2016・No.1222
月刊保団連 8
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「道」
東日本大震災の被災地から訴える 「我々は戦争も核も原発もいらない」
刈田啓史郎
特集
戦後71 年目の夏
─今も戦争に反対するわけ
知ってほしい 沖縄で起きていることを
 〈写真と文で見る〉 「安アンポ全保障」の最前線

●元米海兵隊員による死体遺棄事件が4月に沖縄で起きた。米国の海兵隊訓練基地とイラク帰還兵を取材してきた映画監督の影山朝子さんは「カチッとスイッチが入るのよ」という。殺人訓練を受け、戦場で人を殺してきた兵士や軍属が数多く住む沖縄は、やはり危険なのである。そして、米軍と自衛隊の一体化が進むこれからは、沖縄県外も対岸の火事では済まなくなるであろう。

浅見裕子
沖縄の今 ─2つの誤解を解きほぐす─

●米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古の新基地建設に沖縄県民は反対を示してきた。しかし安倍政権はいまも基地建設を強行しようとしている。
●一方、沖縄に全国の米軍専用施設の約74%が集中する背景には、多くの国民の「基地経済」「抑止力」に対する誤解がある。
●いまや“神話”でしかない2つの誤解を解きほぐし、沖縄の今を報告する。

島 洋子
戦争に抗する ─ケアの倫理から平和を構想する─
●安全保障という考え方は、安全を唱えながらも、市民の生命や身体を蔑ろにしている。現在の安倍政権下の憲法破壊はそのことを物語っている。
●いまや私たちは、安全保障が蔑ろにしてきた、脆弱なわたしたちの身体、そして世界を大切にする経験、特に女性たちに長く負担させられてきたケアという営みから、立憲主義や民主主義を再考す るべき時である。
岡野八代
民主主義の基礎をなす集会・デモ行進の自由
●現在、憲法の平和主義や人権保障の視点から、安倍内閣が強硬に推進してきた安保関連法を廃棄に追い込むべく多くの市民による集会やデモ行進が活発化している。
●本稿では、民主政治の基礎とされる表現の自由の一類型であり、参政権的権利でもある集会・デモ行進の自由の現代的意義について、現在の言論状況を踏まえて明確にし、表現活動の自主規制の問題点や、現代型集会の自由として注目される宿営型表現活動の自由の意義について考察を加える。
内藤光博
「緊急事態条項」創設は議会制民主主義、国民の権利を破壊する
 ─ヒトラー独裁の成立過程が浮き彫りにするもの─
●国家緊急権とは、国政の最高指導者が「緊急事態」の名の下に、普段は遵守されるべき規則を逸脱し、国民の基本権さえ制限できる国家大権のことである。戦争を号令する者にとってこれはなくてはならないものだろう。だが国家緊急権は使い方を誤ると、あるいは悪意をもって行使されれば、民主政治は易々と破壊される。
●本稿ではそのことをヴァイマル共和国の崩壊、すなわちヒトラー独裁の成立過程を例に見てみよう。
石田勇治
論考
ハンセン病問題と人権─「特別法廷」問題を中心に
◆4月25日、最高裁判所がいわゆる特別法廷の指定についてハンセン病患者の人格と尊厳を傷つけたとして謝罪した。これにより、行政府、立法府、司法府が何らかの形でハンセン病政策についての過ちを認め謝罪したことになる。
◆しかし、ハンセン病問題は、決して終わってはいない。
◆医師は、医療保障制度上大きな権限を与えられ、裁判官以上に生命権・健康権のにない手である特別法廷問題を他山の石とし、医学・医療界の「原罪」克服の機会としていただきたい。
井上英夫
性暴力事件で画期的判決  医療者として寄与できたこと
◆薬物を利用したとみられる極めて悪質な性暴力事件の東京地裁判決が、2016年3月に出された。私は主治医として、原告の症状の深刻さや原因について意見書や証人尋問で詳細に訴えた。また、精神科専門医からも、薬物関与の可能性が高いことや、被告らが主張する「原告は人格障害・妄想性障害」等の内容を否定する意見書が出された。
◆事実関係についてほぼ原告の主張が認められたほか、被害女性の心理や受けた精神的障害の深さも正当に認め、性暴力事件でありがちな「被害者落ち度論」についても二次被害であることに言及しており、画期的内容と言える。
長井チヱ子
インタビュー
熊本地震 支援の教訓と再建の課題
 不可欠な事務局機能、病院再開がカギ

2016年4月の熊本地震で、南阿蘇は本震と断続的な余震で橋やトンネルが崩落、熊本市内からのアクセスが一時完全に不能となり、陸の孤島となった。震災直後から全国から医療支援が入り、4つの仮設診療所が設置され医療提供が行われたほか、介護施設への巡回訪問や口腔機能支援、心のケア、薬剤等の調達、救急医療の整備などが行われた。あれから2カ月、災害医療支援チー
ムの任務が終了し、地域の医療機関にバトンタッチされたが課題は山積みである。災害時医療支援コーディネーターの松本久医師に南阿蘇村の今後の課題について聞いた。 (聞き手:編集部)

松本 久さん
診療研究
シリーズ 心電図の生き字引
診断の実際─ 9 ─
三原純司・関口守衛
文化
(新)文学の中の「歯」にまつわる話(第1回)
中井 護
シリーズ
経営・税務誌上相談 432
2016(平成28)年税制改正
益子良一
雇用問題Q&A 176
労働基準監督署が労働条件調査
曽我 浩
会員
書評
 『検証! 国保都道府県単位化問題  統一国保は市町村自治の否定』
山田美香
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 川端一歩
VOICE
─6月号を読ん─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内