2018・No.1270
月刊保団連 5
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「道」
自民改憲案と外交のあり方を問う
亀井久興
特集
「住まい」が育む健康と福祉
「居住福祉」による健康増進

●本稿は、住まいと健康に関わる論点を整理し、健康増進に深く関わる「居住福祉」の意義を示すことを目的としている。医療、空間、社会機能や政策など多くの要因が健康に影響するが、それらを総合的に捉えるには「居住」という発想が有効で、居住福祉の実現が健康を増進する。本稿は、第1に健康を蝕む現代日本の居住問題、第2に健康と居住の関わりとその変化、第3に健康増進と居住の新たな論点、第4に健康を増進させるための「居住福祉」の位置付けを示す。

岡本祥浩
災害によって顕在化する「住まい」の問題
●被災者の生活再建を尊重した、国・県・自治体レベルごとの復興プランの作成が急がれる。例えば、@隣近所のコミュニティの維持、A「仮設」ではなく、住み続けることのできる住宅、Bそして生活費を自分で稼ぐ雇用の場、C災害弱者の避難所生活、仮設住宅、復興公営住宅での生活支援相談の常設が必要である。
●被災地は過疎化や少子高齢化が進んだ地域が多く、就労支援と住まいの保障の他に、医療・福祉・介護サービスと健康のヘルスケアの整備が不可欠である。
野口定久
若年層にも広がる「住まいの貧困」
●2000年代に入り、労働法制の規制緩和によって非正規雇用が拡大し、20〜30代のワーキングプアの若者の中から、安定した住まいを失い、ネットカフェ等での生活を余儀なくさせられる人が増えてきた。東京都の実態調査では、都内の「住居喪失者」は約4000人と推計されており、その半数は若年層である。また、住宅確保のハードルが高いために親元から離れられない若者も多い。こうした「住まいの貧困」を解決するためには、住まいにまつわる自己責任論を克服し、住宅政策を転換する必要がある。
稲葉 剛
縮小社会を乗り越えるための「住まい方」の転換

●郊外庭付き一戸建てなどの、持家の住宅ばかりで町をつくるという、画一的な住宅整備によって、いびつな年代構成の地域が増加しており、それらを背景に単身高齢者や孤独死問題といった、少子高齢社会にまつわる課題が、リアルな社会問題になりつつある。本稿では、こうした社会問題が特に、都市郊外のニュータウンや団地で集中的に起きている背景をひも解きつつ、その原因を探り、地域包括ケアシステムという出口に向かって、住まいや住まい方をどのようにつくり変えていけばいいのかを考える。

大月敏雄
論考
空き家問題の現場から
◆空き家の急増が問題とされ始めて以降、解消への様々な方途が探られてきた。ここでは空き家発生の要因、利活用を阻む障壁について概説した上で、現在行われている多様な利活用に共通する地域のためという観点に触れ、空き家の活用が住まいへの意識や暮らし方、働き方にも影響を与えていることを見ていく。また、今後問題になりそうなマンション、公共施設などについても触れる。
中川寛子
いち当事者から見た介護と年金の諸問題
◆私見によれば、歴史的にも理論的にも、国民の貧困化を表す最大の指標は、受救貧民=「生活保護受給者」数である。これが高齢世帯において際立って増加している。その一方で預貯金の格差も拡大している。保護基準未満の中で受給者が占める比率=捕捉率は十数%に過ぎない。高齢者の貧困と格差の拡大は、非正規低賃金労働者が現役の4割に達し、結婚ができないか、子どもを持てない若年世代の増大と格差の拡大として世代的に再生産され、高齢者を扶養するどころではない状態である。むしろ年金世代が若い世代を扶養する逆扶養も増えている。つつましくても「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を保障することが、国民生活保障の緊急課題である。
相澤與一
診療研究
慢性腎臓病(CKD)を透析に移行させないための工夫
─ 43年間の経験から
●1974年、「透析の患者さんは気の毒」との思いから、透析を回避しようとする慢性腎臓病保存療法(保存療法)を始めた。現在の通院数は850人程度、ほぼ全国から見えている。保存療法の医療費節約効果は大きく、茨城県民を対象とした調査で3億5000万円が節約された計算である。
●2013年春からの「瞑想」開始は保存効果が大きく、あと2年もすれば良い成績が得られるであろう。また世界でみると、透析という治療法があることを知らずに死を迎える人がほとんどである。保存療法はコストが低く、世界への処方箋として広める必要があり、さらに精進を続ける。
椎貝達夫
原因と目標としての寝相(下)
〜睡眠態癖と低位舌が不正咬合の主因、仰向け寝で健康に
●「実は、寝相で決まる歯並び」本論要旨はこの言葉に尽きる。仰向け寝だけが身体・骨格の捻れと歪(いびつ・ひずみ・ゆがみ)と睡眠態癖を生まない。不正行動が歪咬合としての不正咬合に至る。睡眠態癖は不正咬合や顎関節症だけでなく、開口から来る低位舌・口呼吸・口腔乾燥を招き、ひいては口から全身の健康悪化につながると筆者は考える。図らずも今回の診療報酬改定で口腔機能発達不全症とそれに対する小児口腔機能管理加算が認められたが、寝相改善指導無しの管理では目標達成は覚束ないであろう。
福岡 雅
シリーズ 続・心電図の生き字引
診断の実際─4─
北島 敦
文化
島旅のススメ
第1回 小手島・手島・広島

■旅行といえば、ついつい名の知られた観光地ばかりを考えてしまうが、旅行者にとって非日常を感じられるような瞬間はどれだけあるだろうか。実は、意外と知られていない離島こそ、画一化の波をこうむっておらず、日常を忘れさせてくれる魅力的な出会いがあるのだ。日本国内に約420もあるといわれる有人離島のうち南鳥島以外は全て踏破した筆者が、選りすぐりの魅力的な島々を紹介する。今回は、瀬戸内海に浮かぶ小手島・手島・広島の旅に出かけよう。

斎藤 潤
まなざしの力
第5回 後藤文雄 父なるまなざし

渡辺 考
シリーズ
経営・税務誌上相談 453
中小企業投資促進税制
益子良一
雇用問題Q&A 197
働き方改革の「同一労働同一賃金」での医療機関の対応
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
書評
山口研一郎『高次脳機能障害 医療現場から社会をみる』
橋本圭司
戸塚芳子文・マンガ、細部千晴監修『マンガで「あるある!」パパ・ママ⇔じいじ・ばあばの子育てギャップこれで解決』
佐々木典彦
VOICE
─3月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内