2016・No.1225
月刊保団連 10
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「道」
言論封じの「スラップ訴訟」
内藤光博
特集
深刻化する子どもの貧困
子どもの貧困の現状と解消に向けて

●現在、貧困世帯数や子育て貧困世帯数が急増している。2012年の子どもの貧困率は13.8%に達している。
●子どもの貧困を解消するためには、生活保護制度の拡充が必要である。日本の捕捉率は15.5%という低さであり、捕捉率の地域間格差も大きい。
●子どもの貧困率が高い地域では、ワーキングプア率も高くなっている。そのため、最低賃金を1500 円に引き上げたり、非正社員の活用を規制することにより、ワーキングプアの仕事をなくしていく政策も必要である。

戸室健作
// ルポルタージュ//
ネットワークが救う貧困の子どもたち

●6人に1人の子どもが貧困世帯で育つといわれる現代。しかしその貧困は、周囲には容易に見えてはこない。
●大事なのは、さまざまな場面で子どもたちの貧困のサインに気づく、周囲の人びとの目。そして、そのサインを受けて、何らかのアクションを起こす人と人のネットワーク。
●医療の現場も含めて、ネットワークで子どもの貧困に立ち向かう取り組みは、全国各地で多様な形で広がっている。

矢吹紀人
学校歯科治療調査と受診実態調査から見えてくるもの
 ─子どもの貧困とのかかわりでむし歯の状況を調べる─
●大阪府歯科保険医協会では、2015年に「学校歯科治療調査」と「受診実態調査」に取り組んできたこの2つの調査から、貧困に苦しむ子どもたちや患者が多数おり、その実態が部分的だが明らかになっている。
●大阪府歯科保険医協会(以下、大阪歯科協会)が取り組んだアンケート結果や事例を紹介する。
矢部あづさ
すべての子どもが必要で十分な医療を受けられる社会に
●子どもの健康と医療を受ける権利は、日本国憲法第25条「生存権、国の社会的使命」や、子どもの権利条約第24条「健康・医療への権利」によって保障されています。
●しかし、子どもの貧困化が進む一方、国や政府は子どもの健康・医療への権利を守り保障する政策をとっていません。少子化対策の柱としても子どもの貧困対策がより必要で重要です。
●中学生・高校生までの医療の無料化は、緊急かつ重要な社会政策の1つです。
岡本茂樹
子どもの居場所をつくり、孤立を防ぐ
 ─「こども食堂」第1号店からの発信─
●2008年のリーマンショック以来、「子どもの貧困」という言葉が、日本の中でもささやかれ始めました。大きな問題として取り上げられるようになったのは、ここ2年ほどではないでしょうか。
●2013年6月に子どもの貧困対策法(子どもの貧困対策の推進に関する法律)が可決され、貧困の連鎖を断ち切ることを目的に国が動き、「こども食堂」=貧困対策という位置づけにされていますが、決してそうではなく、私たちは「全ての子どもは、国の宝。全ての大人が全力で応援し、支えていく!!」ことを目的に、子どもの笑顔に満ちあふれた社会づくりを目指して取り組んでいます。
近藤博子
論考
人類を「インターネットゲーム依存症(ネトゲ中毒)」から守るために
 ─ネトゲ(インターネットゲーム)は21世紀の阿片(麻薬)です!!─
◆メディア漬けが子どもに与える悪影響として乳幼児への危険性が指摘されている。その中でも電子メディアが幼児期・学童期の子どもたちの脳の働きを低下させる危険性が「デジタル・デメンチア」という言葉で表現される。
◆子どもの貧困は“メディア漬け”の状態に陥りやすく、ネット依存の危険性がある。「ネトゲ廃人」と呼ばれる新語の現況とその原因・症状・対策について考察を加えた。メディアとどのように関わるのかをメディアリテラシーという概念で予防したい。
◆また、ネトゲ中毒予防の第一歩とは何か、メディアが子どもの認知発達に与える影響についても考察した。最後に「スマホ漬け」加速の懸念について、私見を述べた。
村上直樹
診療研究
知って得する! 実地医科・歯科の薬剤情報
 第2回  多剤処方に対する対応の実際─神戸大学病院における取り組み
●多剤処方(ポリファーマシー)が生まれる背景には高齢化と密接な関係がある。
●不適切処方を防ぐためのツールとして、海外では「Beers criteria」や「STOPP/START* criteria」があり、日本では「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」がある。
●Criteria やガイドラインの日常的な活用は、不適切処方の未然防止、処方開始後の見直しに有用である。
●Criteria やガイドラインを共通のツールとした多職種連携も、多剤処方(ポリファーマシー)への対応にあたっては重要である。
(* STOPP:Screening Tool of Older Person's Prescriptions / START:Screening Tool of Alert doctors to the Right Treatment)
木村丈司
支台築造とファイバーポスト
第1回 保険収載の経緯
●歯科臨床において、支台築造は機能回復を行うために高い臨床的意義があり、歯冠補綴を行う際、多くのケースで支台築造が行われます。今回、4月の診療報酬改定時でなく、2016年1月にファイバーポストが特定保険医療材料として認められ、保険収載されました。本稿では、歯科では過去に例が少ないC2区分でファイバーポストが保険収載された経緯について説明します。
坪田有史
シリーズ 心電図の生き字引
診断の実際─ 11 ─
三原純司・関口守衛
文化
文学の中の「歯」にまつわる話(第3回)
中井 護
シリーズ
経営・税務誌上相談434
固定資産税が急に増えた理由
益子良一
雇用問題Q&A 178
能力がない事務長を変えることができるか
曽我 浩
会員
文化・交流 各地の文化活動 ─27─
2016年保団連「新・味わいと文化の旅」
山口・世界の絶景と世界遺産、フグや天神鱧に舌鼓
緒方一昌
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 川端一歩
VOICE
─8月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内