パチンコや競馬に入れあげ、多重債務に陥ってしまう人々が後を絶たない。得てして、個人の意志の問題として片付けられてしまうが、その認識が本人の回復を遅らせ、周囲に多大なダメージをもたらし続けることになってしまう。まずは病気であるということを認識しなければ、根本的な解決に至らない。「ギャンブル依存症」とはどんな病気なのか。世界で突出して高いとされる日本人の有病率には、どんな背景があるのか。この問題に早くから取り組んできた帚木蓬生氏に聞いた。
(聞き手・構成:編集部)
●日本人男性のギャンブル依存症の比率は、国際的にみて突出して高いが、これはパチンコ/スロットという、法律上は賭博とされない「遊技」が広く浸透しているからだと考えられる。
●警察庁は、ギャンブル依存症対策として、射幸性を3分の2に抑える政策を採用したが、これは、射幸性の高さがギャンブル依存症を招くという前提に立っている。むしろギャンブル依存症は、パチンコ機の強い音響と光によるサブリミナル効果の蓄積による疑いがあり、この角度から生理学的な実証研究を行ってみる必要がある。
●IR(カジノ統合型リゾート)推進法が国会を通過したことから、にわかにギャンブル依存症問題が取り上げられていますが、この問題は社会の中で正しく理解されていません。「ギャンブル依存症」という病気についてもいまだに「楽してもうけようとしている」「意志が弱い」「甘えている」などと、個人の性格の問題と捉えられ、誤解や偏見に満ちています。
●本稿では、この病気の症状や、回復の道筋、当事者、家族、医療、自助グループそれぞれの役割について、当事者として体験を語ります。
●ギャンブル依存症は、国際的な精神障害の診断基準でもギャンブル障害(GD)という行動嗜として分類されるに至った。本稿では、脳画像研究におけるGDと物質依存の共通点を前半に概説する。また、ひと口にGD といってもさまざまなサブタイプが存在する。後半は、われわれの意思決定のパターンによるGD のサブタイプの同定やそれに基づいた脳画像研究の一例を紹介する。また、GDに特徴的な神経機構も存在し、特異な点、共通点の双方を理解した上で、新たな介入法の開発につなげていくことが期待される。
●小説『バラ色の未来』を執筆するにあたり、マカオに足を運んだ。誰もがハマるカジノの魔力とはどういったものか、そこでの体験をもとに感じたことを述べる。
●現在、日本ではIR(統合型リゾート)という名に隠されたカジノ解禁に向けた準備が進められている。カジノを成長戦略の産業に考えることの危うさや、ギャンブル依存症大国である日本でカジノ依存に制御がかけられるのか、といった問題について考えたい。
●地方経済衰退に直面する各地方でIR(統合型リゾート)型カジノによる地方経済再生への幻想が広がっている。内外の観光客がIR型カジノに押し寄せ、地方での周遊観光増大で地方全体の雇用、消費、税収が増大するという。
●しかし地方のIRに海外の富裕層ギャンブラーが押し掛けるというのは幻想であり、IRの収益エンジンとしてのカジノは地域住民のギャンブル漬けをもたらし、カジノ収益を基にしたIRの集客メカニズムは既存のホテルや飲食店、商店街の淘汰を促進する危険性が大きい。地域再生ではなく地域破壊をもたらす賭けに警鐘を鳴らす。
◆各地でなし崩し的に原発再稼働への動きが見られる中、新潟県では柏崎刈羽原発の再稼働を認めていません。福島原発事故から6年が経過しているのにもかかわらず、東京電力の隠蔽体質は改まることがなく、また、事故について十分な検証もされていないため、再稼働を認められるような状況ではありません。
◆現在、県では福島原発事故の検証を進めています。どのような手順を経て県知事として再稼働の可否について最終的な判断を下すのか、その理由と根拠についてご説明します。
■のっぺらぼうで頭がどこにあるのか分からない。脳もなければ、筋肉は体重の7%しかなく長く突き出た脚もない。なぜ、ナマコはそんなに不気味な生き物になったのか。そこには、不毛な「軍拡競争」にかかわることなく、天国のような暮らしを実現するための「知恵」があった。