●世帯所得の減少が続き、明らかに暮らしが苦しくなっているのにもかかわらず、内閣府の国民生活に関する世論調査では、約9割もの人々が自分は中間層だと答えている。自分たちはなんとか「中の下」で踏みとどまっているのにという意識が社会的弱者に対する不寛容へとつながっている。人々が疑心暗鬼に陥り、犯人探しと袋だたきに血道を上げる「分断社会」は、「悲しい負の連鎖」をもたらしている。この分断を超えていくために、「財政」の原点に戻って日本社会をとらえなおし、問題点を整理した上で、いかに「分かち合い」の財政システムを再構築していくべきかを考える。
●日本社会の現状は、時系列的な変化でみても、国際比較でみても、多くの問題を抱えている。問題の中心は、生活の過酷さや不公平さ、精神的な閉塞感、そしてさまざまな差別や憎悪であり、これらは相互に密接に関連しあっている。
●その背景には、戦後日本社会に特有の社会構造である「戦後日本型循環モデル」を、90年代以降の破綻ののちも転換できていない政府・政治家の責任がある。これを広く人々の動きを通じて新たな社会モデルに組み替えてゆく必要がある。
●日本のみならず世界を震撼させた「津久井やまゆり園」大量殺傷事件から、間もなく1年が経過する。極めて特異な事件であるが、一方で事件と深く関係する優生思想は現代社会に深く根を下ろしている。
●事件の本質については、特異な側面と、特異さだけでは済まされない側面の2つの観点から迫るべきである。事件に向き合う手掛かりの1つに、国連が定めた障害者権利条約を挙げたい。不幸な事件を、社会のあり方を考える契機に、障害者政策の転機としていかなければならない。
●現在、西欧各国で右翼ポピュリスト政党と呼ばれる排外主義的な政党が勢力を拡大している。これらの党は、1990年代に社会保障改革に伴う歳出削減を受けて移民排斥による福祉の維持を主張して台頭した。
●近年では、ギリシア危機や難民危機を梃子に、EUへの批判を通じて、グローバル化の進展により不利な立場に追われる人々の支持を集めている。このような事態は、票の流出を恐れる主要政党の政策選択に影響を及ぼすことで、国内の宗教的・民族的な分断を促す恐れがある。
●多摩川の河川敷で暮らすある野宿者を“犬男爵”と呼び、単なる娯楽のネタとして利用するような番組が今年に入って放送された。その野宿者は筆者の知っている男性だった。本稿では、現地に行って確認したことをもとに何があったのかを考える。
●また、その番組とは真逆のアプローチで多摩川の野宿者に取材した小説『野良ビトたちの燃え上がる肖像』を執筆した経緯についてふれながら、〈偏見=心〉につくりあげた幻想の壁を越えることの必要性を考えていく。私たちが誰かを殺さないために。
◆ 長年にわたる低歯科医療費政策と、高い窓口負担による受診抑制・治療中断が歯科医療危機を一層
深刻化させ、歯科医療費のシェアは7%を切る過去最低の水準にまでに落ち込むに至った。
◆ 保団連では、2004年および2013年にそれぞれ「歯科医療改革提言―変革か衰退か―」、「歯科医
療改革提言・改訂版」を提案している。この中では、生涯にわたり自分の歯で食べられること、口腔
機能の保全・維持が全身の健康増進に寄与すると述べられ、そのためには、できる限り非侵襲的な
治療に徹することで、治療―再治療の連鎖を断ち切ることが、医療費の効率化に寄与するとしている。
◆ 機能を評価する歯科診療報酬体系の実現は現場からの願いでもある。私案を提示してみたい。
■公民権運動とベトナム反戦の1960年代の米国はもちろん、80年代のサッチャー時代の英国、ブッシュとブレアが大義無きイラク戦争を始めた2000年代半ばなど、人々が平和や公正な社える、精神を高揚させる、人々を団結させるといった必要とされる力があるからだ。最終回となる今回は、インターネットの活用で速報性を備えるようになったプロテスト・ソングを中心に紹介しよう。