2017・No.1239
月刊保団連 4
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「道」
「共謀罪」ではなく、格差・差別の解消でテロ根絶を
山下幸夫
特集
棄老山─ 2017 年春、開山。
居ながらにして棄てられる─現代の棄老物語

●高齢者の貧困が広がっている。現役時代は真面目に働いて貯金もし、日本の経済・社会を支えてきた普通の人々が、医療保険や年金、介護制度、住宅政策といった社会保障の不備により「下流老人」に追い込まれているのである。姥棄て山に連れていかれるまでもなく、居ながらにして棄てられる─そんな現代の“棄老物語”をレポートする。
●貧困の実態や支援に関する提言、講演をする中で、「自己責任だから救済する必要などない」という批判や、「下流老人にならないために、どうしたらよいか」という質問を受ける。しかし、貧困は自己責任ではなく、この国の社会システムの歪みが生み出したものであり、下流老人にならない方法は、「下流老人を生み出さない社会」に変えることだ。

藤田孝典
高齢者の生活実態と貧困問題
●「大企業優遇・富裕層支援」、「勤労者収奪・貧困放置」のアベノミクスが進行する今、高齢者の貧困化が急速に進んでいる。本稿では、「高齢者のいる世帯」の約26%が実質的に生活保護基準以下の所得しかないことを実証するとともに、その原因が公的年金収入の引き下げ、税・社会保険料負担の増大、医療・介護の利用者負担の引き上げにあることを突き止め、それらの影響により高齢者世帯の消費が縮小していることを明らかにする。また消費税率の引き上げによって逆進性が強まり、所得税の累進性をほぼ完全に打ち消すまでに至っていることを指摘する。
唐鎌直義
高齢者を直撃する社会保障解体
─医療・介護改革の本質を読み解く
●今国会では、介護保険法・医療保険法等の改正が予定されており、その中心が高齢者をターゲットにした自己負担増である。しかし、これらの改革は、単に負担増だけではなく、社会保障における公的責任を捨象し、社会保障を自助・共助に矮小化するものであることが最大の問題である。加えて、介護保険崩壊への先駆けとなる“混合介護”問題についても触れたい。
芝田英昭
介護保険の負担増と利用者・社会への影響

●国の長期債務は1053兆円。国債の積み上げは続いている。そのような財政状況を受けて、2013年8月6日に社会保障国民会議から政府へ報告書が提出された。そこでは給付の縮減と負担増を進めること、さらに公的制度の給付縮減のはざまを女性や退職後の高齢者の活用による地域の福祉力が埋めることが期待されている。2015年度の介護保険制度における新しい総合事業の導入や利用者負担2割の導入などは、報告書の延長線にある。さらに次期の2018年度改正においても、給付の縮減と負担の増が議論され、3割負担が導入されようとしている。このような状況の中で、改めて、介護保険は要介護状態にある高齢者が尊厳を持って暮らせるための仕組みとして機能するのか考察するものである。

鏡 論
今こそ ストップ! 患者負担増

●政府は医療をはじめとする社会保障費の削減を重点課題とした「経済・財政再生計画」を掲げ、生活保護者や高齢者など「弱い者」をターゲットに次々と切り捨てている。
●政府がうたう「負担の公平」が意味することは、すべて重い方に合わせた負担増であり、「世代間の公平」と言っては窓口負担増、「医療と介護の公平」「入院と在宅の公平」と言っては入院負担増を進めてきた。
●今後は高齢者だけでなく、あらゆる世代の負担増が計画されている。この動きを止めるため、保団連や多くの協会・医会が「今こそ ストップ! 患者負担増」署名に取り組んでいる。

名嘉圭太
レポート
浜岡原発視察報告
「原発の町の暮らし」と住民運動

■保団連公害環境対策部は2016年9月17日〜18日、浜岡原発の視察を行った。1日目は浜岡原発永久停止訴訟団の阿部浩基弁護士が同訴訟と情勢について講演し、アピール「浜岡原発廃炉と稼働中の原発停止・原発ゼロを求める」を採択した。2日目は、浜岡原子力館や浜岡原発5号機の防波壁、使用済み核燃料を運ぶ10q道路などを視察。移動の車中で「原発なくす静岡の会」の林克代表から再稼働をめぐる情勢と課題について報告があった。原子力館では職員から一通りの説明を受けた後、岡村哲志・原発住民運動静岡連絡会事務局長のガイドで同じ展示物を見学し、職員のガイドでは聞けないさまざまな問題点が指摘された。参加した公害環境対策部員が視察内容を報告する。

保団連公害環境対策部
診療研究
発達障害児の早期発見・早期治療の重要性と
小児科の保険診療でできる限界
●高機能発達障害児を対象に早期診断早期治療を行う目的で、2013年に開院した小児リハビリテション科「家森クリニック」で行っていることについて紹介するとともに精神保健指定医・一般精神科医・小児科医による医療費の格差について言及し、今後の発達障害関連医療の充実にとって、特に早期治療の領域で小児科医の役割は大きいこと、小児科医が精神科を標榜しなければならない実情に対して保険医療の中での正当な配慮がほしいことを述べた。
家森百合子
多機能型精神科診療所のあり方
●多機能型精神科診療所に対し、「患者囲い込み」という批判がある。そのため当法人のデイケア、訪問看護、就労移行支援事業所における入口と出口を調査し、加えて地域生活支援センター、就業・生活支援センター等の関連機関の意見をアンケートで調査した。
●その上で本邦の「患者囲い込み」問題を歴史的に概観し、「囲い込み」は多機能型診療所の目指すところとは逆であることを論じ、最後に昨今の営利企業の福祉分野への侵出に抗していくことも多機能型診療所の一つの方向性であることを提案した。
丸井規博
シリーズ 心電図の生き字引
 診断の実際─17─
三原純司・関口守衛
文化
ドクターのつぶやき川柳 年間大賞

川端一歩
シリーズ
経営・税務誌上相談 440
休業保障給付金の支払い
益子良一
雇用問題Q&A 184
わがままな職員を退職させたい
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
書評
青木 理『 日本会議の正体』
太田志朗
VOICE
―2月号を読んで―
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内