●医科歯科連携の必要性が叫ばれて久しいが、現場での連携構築は難航している。筆者はその理由の一つとして、医科と歯科の相互理解不足があると考えている。そして、8年間の医科歯科連携活動を通じ、両者の断絶を結び得るものが、口腔感染症であることに気付いた。本稿では、筆者が体験した症例を通して口腔感染症の恐ろしさと、歯周基本治療による炎症消退がもたらす血糖改善効果について述べる。併せて、2016年に実現した糖尿病領域における医科歯科連携の大きな成果を紹介する。
●口腔領域はさまざまな皮膚疾患と密接な関係にあり、皮膚科医との連携が必要な病態は以下の3つに分類され、皮膚科医が歯科医に期待する役割は以下の通りである。第1は、扁平苔癬、自己免疫水疱症などの口腔粘膜病変の細胞診、粘膜生検などの検査と口腔ケアを含む局所治療である。第2は、掌蹠膿疱症、結節性紅斑などの皮膚疾患における歯性病巣感染の診断と積極的治療および皮膚科医と連携した経過観察である。第3は、異汗性湿疹、掌蹠膿疱症などの皮膚疾患における歯科、皮膚科の相互理解に基づく歯科金属アレルギーの診断と補綴物の交換などの対処である。
●歯が原因ではない“歯痛”を「非歯原性歯痛」といい、歯科医により不必要な抜髄や抜歯が行われてしまうことがある。同様に、他の医科的疾患が原因で顎の痛みや偏位が生じ、顎関節症のようにみえるものも数多く存在する。
●本稿では、非歯原性歯痛を生じ得る疾患として、群発頭痛、三叉神経痛、帯状疱疹、急性上顎洞炎、非定型歯痛を、顎関節症と誤認しやすい疾患として、咀嚼筋の痛みが主訴となる側頭動脈炎、大開口時に激痛を生じる舌咽神経痛について解説する。
●医科歯科連携により先制医療としての歯周病管理を行う必要がある。特に糖尿病の未病ステージである壮年期以前に糖尿病リスクを発見し医科歯科で継続管理を図るとともに、患者の健康意識を向上させることが重要である。糖尿病患者においては、歯周病を早期に発見し、口腔内感染病巣の除去と咀嚼機能回復を図ることが糖尿病のコントロールとプレフレイル状態である口腔フレイルの予防につながる。
●糖尿病と歯周病の医科歯科連携の意義としては、双方の疾患の未受診率および治療中断率を低減させ、医科歯科双方でライフコースとしての継続管理を図ることが、有病率を低下させる上でも医療経済的に優れていると考えられる。
●睡眠時無呼吸症候群(SAS)はありふれた疾患であるが、診断されていない患者が多く、口腔の観察から疑われる場合もあり、歯科が診断にも関わることができる。
●治療には医科で行う持続陽圧呼吸(CPAP)療法と歯科で行う口腔内装置(OA)による治療があるが、これはいずれかを選択するものではなく相補的なものであり、治療開始後も医科歯科の連携が重要である。
●歯周疾患などの口腔の炎症性疾患が動脈硬化と関係していることが米国などで報告されており、口の中の病気の予防が動脈硬化に関わる死亡のリスクを下げる方法の1つとなる可能性がある。しかし、本当に関連しているかどうか、また日本人ではどうかなど、まだ明らかにされていないことも多い。
●今回の研究では、「ながはま0次予防コホート事業」という大規模な疫学調査において、喪失歯数と動脈硬化との関連について検討した。喪失歯数と動脈硬化程度に有意な関連が見いだされた。また、女性に比べると男性でその傾向が強いことが明らかとなった。
◆初めから医薬分業ありきのヨーロッパから遅れること数百年。主に処方箋料アップという経済誘導でいきなり加速導入された日本の医薬分業は、特定医療機関依存の門前薬局と利益優先の株式会社型薬局によっていびつな発展を進めてきた。そのため、安全な医療に貢献するという本来の医薬分業の目的がゆがめられている。処方箋がすぐ近くの特定薬局で調剤される「点分業」の営業形態(門前薬局)は、特定の医療機関の処方箋に頼るという危険性がある。家の近くで行きつけの薬局、薬剤師を選ぶ「面分業」が本来の医薬分業の姿と言える。
■昆虫は、すべての動物種の7割を占めるほど種の数が多い、つまり成功している動物である。成功の秘密はクチクラの外骨格にある。防水効果の高いクチクラで昆虫は体を覆って上陸に成功し、軽量で丈夫なクチクラを用いて羽をつくって空を制覇した。
■飛ぶことは対捕食者対策にも、子孫を広くばらまく上でも大きな利点をもつ。昆虫は幼虫と成虫とで形を変え、幼虫は成長、成虫は生殖というように、暮らし方変えた。一生を切り分けるこのやり方は、高齢社会を生きる参考になるだろう。