禁煙外来における患者のサポート
●禁煙外来において患者をどのようにサポートしているかについて自らの経験をもとに述べる。禁煙外来にやってくるのはニコチン依存症という難治だが完治できる疾患の患者であり、その治療には単に薬の処方だけではなく、心理的依存へのアプローチが必要である。禁煙治療に必要なスキルや参考になる書籍について紹介し、日頃の診察での工夫、精神疾患患者、若年者の禁煙治療、受動喫煙症などについても触れ、禁煙治療、喫煙対策のやりがいについてお伝えしたい。
山代 寛
タバコと口腔の健康
●喫煙において口腔は主流煙に直接暴露される器官であり、歯科二大疾患であるう蝕(むし歯)と歯周病を始めとする口腔疾患と喫煙の関与について、これまで多くの関心が寄せられてきた。厚生労働省の検討会により、喫煙との因果関係を支持する十分なエビデンスがあると判定された口腔・咽頭癌と歯周病、また因果関係が示唆されていると判定されたう蝕と歯科口腔インプラントの失敗および歯の喪失について、検討会の報告書を基に触れてみたい。
山田洋孝
新型タバコに「煙害」はないのか
●従来の紙巻きタバコに代わり、加熱式タバコや電子タバコといった新型タバコに注目が集まっている。「煙が出ない」「においが少ない」「部屋の空気を汚さない」ことをうたっているが、実際には、発がん物質や刺激成分を含むエアロゾルが空気を汚染し、現状の分煙方法では完全には受動喫煙を防げない。「ニコチンを含まない」はずの電子タバコでも、微量ながらニコチンを含む製品が半数近くを占め、また禁煙を目指す段階としても有効性は低いことが明らかになった。
堀米香奈子
緑タバコ病に苦しむ子どもたち
●たばこの原料となる葉タバコは、世界120カ国以上で栽培されているとされる。途上国を中心に、貧困のため少なからぬ児童が栽培や加工などの労働に従事しており、皮膚接触を通じてニコチンを体内に取り込むことから起きる頭痛や吐き気などの「緑タバコ病」に苦しんでいる。国際的な大手たばこ会社は児童労働の撲滅に取り組むが、一朝一夕には改善されず、たばこ産業が不条理な児童労働を前提に成り立っている現実は否めない。
吉富裕倫
精神科病院における禁煙推進に慎重な配慮を求める
●近年、精神科病院でも禁煙が推進されるようになり、敷地内禁煙を実践している病院からその有益性が数多く報告されている。また禁煙によって症状が悪化することはないとする報告も多い。しかし、ただでさえ強制入院や行動制限を伴う精神科で禁煙を強いることは、基本的人権に照らして問題はないだろうか。また、本当に禁煙によって病状が悪化する患者はいないだろうか。本稿ではこれらの問題について検討し、敷地内禁煙に対する慎重な姿勢と再考を求める論拠を述べる。
横田 泉
2018年度診療報酬改定に関する医科談話
※2018年3月1日発行の本誌でタイトルに誤りがあり、訂正しています。
武村義人
熊本地震から学んだ安心・安全な避難生活のための提言
◆熊本県保険医協会女性医師部会は、2016年の熊本地震を受け、避難生活について、女性の視点から問題点を把握し、改善につなげようと、弁護士など女性の専門職とともに議論を重ねてきた。
◆内閣府の「平成28年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書」(2017年4月)でも触れられていない、または不十分な事項を中心に、@避難所の運営、トイレの問題、支援物資、母子の問題、情報・コミュニケーション・メンタルケア、性暴力被害、口腔ケア・衛生について提言をまとめた。
板井八重子
原因と目標としての寝相(上)
〜睡眠態癖と低位舌が不正咬合の主因、仰向け寝で健康に
●不正咬合はおおよそ寝相の問題である─これが21世紀初頭からT4K(The Pre-Orthodontic Trainer For Kids)等の口腔内筋機能装置(以下「装置」)を使ったMFT(oral myofunctionaltherapy 口腔筋機能療法)で少なからぬ患者さんを拝察してきた筆者の結論である。換言すれば「歯並び(以下「歯列咬合」)の良し悪しは寝相の良否で決まる」故に「不正咬合治療の第一歩は寝相改善から」ということである。
福岡 雅
糖尿病と全身疾患における医科歯科連携の取り組み(下)
●糖尿病人口は1000万人に達したが、高齢者ほど糖尿病比率が高くなる。高齢者では「老年症候群」や「フレイル」を伴いやすいが、口腔機能障害も深く関与する。咀嚼の不必要な食事摂取、高脂肪食、単純糖質食、低食物繊維食、夜遅い食事、朝の欠食、生活リズムの狂いは生活習慣病を引き起こす。健康を維持し、理想的な生活習慣病の食事療法を行うためには咀嚼機能の保持は絶対条件と
なる。それを損なう歯周病は口腔局所の病気であるが、種々要因から全身に悪影響を及ぼす。
栗林伸一
医学史の散歩道 外科が「ソト科」だった時代
第5回 感染との闘い
■百数十年前までは、すべての創傷は化膿するのが当たり前で、それは正常な治癒過程の一部として不可避的なものと考えられていた。例えば、近代以前の西欧で「準聖典」と見なされていたガレノスの医学書には、創傷の治癒過程では栄養の体液である血液が身体に使われて膿に変わるのであり、化膿は傷が治りかけている徴だとの記述がある。
■手術創も例外ではなく、しばしば化膿した。麻酔の発見と普及による外科手術の急激な増加は、手術熱と呼ばれる術後感染による死亡例の増加に直結してしまっていた。今回は、医療の場で感染防止に真摯に取り組んだ先人たちの苦闘について、話を進めよう。
笠原 浩
雇用問題Q&A 195
契約更新を繰り返してきた期間職員の無期転換への対応
曽我 浩