2016・No.1220
月刊保団連 6
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「道」
その「基地問題」は、虚像かもしれない
三上智恵
特集
健康長寿を支える
高齢者の健康と口腔
 ─より良く食べるはより良く生きる─

●高齢者の増加に伴い、今後ますます医療・介護の需要は高まっていくことが予想される。その中で近年「口から食べる」ことの重要性が広く認識されはじめている。
●口腔が健康の増進、保持、回復、療養に果たす役割はとても大きい。また口腔ケアが肺炎予防に果たす役割、咬合が嚥下に果たす役割も注目されている。
●「口から食べる」ことが多くの役割を果たし、貢献していることはもとより、人間の尊厳を守ることであることも忘れてはならない。

馬場 淳
高齢期に特有の疾病・障害
 ─ロコモ・サルコペニア─

●ロコモとサルコペニアはともに高齢期の身体機能低下ひいては要介護化の予防を目指した概念である。
●ロコモは運動器の障害により移動機能の低下した状態であり、日本整形外科学会から提唱され、3つのロコモ度テストで程度が判定される。
●サルコペニアは欧米の老年医学の分野から提唱され、筋量の低下をベースとして、筋力(握力)、身体機能(歩行速度)の3つから、アジアの基準値にて判定される。
●包含関係でいえば、サルコペニアはロコモに含まれるが、両者の視点は異なり、サルコペニアでは筋肉を全身的状態との関連でとらえている。対策は運動と栄養指導を両者合わせて行い、継続することが大切である。

松井康素
高齢者の廃用症候群をくい止めるリハビリテーション栄養の重要性
●廃用症候群の予備群といえるフレイル高齢者の発見と対応が重要である。
●フレイルの中核要因は、低栄養とサルコペニアである。
●廃用症候群では、サルコペニアのすべての原因(加齢、活動、栄養、疾患)を認めることが多い。
●活動と栄養によるサルコペニアは、急性期病院で医原性サルコペニアとして作られることがある。
●サルコペニアの対応は原因によって異なり、リハビリテーション栄養の考え方が有用である。
若林秀隆
超高齢社会における低栄養の予防と対策
●健康寿命の定義は、日本と欧米で異なるため比較することはできない。さらに日本の平均寿命と健康寿命との差の年数(不健康寿命)は、必ずしも寝たきりを意味しない。また不健康寿命の基礎疾患は、脳卒中、認知症、高齢による衰弱(フレイルティ)であり、これらで全体の50%を占める。
●ここでフレイルティの定義(Freid)において、有害事象の予測因子には優先順位であり、歩行速度>握力>体重減少が重要であることを認識する必要がある。
雨海照祥・長谷川茉莉
在宅高齢者の「食べる力」を回復させる
 ─在宅NST(栄養サポートチーム)の試み─
●チーム医療、多職種連携が叫ばれている割に、本当の意義が腑に落ちて実践されているだろうか。「食べることは生きること」といったスローガンを掲げるだけでは、医療提供側の自己満足にすぎず、
ドロップアウトした患者には何の救いにもならない可能性がある。
●「口から食べられない」ハンディキャップを抱えた患者に対峙する際、「どんなあなたでも支える」という心構えが必要である。例えば、「胃ろうを否定しない」ことが最も分かりやすい。「口から食べさせたい」の対極にある「憎き」胃ろうを認めることが、なぜこのテーマの解決策になるのかを在宅NST(nutrition support team、栄養サポートチーム) の取り組みを通して理解いただきたい。
小川滋彦
論考
大気汚染被害は終わっていない
 ─大気汚染対策の陰でつづく被害者の放置─
◆昨今の日本の大気汚染被害は、大気汚染対策の進展による汚染の低減傾向と、ぜん息治療の進歩のなかで「見えにくく」なっているが、それは被害がなくなったことと同義ではない。
◆今なお症状のコントロールが利かず、「受診抑制」や薬の「節約」などをして病気と生活破壊の悪循環に陥る患者が少なからず存在する。
◆東京都の救済制度も風前のともしびとなり、国が制度創設に乗り出さねば結果的に社会的費用を増大させることになる。
尾崎寛直
日米外交の仕組みを紐解く
 ─沖縄基地・TPP など諸問題を例に─
◆日本の政策は米国の影響を強く受けて作られる。基地問題でもTPPでも安保法制でも、少なくない人々が米国からの影響を苦々しく思っている。しかし、日本国内で政策を実現するために、「米国」に弱い日本社会への圧力として「米国の声」を日本の側から作りだし、「米国」を利用してきた面は見落とされていないか。日本政府や日本企業などがワシントンのロビーイストやシンクタンクに情報と資金を提供し「米国の声」を作りだしている。偏った日米外交システムの問題を指摘する。
猿田佐世
診療研究
お家に行こう!
〜食べることを支える〜(2)

●訪問現場でみられる咀嚼の問題を考えたときに、自宅療養を余儀なくされている原因である身体機能障害を考慮する必要があります。身体機能障害のもとになる運動障害は咀嚼障害の原因となるからです。これらの対応とは、運動の要素を考慮した機能低下に内容に応じた運動訓練の提示と、病態を理解した対応となります。原因疾患によっては、回復は不能である場合も多く、咀嚼機能の改善は見込めません。その際には、安全でおいしく食事ができる方法を提案しなければなりません。

菊谷 武
文化
バイオミミクリーの世界─驚きの小さい生物の超技術─
第5回 空
今泉忠明
シリーズ
経営・税務誌上相談 430
公社債・公社債投資信託の税制
益子良一
雇用問題Q&A 174
介護離職対策と2025 年問題
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 川端一歩
VOICE
─4月号を読ん─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内