2018・No.1271
月刊保団連 6
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「道」
未曾有の災害に突き動かされた人間の本能
和合亮一
特集
国家財政と医療・社会保障
─消費税10%を前にして
社会保障財源と負担のあり方
 ─ 税制改革と社会保険改革の方向

●安倍政権のもとで社会保障削減が加速し、消費税増税がもくろまれているが、消費税は逆進性が強く、社会保障の財源として最もふさわしくない。
●憲法の応能負担原則に基づき、所得税や法人税の累進性を強化し、大企業や富裕層への課税を強化する税制改革が必要である。
●社会保険料についても、減免範囲の拡大や被用者保険の標準報酬等の上限を引き上げるなどの改革により、社会保障財源を確保すべきである。
●医療関係者も、社会保障削減に反対すると同時に、財源確保も含めた広く合意できる対案を提示する取り組みを強化すべきである。

伊藤周平
日本の財政を見る視点
●わが国の財政が急速に債務を累増させ、深刻な財政難に直面していることは事実であるが、社会保障費を削減し、消費税を増税することで収支のつじつまを合わせれば問題が解決するわけではない。経済と財政は不可分の関係にあり、両者の再生は新自由主義とは異なる構想に基づいて進められなければならない。普遍主義に基づく生活保障システムの確立、経済・財政システムの改革、新しい財源構想に基づく税制改革を一体的に実行に移すことが求められる。
鶴田廣巳
消費税増税で景気低迷、暮らし厳しく
●消費税は「応能原則」に反するなど問題の多い税制である。その消費税を中心とする消費課税が最も大きな税収項目となっている日本の税制は根本から見直すべきである。
●日本経済は長期低迷状態に陥っている。そこからの脱出を目指したアベノミクスは失敗だった。
●そうした状況下での消費税増税は日本経済の低迷をさらに長引かせ、人々の暮らしをさらに厳しする。消費税増税はやるべきではない。
山家悠紀夫
ゼロ税率の実現を
 医療の「損税」抜本解決に向けて

●政府は2018年度税制改正で医療の消費税「損税」問題について抜本的な解決を図るとしており、今夏以降は「損税」問題の解決に向けた山場となる。政府の医療費抑制策のもとで厳しさを増す医療機関経営にとって、消費税「損税」の解消は切実な問題だ。医療の消費税を「真の非課税」としていくためには、「損税」を患者の負担に転嫁することなく解消することが求められる。そのためには「ゼロ税率(免税)」による解決が最も適切だ。改めて医療機関で「損税」負担が発生する仕組みと、これまで行われてきた診療報酬による補てんの問題点を振り返り、保団連の「ゼロ税率(免税)」要求について紹介する。

太田志朗
庶民増税、大企業減税
 ─ 2018 年度税制改正

●2018年度税制改正は、引き続き法人税減税を進める一方、中所得者以上での所得税増税や、庶民に負担を強いる新税創設など、大企業を中心に減税し、庶民に増税を強いる形である。経済失政による税収の伸び悩みを庶民に付け回した上、政府は2019年10月より消費税10%実施を進める構えである。大企業が成長すれば国民全体が潤うとするアベノミクスによる税制改正からは脱却し、大企業・金融資産家に応分な税負担を求める税制改正こそが求められる。

保団連経営税務部
論考
骨粗鬆症と顎骨壊死
 ─ 「医療研全国共同調査2017」より
◆ビスフォスフォネート剤等と顎骨壊死について、第30回保団連医療研究フォーラム共同全国調査2015において調査を実施した。その中で、診療現場から多くの意見・課題が出され、医科歯科相互の意見の違いが浮き彫りとなった。これを受け「全国共同調査2017」を新たに実施したので、今回、調査結果に若干の知見を加えて報告する。
◆顎骨壊死はここ2年間でも減少しておらず、骨吸収抑制薬処方に当たり、患者への十分な説明、医科歯科連携による口腔内管理の徹底が顎骨壊死の予防に重要であると考察した。
野村博彦
診療研究
医療機関併設型「なずな病児保育室」の現状と課題
●医療機関併設型病児保育室「なずな病児保育室」の16年間の経過・現状・課題を考察した。2016年度は1600人弱を保育。0歳から12歳までの異年齢保育であり、高学年保育が今後の課題。隔離疾患が45%を占め、隔離保育となるため経費を増大。頻回利用では保育料金が高額となり保育料の設定が課題。キャンセルは25%あり、需要の側面でもある。ひとり親家庭の利用は16%あり、貧困対策の一助をなしていると推察。
前田敏子
定期通院糖尿病患者の孤独死の現状とその対策 第5報(最終報)
通院医療環境改善のための新薬導入の効果について
●2008年〜2017年の9年間で当クリニック通院患者から11人の孤独死が出た。
●11人の内低血糖を誘発する可能性のあるSU 薬は2人で使用、インスリン使用は8人であった。
●2013年と2017 年の薬剤使用頻度の推移をみるとSU 薬は29%→14%、インスリンは41%→40%、DPP-4阻害薬は38%→52%となっていた。
●インスリン減量を目的に重症患者にSGLT- 2阻害薬を追加投与した。インスリン離脱を目的に軽症患者にインスリンGLP-1受容体作動薬を投与した。いずれの研究も有効で一度試みるべき治療と思われた。
伊藤眞一
シリーズ 続・心電図の生き字引

診断の実際─5─

北島 敦
文化
島旅のススメ
第2回 青ヶ島

■日本国内に約420もあるといわれる有人離島のうち南鳥島以外は全て踏破した筆者が、選りすぐりの魅力的な島々を紹介する。今回は、東京都の離島で、近年、国内はおろか海外からも注目を集めつつある青ヶ島。しかし、渡航が困難になることもあり、断念せざるを得ないこともたびたび。波しぶきをあげながら進む船の舳先に見えたその島影は、断崖絶壁のオーラを発していた。

斎藤 潤
まなざしの力
第6回 メアス・ブン・ラー 王家の血を引く少年の闇

渡辺 考
シリーズ
経営・税務誌上相談 454
住宅借入金等特別控除
益子良一
雇用問題Q&A 198
遅刻が多く、スマホをいじる時間が長い職員への対応
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
書評
益子良一・松本重明共著『Q&A医療機関の税務相談事例集(4訂版)』
太田志朗
本棚
VOICE
─4月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内