2018・No.1253
月刊保団連 1
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巻頭写真特集
小林清親が見つめた文明開化
日野原健司
「道」
人々の生活困窮の原因を示し、打開する年に
住江憲勇
特集
笑いの効用
笑いの健康学
 ─ノーマン・カズンズから日本笑い学会まで

●筆者が笑いと健康をテーマに取り組んで30年余りとなる。1992年に「がん患者の生きがい療法」を提唱した伊丹仁朗医師らとともに、吉本新喜劇を見て3時間大笑いすると免疫力が活性化することを日本心身医学会で発表。笑いの医学効用を日本で初めて科学的に証明し、研究の先鞭をつけた。
●本稿では、筆者の研究成果を含め、これまで国内外で取り組まれてきたユニークな研究事例や、大笑い健康法の医学史、そして戦前に慰問団として笑いを中心とした部隊が戦地で活躍したことなどを紹介し、笑いの効用を考える。

昇 幹夫
病院を明るくするユーモア術
●厳しい医療事情の中で、日々忙しく働いている医療従事者は大きなストレスにさらされている。その結果、バーンアウトする医療者もある。そのような状況下で、スタッフのストレス緩和にユーモアを導入する試みを実践してきた。ホスピスケアに導入したユーモアを中心に「病院を明るくするユーモア術」について述べてみたい。
柏木哲夫
医者の「お説教」はなぜ通じないのか
 ─落語から考える笑いと健康教育
●私、立川らく朝は「笑いと共に健康情報を提供する」をコンセプトに、健康落語とヘルシートークというオリジナルの新分野を開拓、全国で公演をしています。その健康落語の誕生のエピソードを語ると共に、落語が人々に与える癒しの力、その原動力についても解説。同時に、健康教育における笑いの効果などについても、らく朝の活動経験を踏まえながらエッセイ風に語ります。
立川らく朝
笑いと子どもの健康
 ─妊娠中、育児における笑いのすすめ

●これまで多くの笑いの医学的研究が行われてきたが、子どもの健康に関する笑いの研究は少ない。そこで、本稿では、胎児、乳児そして大人へと成長していく子どもの笑いについて医学的検討を試みた。それは妊婦が落語で笑った時の胎児、育児中の母親の笑いと乳児、笑いが予防接種の痛みを軽くできるかについての検討である。その結果、母親の笑いは胎教および子育てによいこと、また笑いは予防接種の痛みを少し軽減出来ることが示され、子どもの健康における笑いの医学的効用が確認された。

松本治朗
悲劇を乗り越える「笑い」の力
 ─歯科医ブーテンから始まる沖縄の笑いの系譜

●沖縄の現代史は悲劇の連続である。その苦しみは今も続いている。だが沖縄人は、どんなつらいときでも、決して笑いを忘れない。筆者が企画・脚本・演出を担当したNHK−BSハイビジョン特集「笑う沖縄!百年の物語」(2011年放映)では、「沖縄のチャプリン」とよばれた天才芸人・小那覇舞天、こと「ブーテン」とその弟子たちを取り上げた。本稿では、この番組制作を通して見えてきたブーテンの生きざまを紹介し、沖縄の笑いの系譜をたどるとともに、今日本から失われつつある笑いの力について考えたい。

貴志謙介
診療研究
「認知症と共生する社会」に“逆走”する「改正」道路交通法
●2017年3月から道路交通法が改正され、「認知症のおそれ」の人が認知症疾患医療センターやかかりつけ医を訪れるようになった。これにより多くの人が医師の診断書のみで運転免許の取り消し・停止となり得る。医師自身が、引きこもり・通院困難・生活困難者を作り出すことに加担しかねない。本来、認知症と車の運転可否は独立した概念である。高齢者の交通事故防止では認知症診断以上に、車やシステムの技術革新・充実した実車テスト・限定免許・高齢者自身の自主規制等、行うべき対策が存在する。医師に責任を押し付ける今回の「改正」は再考すべきである。
堂垂伸治
超高齢社会における歯科の緊急課題
根面う蝕への対応(3)
●高齢者の歯肉は退縮している症例がほとんどで、根面う蝕の他に知覚過敏を発症する場合が多い。
●高齢者の20%以上が歯根露出に象牙質知覚過敏症を発症しており、象牙細管の大部分が開口して、一過性の鋭い痛みが生じる。
●知覚過敏の治療には、知覚過敏用歯磨剤を用いるホーム・ケアと、歯科医院で知覚過敏抑制剤を塗布するプロフェッショナル・ケアとがあり、両者の併用が効果的である。
吉山昌宏
文化
医学史の散歩道 外科が「ソト科」だった時代
第3回 全身麻酔の発見

■前回までに、近代以前の外科系の医療が身体の外面のみを対象とした手仕事であり、それを担当する者も聖職者などの「長衣の医師」からは見下される床屋医者などの「卑しい職人」あるいは「短衣の医師」であったことを述べてきた。瀉しゃけつ血や抜歯から四肢の切断手術にいたる観血的処置が、患者にとって多大な苦痛を伴うものであったことでも、外科系医療は極めて野蛮な行為と見なされてきた。
■ そこで今回は、近代外科に「夜明け」をもたらした「麻酔」の発見について述べることにしよう。

笠原 浩
まなざしの力
第1回 カズオ・イシグロ 静かな光

 テレビディレクターという仕事を続けて27年がたつ。ここ15年は、ドキュメンタリーというジャンルで世の中を見つめようとしている。私の作品の特徴は人に密着し、深くその人の世界を描こうとする「ヒューマンドキュメント」である。取材と撮影を進めていく中、内外でさまざまな人々と触れてきた。そのたびに心に刻まれたのが、被写体の方たちのまなざしの力だった。
 怒りに満ちた目、慈愛の目、悲しみの目。眼にたたえられた色はさまざまだった。私の出会った人々のまなざしの魅力とその世界を新たな連載としてつづらせていただく。

渡辺 考
逆風に抗う歌声 UK 編
最終回 問われる英国の底力

■前回、紹介したように、97年に政権を奪還した労働党のロック世代の首相、トニー・ブレアは、大きな期待をかけられながらも、そのニュー・レイバーと称した中道的な路線は結局のところ保守党の政策とあまり変わらないと批判され、ブッシュ政権の米国に同調してイラク侵攻に踏み切ったことで人気も地に落ち、07年に辞職。10年には保守党が第3の党自由民主党との連立で政権を取り戻した。ブレアへの大きな失望は、政治への無関心をもたらしたようで、00年代末までには政治社会問題を歌うアーティストやバンドの存在が目立たなくなってしまった。だが、そんな状況がこの数年でまた変わり始めている。

五十嵐正
シリーズ
経営・税務誌上相談 449
不服申立制度
益子良一
雇用問題Q&A 193
パート職員が有給休暇を請求してきた
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
文化・交流 各地の文化活動 
温かい雰囲気で幅広い音楽を楽しむ
 石川/ドクターズ・ファミリー・コンサート
保団連文化部長 山本晴章
VOICE
―11月号を読んで―
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内