戦後日本を代表する知識人の一人、加藤周一氏が青年時代に書いた大学ノートが没後に公開された。そこから、加藤氏が生涯にわたって追求した思想の原点が浮かび上がる。戦争に傾斜していく世の中を見つめながら、加藤氏が抱いた思いとは─。
●日本人の多くは、戦争の危険を感じている。戦争は、国の意志によって引きおこされる。すべての危険に対応できるほど無限の国力があるわけではない日本が考えるべきことは、力によって戦争を防ぐことよりも、戦争の原因となる対立の構造を把握し、それを和解によって解消する真の平和戦略だ。
●日本は2010 年代に入って急変しつつある。その中で、武器輸出三原則の放棄と防衛装備庁設置、さらに大学を軍事研究に追いやる危険性は広く知られていない。そうした政治・経済・社会・教育の軍事化がなぜ、いま進んでいるのかを、アベノミクスの破綻の原因とともに明らかにしてみよう。また、軍事力と軍事同盟に頼らない、真の安全保障の途がどこにあるのか探ることにしよう。
●世界で頻発する紛争、「テロ」、「対テロ戦争」は今後ますます頻繁に起こる。その背景には資源が枯する中で、ますます資源の争奪競争が激化しているという現実がある。世界中で土地収奪が起こり、市民活動家が殺害されているのも紛争のひとつの形である。米国と共同歩調で自衛隊の世界展開を進めようとする政府の政策の背景には、資源と市場を守るという経済的な理由がある。テロへの対応を名目に軍事化を進めることは、市民社会スペースが制限されることを意味する。南スーダンやアフガニスタンを切り口に、安倍政権の「積極的平和主義」とは違う本来の平和主義の道筋を提示する。
■生物は海で誕生し、その後上陸した。上陸には解決すべきことが多々あった。@乾燥の問題。体表を毛などで覆い乾燥を防いだ。体内受精や胎生により、乾燥しやすい小さな時期に、外気にふれないようにした。A水中と異なり重力が直接かかるため、骨格系を発達させた。B陸上の食物は消化しにくいため、咀嚼器や腸を発達させた。
■「陸の暮らしは大変なのであり、こうして存在していることだけでも、すごいことなのだ」という自覚は、精神の健康のためにも、もった方が良い。