2015・No.1194
月刊保団連 8
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「道」
被爆・戦後70年 医療者は戦争も核も許さない
〜第26回 核戦争に反対する医師・医学者のつどい in 愛知へ参加を〜
中川武夫
特集
戦後70 年─平和と民主主義の今
日米地位協定にみる民主主義の現状
─沖縄にとっての戦後70 年
● 今年は「戦後70 年」の節目。だが「沖縄戦」はいまだに続いている。毎年追加される被害者数。未収集の遺骨群。今後も続く不発弾の脅威。沖縄戦の遺物・米軍基地も、いまなお県民の命と財産を奪い続ける。
●「有事の安保」を俎上に新たな戦争の準備を進める本土。駐留米軍の被害撲滅を訴え「平時の安保」を問う沖縄。戦後日本の主権を奪い、国民の権利を侵害する米軍駐留を支える日米安保と地位協定の矛盾を、沖縄から検証する。
前泊博盛
「憲法に基づく政治」と集団的自衛権
● 政治には越えてはならぬ一線がある。それが憲法に従うということであり、これを乗り越えてしまったら、立憲主義というプロジェクトに致命的なダメージを与える。
● 日本国憲法9条の下で政治のとることのできる安全保障政策には限界がある。今国会に上程された安保関連法案は、憲法の課している限界を超えている。法案は、憲法改正手続き(96 条)によらずに憲法を変えるに等しく、憲法をそのような形で扱うことは、立憲主義を危険に晒すことになる。
青井未帆
医の倫理─過去・現在・未来
─医療者として引き継ぐべきものとは
● 出生前検査による誕生の取捨選択が行われ、iPS 細胞の実用化研究が進んでいる。医療技術の進歩は急速に見えるが、STAP細胞の研究疑惑、薬剤研究における大規模な不正発覚など、研究者の倫理課題は混迷を深め、医学・医療の社会的責任が改めて問われている。
● 私たちは、15 年戦争時に医師・医学者が行った非人道的犯罪行為に対して未だに公式な検証、議論をしていない。現在・未来に向かう医療倫理を確立するために何をなすべきか。
垣田さち子
主権者から知る権利・学ぶ自由を奪った宮澤・レーン
● 終戦から70 年。平和主義を宣言した日本国憲法のもとで、日本はめざましい経済成長を遂げ、国民は平和の恩恵に浴してきた。しかし今、「安保法案」が国会に上程され、日本は戦争する国への第一歩を踏み出そうとしている。
● 今、国会で議論されている「存立危機事態」や「重要影響事態」、自衛隊の「後方支援」の中身なども、いったん安保法案が成立すれば、一昨年末に強行採決された秘密保護法によって、「特定秘密」に指定されかねない。そうなれば、戦前の「軍機保護法」や「国防保安法」と同様、私たちが日本をめぐる情勢や自衛隊の行動を知ろうとすることが「特定秘密を探知(探る)、収集(集める)」となり、処罰の対象となってしまいかねない。
● 私たち主権者の知る権利が奪われ、情報が失われたまま、再び日本が戦争への途を暴走することにならぬよう、先の戦争に日本が突入する中で起きた悲惨な「スパイ」事件から、今学ぶべきことは多い。
藤原真由美
過去に蓋をしてはいけない
─戦争・加害体験の継承は必要
● 日本国の経済・政治・文化・教育を支配して、国民を統治する日本支配層は、日本国を、如何なる戦争も・武力行使もしない「『第九条』の国」から、 「日米安全保障条約(安保)」体制に基づいて、米国に従属し、米国と共に世界中で侵略戦争をする「『安保』の国」に改めようとしている。
● 大日本帝国を滅亡させた「第2次世界大戦」における日本軍国主義の侵略戦争を、忘れてはならない。日本国を滅ぼさないために
金子 勝
被爆70年
医師たちの原爆症「被爆者医療に関わって」
ビキニ水爆被災事件と被爆者援護活動の過去・現在・未来
─医療者として引き継ぐべきもの
● 1954 年の米国によるビキニ水爆実験に遭遇した第五福竜丸被災事件は、敗戦からの復興を急ぐ日本社会に大きな衝撃と余波を引き起こした。
● この事件は、戦後10 年間放置されていた被爆者援護の機運を一挙に高め、政府や国会を動かす第一歩となった。
● 原爆症認定訴訟の争点となった放射性降下物などの残留放射能による被害は、広島・長崎でも、マーシャル諸島でも、またチェルノブイリでも明らかであり、福島原発事故の今後につながる問題である。
聞間 元
広島の被爆訴訟支援の取り組み
─医師としてなすべきこととは
● 戦後70 年、日本が戦争をしないできたのは平和憲法と被爆者の存在が大きい。国は被爆者援護を社会保障の一環として位置づけ、毎年10 億円ずつ予算を削減し、裁判で負けない限り施策の改善をしない。原爆症認定制度の抜本的改善、在外被爆者の医療費公費負担について裁判が進行中であり、黒い雨体験者も近く提訴をする。
● 私たち広島の医師歯科医師は歴史の生き証人としての被爆者の命をまもり、援護の拡大のため活動を継続していく。
青木克明
核兵器のない未来に向けて─高校生1万人署名
〜ビリョクだけど ムリョクじゃない!〜
● 高校生1万人署名は2001 年に、高校生平和大使の募集をきっかけに長崎の高校生たちが始めた活動である。
● 「ビリョクだけど ムリョクじゃない!」のスローガンのもと、これまでに集めた署名は100
万筆を超えた。署名は毎年、高校生平和大使によってジュネーブの国連本部に運ばれ永久保存される。
● 高校生たちは単に署名を届けるだけではない。国連軍縮会議に出席、英語でスピーチし、核兵器廃絶と平和な世界の実現を訴えた。
本田孝也
被爆の実相を次世代に伝える
漫画『はだしのゲン』をひろめる会の取り組み
● 核兵器の残酷さと平和の大切さを描いた漫画『はだしのゲン』を小中学校に寄贈する活動を進めている核戦争を防止する石川医師の会(石川県保険医協会は事務局団体)、『はだしのゲン』翻訳ボランティアグループのプロジェクト・ゲン(金沢市)、毎年夏に“ピース・デー”と原
爆と人間展≠実行委員会方式で続けている石川県生活協同組合連合会の3 団体有志が呼びかけて設立した「NPO法人はだしのゲンをひろめる会」の取り組みを報告する。
● 平和教育に関する自治体・教育委員会との連携や島根県松江市教育委員会等による閲覧制限への対応、海外への普及活動など、各地で新しい事業が展開されることを期待したい。
神田順一
レポート
NPT 再検討会議視察報告
使命は「核兵器の安全性と信頼性の維持」と明記
 〜ネバダ核実験場視察〜
■ 2015年核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けたニューヨーク行動の後、ラスベガスの国立核実験博物館と、ネバダ核実験場を視察した。両施設や、米国の本音が透けるガイドの説明などに ついて報告する。
■ ネバダ核実験場へは、現地の活動家の尽力で、日本原水協として初めて入場を許可された。施設内には建設のために先祖代々の土地を追い出された先住民・西ショーショーニー族の先祖の墓もあり、闘っているという。
永瀬 勉
診療研究
小児歯科医療の勘どころ
─みんなで考えよう子どもたちの口の健康─
第4回 保存、補綴、歯周治療
●今回からは、保存、補綴、口腔外科など歯科治療の実際について述べていく予定である。しかし、教科書ではないので、小児歯科ならでは、もしくは多くの一般開業医が悩んでいる点について選択して記述していく。まずは保存・補綴・歯周治療編である。
丸山進一郎
文化
映画の中の「歯」にまつわる話 (下)
中井 護
シリーズ
経営・税務誌上相談 420
職員の給与等支給額が増加した場合
益子良一
雇用問題Q&A 164
死亡してからも障害年金は請求できる
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 大西俊和
VOICE
― 6月号を読んで―
編集後記・次号のご案内