重度精神障害者における動物介在療法の意義
─重度統合失調症患者の生活機能に及ぼす効果
●社会医療法人松平病院では2006年より、比較的重度な統合失調症患者を対象に動物介在療法(AAT)を実施している。AATは、週1回2時間のプログラムで、動物は、訓練を受けた犬6匹である。重度統合失調症患者にAATを6カ月間実施し、生活機能の変化を評価した。その結果、生活機能全般に明らかな改善が見られた。AATは重症度や精神症状に左右されないプログラム内容であり、統合失調症患者の重症度にかかわらず、残存する機能を充分に活かすことのできるプログラムといえよう。
石田賢哉
ホースセラピー(馬介在療法)の健康効果
●本稿では馬介在療法の歴史、国内外での活動状況、馬介在療法の実施方法、リハビリテーション効果に関する研究事例および効果に関する評価についてレビューを行った。
●馬介在療法は理学療法、作業療法の分野ではヒポセラピーと呼ばれ、脳性麻痺児を中心に研究が進められている。
●脳性麻痺児では、姿勢制御および左右バランスの改善、頭頸部の安定性の改善、歩行運動能力の改善などの身体効果、知的発達障害ではコミュニケーション能力の向上などが知られている。
局 博一
バイオセラピーと植物介在療法
●植物介在療法は、植物の存在を、何らかの問題を抱えた人に活用する療法であり、一般的には「園芸療法」と呼ばれる。さまざまな人に対応できる有用な方法だが、近年の「病院内の生花禁止」などの傾向から、植物工場などの形態を活用した癒しの方法も検討していかなければならない。
浅野房世
「学校病」医療券の活用で口腔崩壊を防ぐ
◆現代において貧困を原因とする児童生徒の「口腔崩壊」が問題になっている。「口腔崩壊」の実情を正確に理解し、就学助成制度の一つである「医療券」の成り立ちや変化してきた条件や内容を熟知し、貧困家庭が増加しているといわれる近年における普及状況および問題点などを把握することで、有効活用できれば現状改善の一助に寄与するものと考える。
坪水良平
公衆衛生の最大の敵・戦争
◆戦争は、まず国民の1%にも満たない一部の武断グループの思い上がりからスタートする。戦意高揚のためのさまざまな広報手段が用いられ、その方向にマスコミと世論が傾き始めると、いよいよ実践段階に進んでいく。
◆軍隊は、地元住民を守ることは二の次で、軍組織自体を守ることに狂奔する。寿命未満の死、障害者の派生を防ぎ、人々の生産性とQ0Lの向上を使命とする公衆衛生の理念に反する戦争は絶対悪と言える。
◆「あらゆる地獄を集めたような地上戦」を経験した沖縄県民は、現政権が進める日米共用の恒久的軍事基地の構築に断固反対する。
吉田朝啓
自由貿易のあとさき メキシコに見るTPP と日本の行方
米国・アトランタで10月5日、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の閣僚会合が開かれた。日本を含む交渉参加12カ国が集まり、5年半にわたって続けられていた交渉が大筋合意した。翌日のメディアは「輸入ワインが安くなる」「日本の美味しいコメの輸出が増える」などと騒ぎ立てた。
2010年10月、菅直人元首相の所信表明演説から国会の質疑に取り上げられてきたTPPの問題は、国政の場でも賛否が二分され議論が続けられてきた。しかしこの間、一貫して政府は交渉内容を十分に明かさず、ブラックボックスの中に入ったままの状態が続いている。いったいどういう内容で、その後どんな影響が出るのか。それを求めて2014年末にメキシコへと飛び、各地で農家や労働者らを取材した。
上垣喜寛
歯科金属アレルギーの診断と治療
第3 回 治療の実際〜原因確定から除去後の一時的悪化まで
●歯科金属アレルギーの有無と原因金属の確定、使用可能材料の検索について、典型的な症例を通してまとめた。
●被疑原因金属を除去した数日後に、症状が一時的に悪化した場合、歯科金属アレルギーであることを高い信頼性をもって予測できることになる。その意味と対応について、症例をみながら解説する。
高 永和
性同一性障害の診療(上)
─性同一性障害の診断と診療の流れ
●「性」には多様な要素がある。「からだの性」と「こころの性」とが異なる性同一性障害の場合、自分の身体が自分のものではないような感覚である「性別違和感」を持つ。その数は、全国で約1万8千人とも4万人とも推計されている。
●性同一性障害当事者の診療は、精神科医、産婦人科医、泌尿器科医、形成外科医などが連携した医療チームであるジェンダークリニックで行われる。日本精神神経学会の診療ガイドラインに沿って、性同一性障害の診療が行われている。
中塚幹也
文化・交流 各地の文化活動 ─21─
第24 回四国ブロック文化の旅
「マッサン、ポニョに びっくりポン!!」
愛媛県保険医協会