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【特 集】第32回医療研
一人ひとりの尊厳を守る社会をめざして
医療人に求められること




今をどう生きる 子や孫が安心して暮らせる社会をどう残すか

ノーベル物理学賞受賞者    益川敏英氏
諏訪中央病院名誉院長・作家  鎌田 實氏


 

全国保険医新聞2017年11月15日号より)

 

 

鎌田氏 益川氏
記念対談には、一般市民も含め多数が参加した

 保団連は10月8、9日、愛知県名古屋市で「一人ひとりの尊厳を守る社会をめざして―医療人に求められること」をメインテーマに第32回医療研究フォーラムを開催した。初日には、ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英氏と諏訪中央病院名誉院長で作家の鎌田實氏が記念対談し、子供たちの未来、科学者や医師のあり方、平和への思いなどを語った。コーディネーターを務めた愛知県保険医協会副理事長の板津慶幸氏に、対談の内容を寄稿してもらった。

 

子どもの未来を育てるために

 冒頭、益川氏は「勉強は嫌いだった」「宿題は意識してしなかった」という自身の子ども時代のエピソードを紹介しながら、「子どもは最初のスタートラインが身につけば自由に育っていくものであり、下手に手を加えるのではなく、自立させることが大切」だとした。続いて、自身の本との出会いについて、「今でもはっきり覚えているのは、戦後すぐ図書館で一冊の本を引き出す際に『この本の奥には何があるのか』と手が震えた。それ以降、本の虫になった」という経験を語った。
 鎌田氏は、今の日本では、「〇と×」の二項対立をさせたがるが、〇と×の間にはいろんな「△」がある。〇でなくても、〇に近い△も認められる社会を目指すべきではと話した。またチェルノブイリ原発事故が起きたベラルーシに医師団を派遣し、子どもたちを救う活動をしていると紹介。チェルノブイリの事故が起きた時、日本の原発は大丈夫と説明されてきたが、東日本大震災の後に、原発事故が起こった。科学に大丈夫はないことをあらためて示した。子どもの甲状腺がんは疑いを含め約190人。この数字は本当に原発事故と関係がないと言い切れるのか。検診の実施をはじめ、子どもの命を救うために最善を尽くすこと、最悪にならないために策を講じる必要があるとした。

 

科学者・医師として―科学との向き合い方

 防衛省が安全保障技術研究推進制度を利用し軍事研究に対して予算を付け、近年その額がさらに増加している。
 このことに対し益川氏は、研究してほしいテーマがあるなら、文科省がきちんと予算を付ければ良い話であって、防衛省が課題を出して予算を付けるというのは筋違い。人を殺すための研究はやるべきではないとした。
 鎌田氏も、科学者も一人ひとりは普通の科学者。医学者も一人ひとりは普通の医学者。ただ七三一部隊などでも明らかなように、本当は人を助ける医学が、一歩間違えると大きく道を踏み外すことがあることを忘れてはいけないとした。
 また、益川氏の研究室には、恩師の坂田昌一教授の「学問を愛する前にまず人間として人類を愛さなければならない」というメッセージが掲示してあることに触れた。1987年に制定した名古屋大学平和憲章では「平和のために研究を、戦争には加担しない」という誓いが明記されており、今も名古屋大学にはこの誓いが息づいているとした。

両氏は、平和への思いを存分に語り、
若い医師・歯科医師にあたたかいメッセージを贈った

 

平和への思い

 両氏は共に「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション」の発起人になっており、保団連でも「3000万署名」に取り組んでいる。
 鎌田氏は、日本は憲法9条があったことで72年間戦争をせずに済んできた。また、9条を変えてしまえば東南アジア諸国は疑心暗鬼になるのではとし、9条を変えるのではなく、9条を武器にして日本として果たす役割があるとした。
 北朝鮮問題も、圧力をかけながらもコミュニケーションをとり、平和への想いをつなげることが大切だ。長年支援を続けるイラクの状況を紹介しながら、国を変えるのは他国の武力ではなく、自国民が変えるしかないのではとした。
 益川氏は、憲法について、文章を読むと涙が出てくる、心にすとんと落ちてきて格調が高く、憲法をいじるのは絶対に反対とした。

 

若い医師・歯科医師の皆さんに

 益川氏からは、「憧れとロマン」という言葉を贈りたいとし、何かきっかけを作ってあげれば没頭していくのが若者なので、周りはあたたかく見守ってほしいとした。
 鎌田氏は、優れた技術を身に付けることは必要だが、心を持っている人間を診るために自身が心を失わないでいることが大切とした。また、自分自身に毎日問いかけている言葉として、患者さんの自由を保障するために「本当に自由ですか」「権力に支配されていないですか」「時代の空気に支配されていないですか」「偏見や思い込みに支配されていないですか」と問いかけてほしいとエールを贈った。

 

対談を終えて

 今回、益川、鎌田両氏に対談を快諾していただき、コーディネーターとしてお二人と貴重な意見交換ができ、うれしく思った。
 特に益川氏には体調不良のなかを参加していただいた。両氏から直接、平和への熱いメッセージをいただき参加者の心に届いたと思う。また、「科学を愛する前に人類を愛せよ」は、我々が常に心すべきだろう。

(愛知県保険医協会副理事長 板津慶幸)

以上