●筆者が笑いと健康をテーマに取り組んで30年余りとなる。1992年に「がん患者の生きがい療法」を提唱した伊丹仁朗医師らとともに、吉本新喜劇を見て3時間大笑いすると免疫力が活性化することを日本心身医学会で発表。笑いの医学効用を日本で初めて科学的に証明し、研究の先鞭をつけた。
●本稿では、筆者の研究成果を含め、これまで国内外で取り組まれてきたユニークな研究事例や、大笑い健康法の医学史、そして戦前に慰問団として笑いを中心とした部隊が戦地で活躍したことなどを紹介し、笑いの効用を考える。
●これまで多くの笑いの医学的研究が行われてきたが、子どもの健康に関する笑いの研究は少ない。そこで、本稿では、胎児、乳児そして大人へと成長していく子どもの笑いについて医学的検討を試みた。それは妊婦が落語で笑った時の胎児、育児中の母親の笑いと乳児、笑いが予防接種の痛みを軽くできるかについての検討である。その結果、母親の笑いは胎教および子育てによいこと、また笑いは予防接種の痛みを少し軽減出来ることが示され、子どもの健康における笑いの医学的効用が確認された。
●沖縄の現代史は悲劇の連続である。その苦しみは今も続いている。だが沖縄人は、どんなつらいときでも、決して笑いを忘れない。筆者が企画・脚本・演出を担当したNHK−BSハイビジョン特集「笑う沖縄!百年の物語」(2011年放映)では、「沖縄のチャプリン」とよばれた天才芸人・小那覇舞天、こと「ブーテン」とその弟子たちを取り上げた。本稿では、この番組制作を通して見えてきたブーテンの生きざまを紹介し、沖縄の笑いの系譜をたどるとともに、今日本から失われつつある笑いの力について考えたい。
■前回までに、近代以前の外科系の医療が身体の外面のみを対象とした手仕事であり、それを担当する者も聖職者などの「長衣の医師」からは見下される床屋医者などの「卑しい職人」あるいは「短衣の医師」であったことを述べてきた。瀉しゃけつ血や抜歯から四肢の切断手術にいたる観血的処置が、患者にとって多大な苦痛を伴うものであったことでも、外科系医療は極めて野蛮な行為と見なされてきた。
■ そこで今回は、近代外科に「夜明け」をもたらした「麻酔」の発見について述べることにしよう。
テレビディレクターという仕事を続けて27年がたつ。ここ15年は、ドキュメンタリーというジャンルで世の中を見つめようとしている。私の作品の特徴は人に密着し、深くその人の世界を描こうとする「ヒューマンドキュメント」である。取材と撮影を進めていく中、内外でさまざまな人々と触れてきた。そのたびに心に刻まれたのが、被写体の方たちのまなざしの力だった。
怒りに満ちた目、慈愛の目、悲しみの目。眼にたたえられた色はさまざまだった。私の出会った人々のまなざしの魅力とその世界を新たな連載としてつづらせていただく。
■前回、紹介したように、97年に政権を奪還した労働党のロック世代の首相、トニー・ブレアは、大きな期待をかけられながらも、そのニュー・レイバーと称した中道的な路線は結局のところ保守党の政策とあまり変わらないと批判され、ブッシュ政権の米国に同調してイラク侵攻に踏み切ったことで人気も地に落ち、07年に辞職。10年には保守党が第3の党自由民主党との連立で政権を取り戻した。ブレアへの大きな失望は、政治への無関心をもたらしたようで、00年代末までには政治社会問題を歌うアーティストやバンドの存在が目立たなくなってしまった。だが、そんな状況がこの数年でまた変わり始めている。