2018・No.1282
月刊保団連 11
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「道」
誤った「善意」が差別に──優生保護法を許した背景
藤原久美子
特集
ネット依存の現状
ネット依存とは何か
 概念、実態、対策

●本稿ではネット依存の概念、実態、診断、症状、治療等の対策について略述した。ネット依存全体の疾病化は難しく、まずゲーム障害の疾病化から始まっている。わが国における実態調査では、ネット依存が急増している実態が明らかになっている。患者は10歳代の若者が多く、ゲーム障害では、多くのケースで生活が破綻している。予防対策や医学的対応は遅れており、この方面での早急な対応が期待されている。

樋口 進
スマホ依存が「もの忘れ」を引き起こす
●「脳過労」とは、忙しい日々と情報過多による、脳のオーバーワークによって、記憶障害や遂行実行機能障害をきたし、気分を整えることも困難となり、生活に支障が出る状態である。
●脳は、Input(情報の入力)を遮断し、「ぼんやり」する時に、デフォルトモードネットワークと称されるシムテムが作動し、メンテナンスが施行されている。余暇に、ネットサーフィンなどに依存することによって、私たちの脳は「我われに返る」機会を失い、「脳過労」に陥る。その解消には、自然のリアルな質感を享受する余裕が重要となる。
奥村 歩
「SNS 疲れ」とSNS 化する世界
●SNSは今や私たちの生活から切り離させないコミュニケーション手段となっている。しかし、あまりに急激に普及したために、それに伴うトラブルやストレスも生じており、それを「SNS疲れ」と呼んで具体的に論じた。またSNSに過剰適応した人たちにより生じる新たな状況を「SNS化する世界」と名づけ、それがもたらす深刻な社会問題についても触れた。
香山リカ
オンラインゲームをやめられないのはなぜか
 「ネトゲ廃人」「ソシャゲ廃人」と呼ばれる人々

●オンラインゲームに依存して心身の不調に陥ったり、日常生活を破綻させてしまう人は「廃人」と呼ばれるようになった。特に最近では、スマートフォンの普及によりスマホゲームの人気が高い。無料のアプリで気軽に遊べるため、子どもからおとなまで多くのプレーヤーに依存の可能性が生じている。彼らはなぜそこまでゲームに没頭するのか、その理由や背景とともに、ゲームを提供する側のビジネス戦略なども知ってほしい。ゲームを「やめられない」人と、ゲームを「やめさせないゲーム会社、それぞれの問題について社会的に向き合う必要がある。

石川結貴
スマホ時代の子どもたちの健やかな成長のために

●「中高生のネット依存93万人」という厚生労働省研究班の研究結果が大きく取り上げられ、子どもたちのネット依存が社会問題になっている。
●子どもとネット依存について最新データから検証した。今回は特に、@低年齢化、A男女差、B長時間利用に焦点を当てた。ネット依存はもはや中高生の問題ではなく、小学生にも及んできていており、「育児スマホ」のあおりをうけ、低学年にまで浸透しだしている。教育と医療の協働等、社会全体でこの問題に対策を講じる必要がある。

竹内和雄
論考
子どもの精神発達と社会

 第2回 2つの軸による発達のメカニズム

◆モノを物質的に捉える「認知」から、それを意味や約束によって捉え直す「認識」へとステップアップしていくことで、子どもたちの精神は発達していく。本稿では、認識と関係を座標軸にして知的障害や発達障害のあり方を考えるとともに、定型発達とこれらの障害の間に決定的な差はなく、あくまでも相対的な違いでしかないことを述べる。
滝川一廣
レポート
韓国のコンピューター審査事情

──先進の技術とその限界

■韓国では健康保険審査評価院(HIRA)が全てのレセプトを審査する。コンピューター審査には文字列を含むレセプトを処理できないという弱点がある。そのため医療機関ではOCSというソフトを使い文字列をコードに変換している。HIRAでは全レセプトの約87%がコンピューターで審査を完結しているが、残りは人が画面で審査している。約87%がコンピューター審査の限界とされてきた。この限界を打破すべくAI(人工知能)審査の開発が始まっていた。
本田孝也
診療研究
シリーズ 続・心電図の生き字引
診断の実際─番外編─
北島 敦
口腔がん患者の顎補綴による顎口腔機能回復
─ 20 年間の経験から(2)
●上顎欠損は、話すことも食事することもできず、さらに顔貌の変化と術後の後遺症としては、この上ない辛さといっても過言ではない。症例6は、初診からターミナルケアまで25年間の長期にわたりフォローした患者である。再発を繰り返し、ホスピスから検診に欠かさず来院した。術後ケアは単なる口腔管理ばかりでなく何気ない衛生士との会話さえ精神的な支えにもなっていたように思われる。
●進行がんを見るたび定期的な口腔衛生管理の必要性を痛感する。
木村利明
直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)をどう使いこなすか

第3回  抜歯、内視鏡、手術時の対応

●出血時の対処が容易な処置・小手術(抜歯、白内障手術など)の施行時は、直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)あるいは至適治療域にINRをコントロールしたワルファリンの内服続行が望ましい。出血高危険度の消化器内視鏡治療や大手術の場合は、ワルファリン内服者では至適治療域にINRをコントロールしたワルファリン継続下あるいは休薬する場合はヘパリン置換、またはDOACへの一時的変更を考慮し、DOAC内服者では前日朝まで内服を継続し、処置当日の内服を中止、処置翌日朝より出血がないことを確認して再開する。
橋本洋一郎
文化
まなざしの力
第11 回 本田哲郎 大切なものは何

渡辺 考
シリーズ
経営・税務誌上相談 459
災害被災地への義援金の税法上の扱い
益子良一
雇用問題Q&A 203
働き方改革でまず取り組むべきは「有給5日の義務化対応」
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
VOICE

─9月号を読んで─

詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内