鮮を刺激し、危機のレベルを高めてしまいます。
 衆院選が公示される10月10日は、北朝鮮の労働党創建記念日です。この前後に核やミサイルの挑発があるかもしれません。
 米朝間の緊張が高まれば、米韓軍と北朝鮮軍が偶発的に衝突するおそれがあります。

危機の中でなぜ解散か

 こうした状況の中で安倍政権は、大義名分もなく、任期が1年以上残っている衆議院を解散しました。危機の間に政治的空白が生まれてしまう。なぜこんなことをするのか、私にはまったく理解できません。
 政府は国民に対して、万が一のときに国をどう守るのかという説明をしないまま、不安だけを必要以上に煽っていると思います。弾道ミサイルが日本に向けて発射されたわけでもないのに、日本のはるか上空を通過したらJアラート(全国瞬時警報システム)を発し、地下鉄や新幹線を止める対応は疑問です。政府はもっと正しい情報を提供する必要があります。
 そのうえで政府は、国民を守るため、朝鮮半島での戦争を起こさないよう、最大限の外交努力を払わなければなりません。最も重要なのは、米朝対話を開始し、最終的には朝鮮半島の非核化を実現することです。交渉開始の条件としては、核・ミサイル実験と米韓合同演習の暫定停止が必要になるでしょう。

米国に外交解決の働き掛けを

 しかし安倍首相には、外交努力で緊張を緩和しようという意図が全くみられません。
 首相は米紙ニューヨーク・タイムズに、「これ以上対話をしても行き詰まるだろう。一刻も早く北朝鮮に最大の圧力をかけるべきときだ」と寄稿しました。
 しかし、圧力だけで北朝鮮をねじ伏せようとするのは危険です。
 日本政府は圧力の強化ではなく、米国に対して外交による解決をもっと重視するよう説得し、対話や緊張を低下させる努力を強めるべきです。

以上