ロボットの進化と人間社会の変革
─衝撃的な未来─
●ロボットは今後、オフィス、店舗、家庭などに急速に普及し、やがてパソットと呼ぶ安価で汎用的な役に立つ個人用のロボットが社会インフラとなる。
●30年ほどの間にロボット技術が劇的に進歩してパソットの数が人間の数を上回り、社会の仕組みが激変する。これを筆者はロボット革命と呼ぶ。
●さらに300年後にはロボットは人間と融合して真空に適応した新しい生物ヒューロに進化し、宇宙に文明圏を拡げていくであろう。
中谷一郎
ビッグデータと人工知能の可能性と罠を知る
●近年、ビッグデータを用いる人工知能へ注目が集まっている。中でも深層学習と呼ばれる技術は脳に似たモデルを用いるので、やがてコンピュータが人間を超える知力をもつという議論さえある。
●だが必要なのは、技術の本質を正しくとらえ、有効性とともに限界を見極めることだろう。とりわけ、生物と機械の相違を無視してはならない。
●いたずらに騒ぐことなく冷静に分析することが、新しい技術を真に活用する道を拓くのである。
西垣 通
人工知能は未来の経済をどう変えるか?
●AIが未来の経済をどう変えるかについて論じる。
●現在あるAIは全て特定のタスクしかこなすことのできない「特化型AI」である。人間のようにあらゆるタスクをこなし得る「汎用AI」は、2030年頃に登場すると予想される。
●それ以降、人間のあらゆる仕事はなくなっていき、機械のみが生活活動を行う「純粋機械経済」への移行が開始される。そのような経済では爆発的な成長が起こる。
●ただし、労働者は収入が得られなくなるので、ベーシックインカムのような新しい社会保障制度が必要となる。
井上智洋
医療ロボットの開発
─患者、医師の負担を減らす実用型ロボット─
●医療ロボットの開発は医師のニーズを的確にとらえて工学のシーズ技術(技術の種)により問題解決を考え、使いやすさを何度も検討しながら実現化することが重要である。魚ロボットなどの生物運動メカニズムは良いシーズ技術となる。
●今後、IoT(Internet of Things の略:さまざまなモノに通信機能を持たせ、インターネットや人工知能により自動的に計測・認識・制御等を行う技術)と統合した自動型医療ロボット開発の進展が予想されるが、医師の医療支援ツールとして発展させることが肝要である。
山本郁夫
カネミ油症未認定患者検診報告
遠隔地転出者の次世代、次々世代を含む健康障害
●カネミ油症の実態を明らかにするため、長崎県五島市より転出した2012年の救済法で認定された姉弟の子供6人、孫3人を含む11人の家族を名古屋市協立総合病院にて検診した。
●10歳頃被曝した58歳の女性は小学6年よりありとあらゆる病気に苦しみ、現在介護職で現業ができず相談業務のみであるが、未申請であった。
●次世代では上顎または下顎両7番(第2大臼歯)の欠損が2人に認められた。今後歯科学的な面からもカネミ油症(ダイオキシン)の次世代、次々世代に及ぼす影響を明らかにすることが重要である。
藤野 糺
歯科のない病院における歯科医師のラウンドと歯科衛生士の存在
●人は口からダメになる。しかし人は口から再生する。病院に入院し口から食べることができない状況になると口はどんどん廃用する。経管栄養により栄養状態を維持しようとするが、やはり口から食べることで元気になる。
●利根中央病院では歯科衛生士を常勤化し、歯科医師のラウンドを開始し、OCT(オーラルケアチーム)を作って口から食べる取り組みを行っている。病院、施設、在宅、歯科外来どこでもシームレスな歯科治療をめざして夢は大きく広がる。
中澤桂一郎
科学技術と人間と学問の自由
─軍事と学術の接近を考える─
◆安倍政権になってから急速に進展しつつある軍学共同の現在の状況、特に防衛省が研究者の取り込みを図ろうとする委託研究制度である「安全保障技術研究推進制度」の実態について述べる。
◆防衛省はデュアルユースであることを謳い、いかにも成果の公開の自由があるかのように宣伝しているが、実際には民生技術の軍事技術への横取りであり、公開の自由は大きく制限されている。他方、軍事研究に長らく反対してきた日本学術会議であったが、現在その姿勢が揺らいでいる。いったん軍学共同が許容されてしまうと、日本の学術界は信頼を失ってしまうだろう。さて今後どのような方針を採用するか、今まさに正念場にある。
池内 了