2018・No.1273
月刊保団連 7
PDF内の写真・文章の無断転載を固く禁じます。
「道」
政策は問わない。事実か否か、それが問題だ
 ─ファクトチェックの必要性
立岩陽一郎
特集
医療・介護同時改定が現場にもたらすもの
─2018年「惑星直列」の激震
加速する在宅への流れと「地域共生社会」が目指すもの

●団塊の世代全てが後期高齢者となる2025年以降、社会保障給付費が激増すると言われている。政府は、社会保障給付費、特に医療・介護給付の自然増を抑制することを目的に「入院・入所から在宅」へのシフトを急いでいる。その在宅の受け皿が「地域共生社会」の構築であるが、同時にそれは国民を政府の監視下に置く装置として機能する可能性もある。この監視国家は、戦争国家への序章かもしれない─。

芝田英昭
入院医療体制の大幅組み換えと病院にとっての今後の課題
●今回の診療報酬改定は、入院医療改革の枠組みと仕組みを仕込んだ改定であった。
●入院料算定実績評価の「重症度、医療・看護必要度」は次回以降、DPCデータによる。
●病床機能分化論の非現実性を厚生労働省(厚労省)自らが認めた。
●病院は今後、地域の人口・医療ニーズの動向を洞察した機能選択が求められる。
鈴木 卓
複雑怪奇な診療報酬体系の下、在宅医療の担い手を増やせるのか
●今回の診療報酬改訂について在宅医療を中心に述べる。ざっくりまとめると、@「かかりつけ医機能の評価」が強化されたAオンライン診療が診療報酬に導入されたが、運営上はむしろ「規制」とも取れるB多職種の連携への緩和と評価が目立つC在宅医療は医療機関・患者の病状・患者の居場所等により算定のルールがさらに複雑化したD同一患者に複数の医療機関が訪問診療を行うことが可能となったがルールは厳格化された─などの点が挙げられる。
山崎利彦
歯科外来で加速する治療中心型からの転換をどう評価するか

●2018年度歯科診療報酬改定の外来の関するところを中心に述べる。@院内感染防止対策として、歯科初再診料に施設基準として評価された。A医学管理では、歯科疾患管理料の加算として「総合医療管理加算」「小児口腔機能管理加算」「口腔機能管理加算」が新設。医科歯科連携として「歯科治療時医療管理料」「診療情報連携共有料」が新設された。B周術期の口腔機能管理を行う目的が示され、対象となる手術が拡大された。C先進医療から導入されたCAD/CAM(コンピューター支援設計・製造ユニット)装置を用いて作成された歯冠補綴物の適用拡大(2017年12月より)や、高強度硬質レジンブリッジの新規導入によりさらなるメタルフリー化に向かっている。

新井良一
診療機関の分断ではなく、在宅歯科医療全体の底上げを

●今次改定の要点である「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」では、@かかりつけ歯科医の機能の評価、A周術期口腔機能管理の推進、B質の高い在宅医療の確保が位置付けられた。本稿では、「在宅歯科医療」を取り上げ、評価のできる項目は何か、施設基準によってどのような差別化が持ち込まれたのかを考え、改善に向けて提起をしたい。

田辺 隆
安上がりの介護サービスで地域生活を支えられるのか

●介護報酬は0.54%引き上げられたが、制度発足以後の改定率の積算では0.46%のマイナスである。
●改定では、居宅療養管理指導の算定方法の変更、訪問看護や訪問リハ、通所リハ等の基本報酬引き下げ、認知症高齢者等の割合を満たせない介護療養病床・介護医療院の大幅減額、訪問介護員の研修時間の半減等が行われた。
●必要なサービスを提供するためには、@国庫負担を拡大し介護保障を充実、A公費負担の活用と改善、B医療系サービスを医療の必要に応じて提供できるようにすることが必要である。

中島幸裕
翻弄される医療・介護の現場から

●2018年度の医療・介護報酬同時改定は、7:1一般・急性期病棟においては、医療・看護が引き続き必要な患者に対し「回復期リハ病棟」「地域包括ケア病棟」から介護医療院という流れをつくり、他方で回復の見込める患者を介護老人保健施設、そして在宅という流れをつくる。どちらにしても、どのような身体状況であっても在宅に戻し、介護保険法によって対応するという形ができつつある。また、医療・介護の事業所は事業内容によって報酬単価が決められるため、行政によって事業方針が操作されている。

鴻上圭太
診療研究
子どもたちの発達と口腔
インクルーシブ診療を目指して(1)
●発達に問題を抱えている子どもたちの歯並びを治療する中で、症状の共通点と、いびきやおねしょ、集中力など様々な症状の回復を経験した。
●小児の睡眠時無呼吸の症状として、夜尿、朝起きられない、居眠り、多動、注意力散漫などがある。
●哺乳類と鳥類は高度に発達した脳を動かすためにレム睡眠を獲得したが、発達に問題を抱えている子どもはレム睡眠時間が少なく、脳に十分な酸素が運ばれていないために様々な問題が生じていると考えられる。
北村義久
シリーズ 続・心電図の生き字引

診断の実際─6─

北島 敦
文化
島旅のススメ
第3回(最終回) 悪石島
■日本国内に約420もあるといわれる有人離島のうち南鳥島以外は全て踏破した筆者が、選りすぐりの魅力的な島々を紹介する。最終回となる今回は、旧盆の仮面神「ボゼ」などで注目をあつめるトカラ列島(鹿児島)の悪石島。強烈なインパクトの名前をもつこの島では、海中温泉、医者いらずの砂蒸し温泉、島のグルメなどが楽しめる一方で、レントゲン便や巡回診療など独特な医療体制に支えられる離島の暮らしも見えてくる。
斎藤 潤
まなざしの力
第7回 メアス・ブン・ラー 元少年兵の傷と癒し

渡辺 考
シリーズ
経営・税務誌上相談 455
決算書の利益と法人税の所得金額
益子良一
雇用問題Q&A 199
労基署が突然来院し、就業規則と36 協定の提示を要求してきた
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
書評
尾内康彦著『続・患者トラブルを解決する「技術」』
竹田智雄
VOICE
─5月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内