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「美容目的」の根拠は不明
―保湿剤の処方制限反対 厚労省に要請―

全国保険医新聞2017年12月15日号より)

 

 

 医療用保湿剤の給付制限が中医協で議論になっている問題で、保団連は12月7日、医学的エビデンスや患者負担などに関する十分な検討をせずに医療用保湿剤を給付制限、保険適用外とすることに反対するとして、厚労省に要請した。協会が実施した緊急アンケートでも、反対の声が多数寄せられている。

 

 健康保険組合連合会(健保連)は9月に発表した政策提言の中で、数年前から美容目的でのヘパリン類似物質の単剤処方が増加している可能性があるとした上で、▽皮膚乾燥症に対する保湿剤(ヘパリン類似物質または白色ワセリン)の単剤処方を保険適用から除外▽中長期的には保湿剤の処方自体を保険適用除外―を提案した。
 11月の中医協でも「小児のアトピー治療用として処方されているのに美容目的で使用されている実態が、新聞等で指摘されている」として、保湿剤の適正使用が議論されている。

 

患者に重い負担のおそれ

 しかし、単剤処方や一度の大量処方がされた保湿剤が「美容目的」で使われていると断定できる客観的な根拠は、現時点では提示されていない。
 また、保湿剤治療が必要な皮膚科疾患がある患者や、悪性腫瘍に対する抗がん剤治療や放射線治療の副作用で皮膚の乾燥、炎症、かゆみが生じている患者への処方は、単剤であっても制限されるべきではない。軽症であっても保湿剤治療の継続により皮膚の乾燥症状の悪化を防ぐことは患者のQOLを維持・向上させる上で重要だ。特定の疾病に該当しなければ処方を制限するような要件設定も行うべきではない。
 さらにアトピー性皮膚炎などに罹患した患者は、定期的な受診や薬剤等の費用のみならず、例えば身体に合う高額な洗髪剤や石鹸、衣服や寝具等に購入せざるを得ない場合が多い。「国民の約1割がアトピー性皮膚炎に罹患している」という報告もある。
 保湿剤の安易な給付制限は、多くの患者・国民にとって重い負担となる恐れがある。

 

かえって医療費 増えかねない

 7日の厚労省要請に参加した大阪協会の笹川征雄皮膚科部長は「治療で保湿剤が使えず、状態が悪化すれば、外用剤・内服薬、さらには検査などが必要となり、かえって医療費が増えかねない」と指摘した。

 

保険外し「反対」約9割 静岡、大阪協会がアンケート

 静岡県保険医協会では、11月に保湿剤の保険適用除外に関するアンケートを実施。保湿剤を「処方する」「たまに処方する」との回答が9割、単剤処方も「よくある」「たまにある」が8割以上だった(図1)。単剤処方の保険適用除外、将来的に保湿剤そのものの保険適用除外ともに、7割以上が反対している。「皮膚乾燥に伴うかゆみは外用薬のみで改善する例も多く、不必要な内服をあえて併用する必要はない」との意見もあった。静岡協会は12月4日、中医協委員に対し「医療用保湿剤の保険給付外しはやめ、治療が必要な患者に対する処方が制限されることの無いよう中医協での審議をお願いします」とする要望書を送付した。
大阪府保険医協会でもアンケートを実施。保湿剤の処方は9割以上、単剤処方は7割以上が「している」と回答。保湿剤の保険適用除外9割近くが「反対」と答えた(図2)。「透析患者は乾燥性皮膚炎が多く、?痒症を併発する。(医療用保湿剤が)使えなくなると、抗ヒスタミン薬やレミッチなど、高価な内服薬を処方せざるを得なくなる」との声もあった。

以上