●高齢者の貧困が広がっている。現役時代は真面目に働いて貯金もし、日本の経済・社会を支えてきた普通の人々が、医療保険や年金、介護制度、住宅政策といった社会保障の不備により「下流老人」に追い込まれているのである。姥棄て山に連れていかれるまでもなく、居ながらにして棄てられる─そんな現代の“棄老物語”をレポートする。
●貧困の実態や支援に関する提言、講演をする中で、「自己責任だから救済する必要などない」という批判や、「下流老人にならないために、どうしたらよいか」という質問を受ける。しかし、貧困は自己責任ではなく、この国の社会システムの歪みが生み出したものであり、下流老人にならない方法は、「下流老人を生み出さない社会」に変えることだ。
●国の長期債務は1053兆円。国債の積み上げは続いている。そのような財政状況を受けて、2013年8月6日に社会保障国民会議から政府へ報告書が提出された。そこでは給付の縮減と負担増を進めること、さらに公的制度の給付縮減のはざまを女性や退職後の高齢者の活用による地域の福祉力が埋めることが期待されている。2015年度の介護保険制度における新しい総合事業の導入や利用者負担2割の導入などは、報告書の延長線にある。さらに次期の2018年度改正においても、給付の縮減と負担の増が議論され、3割負担が導入されようとしている。このような状況の中で、改めて、介護保険は要介護状態にある高齢者が尊厳を持って暮らせるための仕組みとして機能するのか考察するものである。
●政府は医療をはじめとする社会保障費の削減を重点課題とした「経済・財政再生計画」を掲げ、生活保護者や高齢者など「弱い者」をターゲットに次々と切り捨てている。
●政府がうたう「負担の公平」が意味することは、すべて重い方に合わせた負担増であり、「世代間の公平」と言っては窓口負担増、「医療と介護の公平」「入院と在宅の公平」と言っては入院負担増を進めてきた。
●今後は高齢者だけでなく、あらゆる世代の負担増が計画されている。この動きを止めるため、保団連や多くの協会・医会が「今こそ ストップ! 患者負担増」署名に取り組んでいる。
■保団連公害環境対策部は2016年9月17日〜18日、浜岡原発の視察を行った。1日目は浜岡原発永久停止訴訟団の阿部浩基弁護士が同訴訟と情勢について講演し、アピール「浜岡原発廃炉と稼働中の原発停止・原発ゼロを求める」を採択した。2日目は、浜岡原子力館や浜岡原発5号機の防波壁、使用済み核燃料を運ぶ10q道路などを視察。移動の車中で「原発なくす静岡の会」の林克代表から再稼働をめぐる情勢と課題について報告があった。原子力館では職員から一通りの説明を受けた後、岡村哲志・原発住民運動静岡連絡会事務局長のガイドで同じ展示物を見学し、職員のガイドでは聞けないさまざまな問題点が指摘された。参加した公害環境対策部員が視察内容を報告する。