2017・No.1232
月刊保団連 2
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「道」
戦争に使う土砂は一粒もない
大津幸夫
特集
「ニセ医学」に出合ったら
疑似科学の現状と科学性評定の試み
 ─サプリメント問題を中心に

●科学の装いをしているものの、実際のところ科学とは言えない疑似科学が社会にはびこっている。それが医療現場にもたらす影響も少なくない。
●疑似科学と科学の境界はあいまいではあるが、れっきとした科学と、問題の大きい疑似科学は、はっきりと識別可能である。
●その識別には、科学性の評定に関する知識が役に立つ。医療現場にもその知識が浸透して、社会から疑似科学が一掃されることが望まれる。

石川幹人
医療現場におけるニセ医学の傾向と対策
●日常診療において、標準医療以外の医療を好む患者を、ときに経験する。死亡例も出たホメオパシー、万能性をうたうEM、適切ながん治療を否定するがん放置療法などの根拠に基づかない代替医療や、週刊誌やインターネットにおける不正確な医療情報は、患者に被害を与えかねない。
●患者がニセ医学に惑わされる一因には通常の医療に対する不満や不安があり、ニセ医学を批判するだけではなく、臨床医が患者の訴えを傾聴し、良質な医療を提供することが対策になると思われる。
酒井健司
ニセ医学を見抜くセンスのために
●ニセ科学(疑似科学やエセ科学ともいわれる)が世の中にあふれている。科学は重要な人類の文化の一つであり、最も論理性や実証性を持っているのに対して、ニセ科学は、「科学っぽい装いをしている」あるいは「科学のように見える」にもかかわらず、とても科学とは呼べないものである。
●ニセ科学で特に問題なのは、健康系・医学系だ。ことは生命にかかわる。通常の治療(標準治療)を否定して治る病気を悪化させるなど、取り返しのつかないことになったりする。また、医学的根拠のない治療や商品で散財したりもする。どうしてそんなニセ科学・ニセ医学にはまったりするのか。
左巻健男
医療者が「ニセ医学」と対峙する際に取るべき態度とは
 ─だまされても、患者の自己責任?

●2015年9月に女優の川島なお美さんが亡くなった後、さまざまな報道が飛び交い始めた。その中の1つが、標準治療ではないある民間療法を行ったために壮絶な闘病生活を送ったという報道で、世間に衝撃を与えた。こうしたニュースを聞いて思い浮かぶのが、「ニセ医学」という言葉だ。こうした際、「民間医療を選ぶのは自由だし、どんな結果になろうとも患者の自己責任だ」という意見を言う人をたまに目にする。しかし、医療者は患者の選択を最初から「自己責任」で済ませ、関わることを簡単にやめてしまってよいのだろうか。

増谷 彩
代替療法とリスクコミュニケーションの困難性
 ─科学的に論破しても解決しない理由

●心身の不調に悩む人々が科学的根拠を持たない代替療法に近づく背景には、科学の知を相対化し、それに代わるものを積極的に求めていく対抗文化的なライフスタイルがある。「自然」であることを善とする共通のコードや世界観を、消費を通じてゆるやかに共有するコミュニティの中で、病気や健康、治療法が意味付けられている現状があり、専門家の科学に基づく知見が届きにくくなっている。

平野直子
レポート
南アフリカで国際エイズ会議「AIDS2016」
 対策停滞に強い危機感
杉山正隆
投稿
福島の子どもの甲状腺がんの現状
第24 回福島県県民健康調査検討会資料より
金谷邦夫
診療研究
シリーズ 心電図の生き字引
 診断の実際─15─
三原純司・関口守衛
「在宅ホスピスを語る会」の意味
─在宅ホスピス20 年を振り返って
●にのさかクリニックの在宅ホスピス活動の一環としての、「在宅ホスピスを語る会」について紹介した。在宅ホスピスを経験した家族の方に、その体験を語ってもらい、地域の人たちとの小規模の集まりで共有し、共に考える活動である。福岡県では10年ほど前から始め、次第に広がっている。
●今回は「在宅ホスピスを語る会」について少し詳しく紹介した。筆者はこのような地道な地域での活動が、在宅ホスピスを広め、質を保証するものと考える。
二ノ坂保喜
認知機能障害を考慮した歯科治療について
─認知症があっても普通に受診できる歯科医院を目指して
●歯科治療や口腔ケアは、患者の開口、閉口などの協力動作が必要である。しかし、認知症の進行と歯科医師やスタッフの対応力不足により意思疎通困難と判断され、患者の咬合崩壊や咀嚼・嚥下機能の低下を見過ごされる症例も多い。当院では、以前より試行錯誤を繰り返し、認知症を理解して患者に関わることが日常業務として定着した。そこで、当院において認知機能障害を考慮した援助について集計し、考察を加えて報告した。
小金澤一美
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の日常診療
─実態調査概要と今後の治療も踏まえて
●筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、脳と中枢神経に影響を及ぼす多系統にわたる複雑な慢性疾患であり、患者のQOLを著しく低下させる重大な疾患であるにもかかわらず、客観的診断指標がないために、医療者から心因性、詐病扱いを受けてきた。また患者数が多いとの理由により指定難病の対象外とされ、患者は疾患による苦痛に加え、社会から疎外され孤立している。かかりつけ医として、現状を打破するために患者会活動に参加した内容を報告する。
申 偉秀
シリーズ
経営・税務誌上相談 438
三世代同居のリフォーム工事
益子良一
雇用問題Q&A 182
閉院の際、トラブルなく職員に退職してもらうには
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 川端一歩
文化・交流 各地の文化活動 ─31─
一日囲碁三昧! プロ棋士との交流も
大阪府保険医協会文化部
VOICE
―12月号を読んで―
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内