国と東電の営業損害賠償打ち切り
─「20ミリシーベルト受忍論」を許さず
馬奈木 厳太郎
「復興」という名の災害
●災害の被害を最小限に抑えるには、復興過程での被害にも注目しなければならない。生き残った人々を「復興災害」が襲うからである。復興災害の典型は関連死や孤独死であり、これらを防ぐには、避難所や仮設住宅において人間的な生活を保障しなければならない。
●また、災害公営住宅は、ハコモノを早く大量に供給すればよいのではなく、コミュニティの保全に留意しなければならない。こうした点について、国内だけでなく、世界の経験からも学ぶ必要があり、今後の巨大災害に備えて、系統的な取り組みを進める常設の組織が求められる。
塩崎賢明
地域で安心して住み続けることを支える福祉住環境
─東日本大震災における被災者の生活と住まいの復興に向けての課題
●東日本大震災による大きな被害により、多くの被災者が震災から5年を経過しようとするいまでも不安定な居住生活を強いられている。
●このことは、住み慣れたまちで安心して暮らすことができる居住環境があることが、私たちの生活にとっていかに大切で、それが一旦失われたときに取り戻すことの難しさを知らしめることとなった。
●東日本大震災被災地における被災者の生活と住まいを支える福祉住環境のあり方を考えることは、全国各地の少子高齢化、人と人のつながりの希薄化が進む地域において取り組むべき課題に通じることである。
児玉善郎
人の復興、こころの復興
─あすと長町仮設住宅自治会のあゆみと、これから
●2011年4月下旬、宮城県内有数の大型仮設住宅団地「あすと長町仮設住宅」(233戸)が完成した。運営委員会から始まり、自治会の立ち上げ、近隣病院や大学の協力による健康相談や住民の精神的ケア、住民目線で理想的な復興住宅を考えるワークショップなど、さまざまな取り組みを行ってきた。殺人未遂事件などのトラブルを乗り越えながら歩んだ自治会のあゆみと、今後への思いをまとめる。
飯塚正広
震災復興借り上げ住宅入居者の暮らし・健康とコミュニティについて
●阪神淡路大震災の「借り上げ復興住宅」からの退去を迫られている人たちがいる。希望者の継続入居が必要であり健康・暮らしとコミュニティを今度は人の手で再び損なわせてはならない。
●〈健康アンケート〉では入居者が何らかの健康障害があり、かかりつけ医をもち、築き上げてきた人間関係・コミュニティの消失を不安に思っていることが示された。
●高齢者の望まぬ転居は健康に否定的な影響を及ぼす。コミュニティは健康の砦であり行政はその専門性である福祉機能を発揮することが期待される。
●住居や転居と健康の関係を明らかにし避けられる健康被害をなくすことは地域医療の大きな課題である。
広川恵一
福島第一原発事故発生から5年
放射能汚染と住民を取り巻く課題
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●放射能汚染による課題として、増加する福島県の震災関連死、県外に広がる汚染の実態、「森の物質循環」と放射性物質の生体濃縮、県民健康調査から見る甲状腺検査の結果、原発事故処理作業員の労災認定基準と汚染地への帰還基準の矛盾について解説する。
●福島県の人々の多くは山の恵みを享受しながら暮らしてきた。飯舘村では森の除染が進まないまま、居住地や田畑の表土除去による除染が進められ、空間線量率のみで帰還を決めている。
●本当の復興とは何か。重要なのは、原発事故によるさまざまな問題に継続的に注意を払い、現在の状況があるべき姿なのか、私たち自身が確認し続けていくことである。
木村真三
「原発の町の暮らし」と住民運動
─鹿児島・九州電力 川内原発の視察報告
■保団連公害環境対策部は毎年公害視察会を実施しているが、2015年11月21日〜 22日、鹿児島県の九州電力・川内原子力発電所(以下、川内原発)の視察会を行った。
■1日目は薩摩川内市国際交流センターを会場に、生態系破壊と健康被害が明らかになった学習講演会を開催。「ストップ再稼働!3.11鹿児島集会実行委員会」事務局長の向原祥隆氏が「川内原発を巡る情勢と課題」のテーマで講演し、参加者による「川内原発1、2号機再稼働の即時停止
を求めるアピール」を採択した。
■2日目は、川内原発へ向かうバスの中で、川内原発建設反対連絡協議会会長の鳥原良子氏から「川内原発建設反対及び再稼動反対の活動報告と今後に向けて」の話を聞いた。川内原発では厳重な警備の中、九州電力の職員一人が添乗して構内に入り、バスに乗車したまま再稼働した1号機、2号機を視察した。視察後、学習会場に戻り、鹿児島県保険医協会理事の青山浩一氏から「川内原発過酷事故における緊急被ばく医療に関するアンケート報告」を受け、活動を交流した。
■視察会の参加者22人は最後に、川内駅前で原発再稼動反対を訴え白衣で宣伝を行った。視察会の概要を参加した保団連公害環境対策部員の5人から報告する。
保団連公害環境対策部
性同一性障害の診療(下)
─思春期の性同一性障害当事者の治療
●性同一性障害当事者の半数以上が小学入学以前に性別違和感を自覚する。中学生の頃には、制服、二次性徴、恋愛などの問題が重なり苦しむ。ジェンダークリニックを受診するまでに経験する自殺念慮、自傷・自殺未遂、不登校などは高率である。
●文部科学省の通知(2015年)では、「教員研修」「チームでの支援」「医療機関等との連携」などの重要性を指摘した。
●ガイドラインが改訂され、二次性徴抑制療法の施行が可能となり、その間に確定されれば、性ホルモン製剤に移行する。
中塚幹也
シリーズ 心電図の生き字引
─心電図自動診断を日常臨床にどう生かすか─
診断の実際─5─
三原純司・関口守衛
バイオミミクリーの世界─驚きの小さい生物の超技術─
第2回 身の回り、住
今泉忠明