医療・介護の一体的見直しに対抗する
●医療・介護の一体的見直しは、社会保障の変質・解体を意図している。
●「川上」改革としての医療提供体制の再編は、医療費適正化計画に組み込まれていくことで、医療費抑制の鉄枠をはめられ、不断の見直しが迫られることになる。
●「川下」改革としての「地域包括ケアシステムの構築」は、公的な生活保障システムを地域の助け合いと市場へと置き換え、変質を図るものである。
●国保の都道府県単位化は、医療費抑制の蟻地獄をもたらし、住民のいのちとくらしを脅かす。リアルな実態から出発し、真に求められる地域医療・介護の水準を明らかにし対置する必要がある。
横山壽一
社会保障としての国民健康保険を守るために
都道府県単位化を前にしていま全国各地でやれること
●都道府県は2018年度に向けて「都道府県国民健康保険運営方針」の策定が義務づけられる。
●都道府県ごとの今後2年間の闘いが、2018年度からの国保を左右することになる。
寺内順子
患者負担増大による患者家族への影響
─難病制度と医療制度改革の課題と今後
●2014年に難病法が成立し、2015年1月から施行された。新制度のさまざまな課題を列挙した。難病法制定の際に衆議院、参議院での附帯決議がつけられており、列挙した。制度の改善に向け示唆に富んだ内容になっている。
●難病法と軌を一にしてさまざまな法制度の改正があり、これらの関連諸制度との関係が分かりにい。さらに、医療制度改革が急速に進んでいるが、患者の意見を取り入れ難い体制で事が進んでいる。患者会の総力を挙げて解決に努力したい。
高本 久
憲法と人権としての社会保障・生活保護
●今、軍事国家か福祉国家か、国のかたちが問われている。戦争法反対・廃止運動、そして生活保護・社会保障、25条を守り、発展させる、すなわち憲法の国民主権、平和主義、人権保障を柱とする新たな福祉国家構築のための運動も大きなうねりとなっている。
●本稿では、福祉国家の基底として、「人権としての社会保障・生活保護」を提起し、より豊かに発展させる闘いの方向を展望する。
井上英夫
本当? アベノミクスの「成果」
─どうなる? 日本の経済
●アベノミクス「3本の矢」からなる「第1ステージ」の「成果」は惨澹たるものであった。3年間の平均実質成長率は1%以下で民主党政権時代(1.7%)を下回る。1人平均の実質賃金が5%以上減少するなど、人々の暮らしも厳しくなった。
●「第2ステージ」の「GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」という諸目標も全て実現不可能である。
●人々が「アベ幻想」から目覚め、政策の抜本変更か安倍内閣の退陣を求めていくことが、日本経済と暮らしを良くするために必要である。
山家悠紀夫
支払いの限界を超えた国保料
─政令市トップの国保料を市民の運動で引き下げた取り組み
■ 2012年政令市の中で静岡市の国保料は最高額となった。所得の2割を占める国保料は6世帯に1世帯の滞納世帯を生み出した。
■すでに国保料引き下げ署名に取り組んでいた「静岡市医療と福祉をよくする会」は運動を強め10年目の昨年初めて引き下げに成功した。これは諦めずに地道に行政や市議会へ「市民の願いを送り続けた結果であると確信している。
■本稿では静岡市における国保改善の取り組みを紹介する。
山田美香
性同一性障害の診療(中)
─性同一性障害の治療の実際
●MTF 当事者(こころの性は女性、からだの性は男性)のエストロゲン療法では、陰茎の勃起抑制、乳房腫大、また性欲の低下、精子減少も見られる。ひげの減少、声の女性化は限定的であり、血栓症には注意を要する。
●FTM当事者(こころの性は男性、からだの性は女性)のアンドロゲン療法では、月経停止、ひげや体毛の増加、声の低音化が見られるが、乳房の縮小は限定的である。インスリン抵抗性などから血管硬化も見られる。
●FTM当事者では、乳房切除術、子宮・卵巣切除術、また希望があれば、尿道延長や陰茎形成術が行われる。
●MTF当事者では、陰茎切断、精巣切除術と造腟術が行われる。ホルモン療法や手術療法には健康保険の適用がなされていない。
中塚幹也
歯科金属アレルギーの診断と治療
第4回(最終回) 原因金属除去後も改善しない場合
●歯科金属アレルギーは、全身性接触皮膚炎であり、原因を見つけ出せれば治癒する。しかし、口腔内金属が原因であるにもかかわらず、症状は口腔内から離れた遠隔の部位に発症する。よって、歯科金属アレルギーの臨床像を理解しなければ、原因である歯科金属を見つけることは困難となる。
●われわれ歯科医師は、日々使用する歯科金属について、力学的性質だけでなく、アレルギーなど生物学的性質も熟知し、医科との連携を密にしながら、その治療に積極的にかかわっていかねばならない。
高 永和
(新)バイオミミクリーの世界─驚きの小さい生物の超技術─
第1 回 くっつける
■人類は2本足で立ち上がって以来、周囲から必要なものを採取し加工して利用してきた。火の利用で大発展を遂げた。カイコから糸をつむいで布を作る。鳥を真似て空を飛んだ。近年までにテクノロジーの発展は自然を超えたかに思えた。しかし、それは大量のエネルギーを使って膨大な廃棄物を出した。
■自然が作り出すものは無駄がない。その仕組みを学ばなくては人類に未来はない。「生き物に学ぶ」、これはテクノロジーの大きな改変だ。
今泉忠明
書評
『 君がここにいるということ 小児科医と子どもたちの18 の物語』
片倉和彦
文化・交流 各地の文化活動 ─22─
「彫刻家イサム・ノグチと母レオニーを訪ねる旅」報告記
徳島県保険医協会 善成敏子