2016・No.1221
月刊保団連 7
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「道」
租税理論から損税(控除対象外消費税)解消はゼロ税率(免税)の適用で
益子良一
特集
2016年度診療報酬改定と「かかりつけ医」
誰のための医療か
 2016年度診療報酬改定における「かかりつけ医」

●経済利益最優先で猪突猛進してきた日本。「世界に冠たる国民皆保険」は、「医療費亡国論」に耐えながら踏ん張っている。骨太方針やアベノミクスの金看板が陰る今、社会保障の充実がどんなに大切かを訴え世論とする時期である。地域医療を守るかかりつけ医の奮闘が強く望まれている。理想的なかかりつけ医像はそれぞれ違うかもしれないが、患者・住民あっての診療という点で一致できる。本来診療は診療報酬点数に振り回されるものではないはずである。拙文をたたき台として有益な議論が起これば幸いである。

高本英司
開業医・在宅医療の立場から考える「かかりつけ医」

●そもそも、かかりつけ医機能とは国民皆保険でフリーアクセスのもと診療所・中小病院が地域住民とともに作り上げてきた、医療の基本をなすものである。そしてそれは算定基準、施設要件などになじむ性質のものではない。安倍政権の社会保障削減計画、特に昨年の「骨太方針」に基づく今次診療報酬改定、新設された「かかりつけ医」の目指すものは安上がりの医療を目指しての事だろう。総合診療専門医制度もそうであるが、「かかりつけ医」制度も制度設計があいまいで実態に合わず、医療現場に混乱を与えるばかりである。

武村義人
歯科における「かかりつけ医」
●新設された「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(か強診)の施設基準には、「かかりつけ医」機能に直接関係しない項目も多く含み、届出には高い障壁となった。高点数で政策誘導した結果、玉石混淆となり、現場の評価が分かれた。
●フッ化物歯面塗布処置の対象をエナメル質初期う蝕罹患者にも拡大して「未病ゾーン」に踏み込み、また歯周病の重症化予防として、歯周病安定期治療(SPT)が条件緩和されたことは評価できる。
●「かかりつけ医」機能については、その必要性とともに地域包括ケアシステムにおける位置付けも議論されるべきだが、「安上がりの医療提供体制」としてはならない。在宅ばかりでなく、搬送システム構築で歯科診療所の外来機能の活用を検討すべきではないか。
平田米里
患者を診て、家族も見て、社会も見る
 患者・家族の立場から考える「かかりつけ医」
●「あなたにかかりつけ医はいますか?」のアンケートに答えた13人中、「いる」は6人、「いないも6人と同数だった。「微妙」と答えた人が1人いた。
●「いる」人は、持病を診てもらっている近くの医院・診療所がほとんど。
●私が考えるかかりつけ医は、@認知症を診るのは認知症に詳しい医師が良い、A近くの医師で健康全般を診てくれる医師が良い。ただし、患者側ばかりに探す努力を押し付けず、医師側からも名乗るべきではないか、B医師も人間、得手不得手があって当然、C患者を診て家族も見て、社会も見る医師が良い
見国生
論考
原発訴訟が社会を変える
◆約20年前から原発訴訟を闘ってきた弁護士が原発訴訟の過去・現在・未来を語る。
◆原発差し止め訴訟の未来は決して暗くはない。
◆また、脱原発の確信を広めるためのドキュメンタリー映画『日本と原発』が作られ、1300回の自主上映が日本中で開催されるなど大ヒット中である。その映画の要点を説明する。そして、脱原発、その出口は自然エネルギーであることを説く。
河合弘之
診療研究
お家に行こう!
〜口腔ケア関連性誤嚥性肺炎って?〜(3)

●高齢者の死因の多くは誤嚥性肺炎を含む肺炎であると言われています。その有効な予防手段として、口腔ケアが注目されています。実際に、訪問歯科診療の要望の多くに口腔ケアが挙げられています。口腔ケアが肺炎発症の予防手段になる事は揺るぎない事実ですが、一方で口腔ケア中におこる誤嚥が口腔ケアの原因になる事も考えられ、誤嚥リスクや低栄養リスクをかかえる高齢者への口腔ケアの際にはバイオフィルムの口腔外への回収を重点に行う必要があります。

菊谷 武
シリーズ 心電図の生き字引
診断の実際─ 8 ─
三原純司・関口守衛
文化
バイオミミクリーの世界─驚きの小さい生物の超技術─
第6回(最終回) 身の回り
今泉忠明
鼎談
憲法と医療
 日本国憲法公布から70年。医療の現場や、人々の命と健康にかかわる問題で、憲法はどうかかわってくるのか─。司法試験受験生らに憲法の価値を伝えてきた伊藤真弁護士とともに、憲法と医療について考える。
伊藤 真・杉目博厚・細部千晴
シリーズ
経営・税務誌上相談 431
熊本地震に対する義援金の取扱い
益子良一
雇用問題Q&A 175
退職予定者が年次有給休暇を請求
曽我 浩
会員
文化・交流 各地の文化活動 ─25─
努力とこだわりの文化活動
福岡県保険医協会文化部部長 野口碩雄
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 川端一歩
書評
『再生可能エネルギー100%時代の到来 
市民パワーでCO2 も原発もゼロに!』
松村康夫
VOICE
─5月号を読ん─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内