2018・No.1275
月刊保団連 8
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巻頭写真特集
石木川の「団結小屋」─13家族の物語
村山嘉昭
「道」
組織の論理に対する無自覚が生み出す過ち
金 聖雄
特集
改憲論議の作法
憲法改正の3つの作法
 ─「フェイク改憲論戯」から離脱を

●憲法改正においては、@高度の説明責任、A情報の公開と自由な討論、B熟慮の期間─の「3つの作法」が前提に置かれるべきである。一方、安倍政権の統治手法の特徴は、@情報隠しA争点ぼかしB論点ずらしC友だち重視D異論つぶしであり、全体を貫いているのが「前提くずし」である。改憲を目指して「9条加憲」という強引な提案を唐突に行い、読売新聞はこれを後押しして、憲法研究者からの当然の批判を「世論との隔たり」と言って叩く。作法を踏まえない安倍流「フェイク改憲」に頭の体操を挑んで「改憲論戯」に励むいとまはない。

水島朝穂
改憲の論点
 ─9条と緊急事態条項を中心に
●自衛隊を憲法に明記することで、@軍事力の統制が効かないA戦力拡大の歯止めが効かないB国防国家化が進行するC国防目的の人権制約が容易になり医療徴用や徴兵も可能になる─といった問題が考えられる。
●議論においては、自衛隊の本来の任務は国土防衛であり国民保護ではないことや、国旗国家法など「現状を法に書いただけ」で社会が激変したことを知るべきである。
●緊急事態条項は「異常かつ大規模な災害」に対応するためと言われるが、災害対策基本法などが既にある。東日本大震災や原発事故ではこれらの法律を運用する訓練ができていなかったことが問題で、憲法に規定を設けなければ対処できないものではない。
伊藤 真
医療者が知っておきたい憲法の話
 ─ 23条「学問の自由」と26 条「教育を受ける権利」
●「9条、25条…だけじゃない」憲法の話として、憲法23条の「学問の自由」と26条「教育を受ける権利」について取り上げる。これら2つが日本国憲法に盛り込まれた意義は大きく深い。いまこれらの権利は、危機にさらされ大きな岐路にある。それは、医療や医学とその教育の世界も無縁ではない。国家主義と新自由主義に基づく政府与党の教育政策、大学政策と自民党の改憲の企みに抗する手がかりは、この2つの条文の中にこそある。
小沢隆一
「戦争放棄」はこうして生まれた
 ─史実が示す日本国憲法誕生の真実

●「戦争放棄」はGHQ憲法案に始まるが、そもそもは「戦争の廃止」であった。戦争を否定する考え方があることをGHQは、天皇や閣議の議論から知っていた。発案者は幣原喜重郎との説があるが筆者は否定的である。マッカーサー・GHQは、天皇を残置することとの関係で、「戦争の放棄」を考え、二度と戦争ができない国を思考したため、GHQ案の9条には「平和」は書かれていなかったが、議員の力で「国際平和を誠実に希求し」が挿入された。

古関彰一
沖縄から見た憲法と日本

●「沖縄から日本がよく見える」ということについて、3つの視点から述べる。第1は、沖縄の視点から、憲法をないがしろにする日本の姿や、憲法の存在意義が見える。第2は、憲法問題の宝庫である沖縄を縮図とする日本であり、地方や少数者を差別し、人権問題に対する認識を欠いた共通の問題が見えてくる。第3は国際社会の視点から沖縄を見ることで、民主主義や人権保障など日本社会の成熟度、憲法の理解度が見えてくる。日本がどのような国になるのかが憲法で決まるという意識、これが改憲論議で最も重要な「作法」の一つである。

高良鉄美
改憲広告代理店
 ─国民投票の落とし穴

●国民投票の勝敗を決定するのは、いま投票行動を決めていない無党派層であり、その層を取り込むために、改憲賛成・反対両派による激しい広告宣伝が予想されている。だが、現行の国民投票法は、より多くの広告資金を持つ側に圧倒的に有利な仕組みで、現状では豊富な政党助成金や企業献金を集められる改憲派が有利と考えられる。その広告宣伝を担うであろう世界最大の広告代理店「電通」はどのようにして広告宣伝戦略を展開するのか解説し、活動方針が何も定まっていない護憲派の無防備を指摘する。

本間 龍
診療研究
パレスチナ医療・子供支援活動を通して難民とともに歩む

●世界の「火薬庫」といわれる中東・パレスチナ問題にかかわり、これまで9次にわたり医療・子供支援活動を続けてきた。イスラエルの軍事占領下のヨルダン川西岸と10年以上の完全封鎖が続くガザ地区におけるパレスチナ難民への医療活動と「戦争しか知らない子供たち」への支援活動を報告する。そして、イスラエルによるパレスチナ民族絶滅政策の実態を明示し、パレスチナ問題の根本的・平和的解決を訴える。
猫塚義夫
子どもたちの発達と口腔
インクルーシブ診療を目指して(2)
●睡眠のリズムや姿勢、歯並び、妊娠性歯肉炎や、胎児の低酸素防止、いびきや睡眠時無呼吸など、さまざまな問題にホルモンの作用がかかわっている。
●発達に問題を抱えている子どもたちは食にこだわりが強く、「コロッケの衣が痛い」などと訴える。当院の「さわやかキッチン」では、管理栄養士が子どもたちに食品の加工を教える「おやつ教室」を開催している。
●指吸やおしゃぶり、爪かみ等は、ハビリテーションには大切だと考える。当院では、リハビリと口腔ケアを兼ねて「ベロタッチ」の指導から始め、鏡や人形を使った模倣の難易度も上げていく。
北村義久
文化
神楽 ─「祭り」に見る祈りと世界観
第1回 自然の力と向き合う共同体の知恵
■全国各地で多様な姿で伝承されてきた地域の祭りに「神かぐら楽」がある。そこには、この列島で生きてきた人々が、五穀豊穣を祈り喜び、自然災害や疫病などに翻弄されてきたなかで形づくられた世界観が現れており、医学以前の古い時代の治癒のあり方や、コミュニティーを育む役割を担ってきたことなどもうかがえる。現在、成長から縮小傾向へと大きな転換期にある日本社会において、神楽が静かな注目を集め始めているのはなぜか。全国各地の神楽をフィールドワークしてきた筆者が、日本人のルーツにつながる記憶の古層とその可能性を探る。
三上敏視
まなざしの力
第8回 大田昌秀 生き延びた皇国少年の誓い

渡辺 考
シリーズ
経営・税務誌上相談 456
相続税対策
益子良一
雇用問題Q&A 200
定年後賃金を下げることは問題ないか
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
VOICE
─6月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内