開業医師・歯科医師の過酷な労働状況
●医療従事者は過酷な労働状態に置かれている。医師・歯科医師の労働時間は一般勤労者より長い。中には過労死ラインの80時間以上の時間外労働になる者もかなりいる。女性医師・歯科医師は産前産後休暇も十分には取得できない。このような働き方はもう限界に近く、医療崩壊を招きかねない状態である。
●培ってきた安心で良質な医療を今後も保障するためには、社会保障費削減をやめ、医療従事者の労働環境を改善する必要がある。
齊藤みち子
勤務医の働き方の現状と改善への道
●医師の過労死が社会問題となって久しいが、多くの病院管理者は勤務医を労働者とみておらず労基法は守られていない。勤務医労働実態調査2017では当直問題を中心とした長時間労働は改善せず業務負担が増えている
●解決には客観的な時間管理が重要であり、絶対的医師不足の解消、地域別・診療科別の必要医師数の調査と対策が急がれる。また、適切な診療報酬が不可欠である。
植山直人
「医師の働き方改革」の経緯と論点
●医師の働き方改革に向けて、厚労省の有識者検討会は今年度末をめどに報告書をまとめる予定である。検討会での議論の柱は、「医師の時間外労働の上限規制」と「医師の勤務環境改善策」。
●「医師の働き方改革」はそれ自体にとどまらず、今後の地域医療のあり方、医療の質や医療安全にも影響する。厚労省で別途議論が進んでいる医師の需給や「偏在」是正策、診療報酬のあり方とも密接に関係する。有識者検討会でどのような議論がされているか、経緯と論点を素描した。
工藤光輝
医療現場におけるマタハラの実態
─低診療報酬と人手不足の解消を
●必要な治療体制や実態に見合う診療報酬が実現しないため、多くの医療現場で慢性的な人手不足に陥っている。
●マタニティハラスメントや妊娠解雇、つわりがひどくても夜勤・ロング日勤を強要されたり、歩合制や1人医師体制で休めなかったりと、女性医療職を取り巻く状況は深刻だ。
●育児中も夫の協力が得られずパートや臨時職員として勤務することを余儀なくされ、キャリアを積むことが困難になっている。
小林美希
子育て中の医師を支援する熊本県の取り組み
●熊本県の女性医師の割合は40歳未満では30%を超えているが、活躍できる場は制限されている。ライフイベントにより変化する女性医師のキャリア支援は医師全体の労働環境を改善するためにも喫緊の課題であり、熊本県では5つの組織で連携し「CLOVERの会(熊本県医療人キャリアサポートの会)」を立ち上げた。@復職支援A短時間勤務B育児支援Cメンター制度Dセミナー(啓発活動を5つの柱として各組織が分担して活動しており、それぞれの支援内容を紹介する。
後藤理英子
反核医師の会30年の歩み
2007年以降を中心に─
◆核戦争に反対する医師の会が第1回のつどいを開催してから30年が経過した。その2017年は、歴史的な年となった。7月には国連で「核兵器禁止条約」が採択され、その中心となって活動してきた団体「ICAN」(反核医師の会もそのサポーター団体の1つ)がノーベル平和賞を受賞した。本稿では反核医師の会の20年から30年の活動についてまとめた。2011年の東日本大震災と福島第1原発事故への対応も含め、核兵器の廃絶を目指し、引き続き活動を進めていきたい
中川武夫
糖尿病と全身疾患における医科歯科連携の取り組み(上)
●糖尿病人口は1000万人に達したが、高齢者ほど糖尿病比率が高くなる。高齢者では「老年症候群」や「フレイル」を伴いやすいが、口腔機能障害も深く関与する。咀嚼の不必要な食事摂取、高脂肪食、単純糖質食、低食物繊維食、夜遅い食事、朝の欠食、生活リズムの狂いは生活習慣病を引き起こす。健康を維持し、理想的な生活習慣病の食事療法を行うためには咀嚼機能の保持は絶対条件となる。それを損なう歯周病は口腔局所の病気であるが、種々要因から全身に悪影響を及ぼす。
栗林伸一
埋伏智歯の正常萌出例と正常智歯の埋伏例
●一般に、水平埋伏した智歯が正常なかたちで萌出する可能性は多くはないと思われる。
●当院の開業以来33年間で1万9976名の患者が来院したが、その内確認できただけで8例の埋伏智歯が正常萌出し、逆に正常な向きの埋伏歯が水平になり下方へ沈潜していく1症例が存在したその経過を報告する。
永野伸一
医学史の散歩道 外科が「ソト科」だった時代
第4回 麻酔の普及と功罪
■1846 年のモートンによる全身麻酔の公開実験の成功は、それまでは「夢」にすぎなかった無痛手術が現実のものであることを明確に示した。
笠原 浩
雇用問題Q&A 194
新人の女性看護師が、つわりがひどいという理由で勤務時間の短縮を要求してきた
曽我 浩
書評
マイケル・マーモット著『健康格差 不平等な世界への挑戦』
平田米里
高橋幸美、川人博著『過労死ゼロの社会を』
粥川裕平