地域ケアをどう構想するか
●政府が進める「地域包括ケアシステム」は、ケア論が不在であり、介護保険制度は「必要充足原則」に従って抜本改革する必要がある。筆者は、生活者を中心に据え、住み慣れた居住空間で、医療や介護サービス、生活援助の多様なケアを受ける地域ケアシステムを提起している。その基盤となるのは経済的保障と居住の保障であり、これを政策的に確立する必要がある。システム構築の重点課題として、「アウトリーチ」の整備と、地域ケアに向かう歯科診療所を後押しする診療報酬体系づくりが挙げられる。
岡ア祐司
地域包括支援センターの機能
─ 支援に拒否的な高齢者像とそのような高齢者への働きかけ方
●本稿では地域包括支援センターの機能と、支援に拒否的な高齢者像、そしてそのような高齢者への働きかけ方について論じた。地域包括支援センターは、担当圏域の高齢者の支援に責任を負うので、客観的に支援の必要性があると思われるものの、支援に拒否的な高齢者が発見された場合、アウトリーチして専門的な支援を行う。地域包括支援センターの職員は、支援に困難さを感じつつ、出かけていき、ニーズを見極め、サービス利用につなげている。医療機関との連携の重要性が示唆された。
福島喜代子
診療所で出合う複雑事例にどう向き合うか
●社会構造、疾病構造の変化を背景に、多職種連携が不可欠な複雑事例が増えている。複雑性は必ずしも診断に相関するものではなく、複雑事例を記述するための理論的枠組みが必要となる。そのアプローチとしては、関連する多職種で関わりつつ、「問題解決」から「安定化」を目指すことにシフトチェンジすることが重要となる。援助者としてのバランスを保ちつつ、包括的ツールを実践に応用するなど試みつつ、タフなチームとして取り組みたい。
朝倉健太郎
白山ろく地域の地域包括ケアを考える
─ 地域包括支援センターの役割
●2017年4月より、地域包括支援センターの事業を開始し、地域の住民から高齢者の運転や医療・介護などのさまざまな相談を受け付けている。そのさまざまな相談に対して支援するに当たり、見えてきた地域の現状や課題を整理するとともに、これからの白山ろく地域の「地域包括ケア」について考えたい。
福田正成
ホームヘルパーの生活援助は単なる家事代行ではない
●要支援、要介護1・2認定者を「軽度者」として「生活援助」は介護保険給付の必要なしとして扱う動きがある。介護ビジネス業界では生活支援分野の拡大が見られ、ヘルパーの生活援助の有用性について問われている。
●京都ヘルパー連絡会は要支援と要介護1・2の認定者の調査を行っている。調査から見えたのは、「軽度者」といわれる人々のギリギリの生活実態でありヘルパーの生活援助の有用性であった。ホームヘルプの現場からその内容と課題を報告する。
浦野喜代美
「福祉マップ」で「福祉アップ」を
●石川県保険医協会が1988年から出版している「福祉マップ」は、@医療者、福祉の専門家、市民にとって簡易で分かりやすい手引き書として、A福祉施策の発展・向上のための提言書としての2つの役割を持っている。福祉マップの目的と編集方針について紹介し、福祉マップの活用の実際と、各協会で取り組む意義を述べた。さらに石川県保険医協会でのあるべき地域包括ケアへの取り組みについて紹介している。
大川義弘
福岡県保険医協会・医師の健診受診に関する会員調査2017
低い医師のがん検診受診率/「時間がない」6割、「代診いない」4割
◆福岡県保険医協会の会員医師の健診受診状況調査を実施した。有効回答率は15.6%であった。
◆血液検査や胸部エックス線検査、心電図は毎年受診している医師が多かった。一方、がん検診は「患者さんに進めている受診頻度」と比べ、「医師本人の受診頻度」は大きく低下しており、医学的知識と受診行動に差が認められた。
◆健診を受けにくい理由としては6割の医師が「時間がない」を挙げ、4割が「代診がいない」と回答した。また健診を適切に受けるためには6割が「日曜日の健診」が必要としていた。
田村昭彦
がん患者の緩和医療における地域連携
─東名古屋在宅医療懇話会を通して
●がん患者の緩和医療目的の連携は、多角的な視点(治療内容・病状変化・最期の過ごし方・患者家族の考えや希望等)から捉えた情報を、適切な時期にシームレスな内容で伝える必要がある。そこで、「緩和ケア情報共有ツール」を、東名古屋在宅医療懇話会を通して院内・院外の多職種で検討を行い、2015年11月より運用を開始している。今回は、「緩和ケア情報共有ツール」の検討過程・課題・評価をまとめ、さらに具体的な症例も提示する。
井戸智子
医学史の散歩道 外科が「ソト科」だった時代
第6回 近代外科の夜明け
■1860〜70年代、微生物の自然発生説がパスツールによって完全に否定され、それまで不可避的なものだと考えられていた創傷の化膿が石炭酸などの殺菌剤を適切に使用すれば防止可能になることを、ジョセフ・リスターの「制腐手術」が実証した。
■麻酔法、そして制腐法から無菌法へと進化していった感染防御法の確立と普及によって、かつては殺人的な行為とまで恐れられていた開腹手術などの安全性も高まった。
笠原 浩
雇用問題Q&A 196
10日もの連休を希望されたら、与えなければならないか
曽我 浩
書評
兵庫県保険医協会編著
『口から見える貧困 健康格差の解消をめざして』
佐々木典彦