2017・No.1237
月刊保団連 3
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「道」
原発事故から6年、避難指示は解除されたが
 ─20km 圏内の病院再開の難しさ
渡辺瑞也
特集
心のケア─震災、復興の中で何ができるか
震災・復興におけるトラウマ
 <環状島>モデルを用いて、その複雑な仕組みを解明する

●震災のトラウマは時間が経つにつれて、複雑な影響を個人や社会にもたらす。
●<環状島>というモデルと<重力><風><水位>といったメタファー(隠喩、たとえ)を用いて、トラウマがもたらす影響のメカニズムとそのダイナミズムを説明する。
●被災者の心に何が起きているのか、被災者と支援者とはどのような関係にあるのか、被災者に寄り添い続けるために、支援者や医療従事者はどのようなことを知っておくべきなのかを明らかにする。

宮地尚子・松村美穂
震災ストレス症候群の理解と診断
 ─福島の被災地からのレポート
●福島の震災とは原発事故によって「帰る土地を失った災害」である。この先、いつ復興するのか見当もつかず、住民の精神的健康は決して良くない。不眠やPTSD、身体表現性障害、その他の自律神経症状が見られる。しかもそれらは、うつ病や頭痛や目まい、体の痛みなど身体疾患のふりをして現れてくる。
●震災ストレス反応とは、生理学的レベルの打撃によって発生する生理神経症であり、精神神経症ではない。鑑別の決め手は、「強い入眠困難、または夜間に頻回に覚醒する」という過覚醒不眠である。
蟻塚亮二
大災害と子どもの心のケア
 ─子どもの成長につながる支援活動を考える
●災害後の子どもの心のケアのキーワードは「安心・絆・表現・チャレンジ」であり、時期に応じた支援のあり方がある。
●安心と絆を十分に育成し、眠りのためのリラックス法などのストレスマネジメント技法を習得した後に、被災体験の表現や回避へのチャレンジで、ストレス障害のリスクを減らす。
●防災教育と心のケアを融合して取り組むことで、トラウマ後成長を促し、語り継ぐ防災教育へとつなげていく。
冨永良喜
災害時から復興期まで、それぞれの段階における心理支援

●復興期に、被災者は自立的な生活の再建が求められるが、インフラ整備などは、国や自治体に任せざるを得ない。一時的な生活に長く耐えざるを得ず、先が見えない中で孤立無援感を抱くことがある。
●アルコール依存や自殺などを避けるには、徐々に出来事に向き合い、話し、意味を問い、振り返ることが助けになる。そのためにはときには楽しく笑い、気兼ねなく話すことができるような人々とのつながりの場をつくることが重要となる。

前田 潤
論考
福島「自主避難者」の現状とこれから

◆2017年3月末をもって、福島県からの区域外避難者(いわゆる自主避難者)の避難住宅が打ち切られる。その数は2万6千人を超える。そもそも区域外避難者とはだれなのか、その人々の現状と問題点、これからの課題は、あまり知られていない。
◆「いじめ」問題にあるように、《世間》の原発事故への無理解により、今後区域外避難者の「命」の問題になる可能性がある。この問題は原発事故の「終わりのはじまり」でもある。

吉田千亜
米国の歯科事情

◆米国で歯科医師免許を取得してから約20年、開業してから16年になる。「アメリカの治療費はなぜそんなに高いのですか?」「アメリカの保険制度は日本とどう違うのですか?」や「アメリカの歯科医師の地位はどんな感じなのですか?」と言った質問をよく受ける。このような質問に答えられるように、7つのトピックに分けて、米国の歯科事情を説明する。

成田真季
対談
保険医のマネープランを考える

患者さんの診療第一に、でもプライベートも充実したい─。そんな保険医の一生について回るお金の問題。岡本正史・保団連共済部担当理事と、ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太氏が保険医のマネープランについて語る。

岡本正史・伊藤亮太
診療研究
シリーズ 心電図の生き字引
 診断の実際─16─
三原純司・関口守衛
高齢化過疎地域での在宅医療の限界と対策
●通所介護の送迎車を利用して定期通院に関してのみ無料で送迎を実施、交通手段の問題で在宅医療へ移行するのを防いでいる。
●できるだけ院内処方分包と投薬法の対策を実施、薬の飲み忘れが無いように受診時に薬袋を持参してもらい、必要なら投薬カレンダーを作っている。
●高齢者ができるだけ昼の時間も単身にならないように家族と連絡を取り合い、ケアマネジャー同席のもと通所介護、ショートステイ等の利用を促している。
須川典亮
経口維持加算を通して見えた多職種連携
●地域包括ケアシステムが構築されている中で、歯科医療の新たな役割が求められている。
●在宅での歯科医療を提供し、要介護高齢者を支えていくためには、多職種での連携が不可欠である。
●2015年度の介護保険の改定によって見直された経口維持加算は、多職種協働のプロセスを評価するという画期的な内容であった。
●この取り組みを在宅で生かすことができないであろうかと考え、今回その方法をいくつかの写真を添えて紹介したい。
堺 洋紀
シリーズ
経営・税務誌上相談 439
配偶者控除の改正
益子良一
雇用問題Q&A 183
医療関係者の長時間労働、自己で正しく把握を
曽我 浩
会員
書評
蟻塚亮二、他『3.11と心の災害 福島にみるストレス症候群』
仲里尚實
文化・交流 各地の文化活動 ─32─
─「新・味わいと文化の旅」お誘い
ええ所じょ! 東四国の文化と自然満喫の旅
保団連文化部員・徳島県保険医協会文化部担当理事 善成敏子
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 川端一歩
VOICE
―1月号を読んで―
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内